マングラー

2020年05月19日 17:33

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【原題名】THE MANGLER
【製作】アナント・シン
【監督】トビー・フーパ―
【脚本】トビー・フーパ―、スティーヴン・ブルックス
【撮影】アムノン・サロモン
【音楽】バーリントン・フェロング
【出演】ロバート・イングランド、テッド・レヴィン、ヴァネッサ・パイク
【製作年度】1995年
【製作国】アメリカ
【上映時間】107分


【STORY】
ブルーリボン洗濯工場にある巨大な選択プレス機。劣悪な職場環境の中で、従業員の血を浴びたプレス機に悪魔が宿る。近づく人間を次々に飲み込んでいく悪魔の機械の暴走に気付いた刑事のハントンは、プレス機を止めようと奔走するが、社長のガートレーが立ちはだかる。

【REVIEW】
原作はスティーブン・キングの『人間圧搾機』で、監督はトビー・フーパー。で、内容が、悪意を持った洗濯プレス機に人間が挟まれて殺されていくというもの。プレス機自体は滅茶苦茶巨大だが、据え置きで別に追ってくるものではないから近づかなければ安全じゃないかと思うが、働かされている労働者階級の人間には選択権はなく、危ない場面に出くわし殺されてしまうのが何とも悲しい。そんでもって、人を人とも思わないロバート・イングランド演じる悪徳社長がまた酷い奴で、儲けるためなら人が死んでも何とも思わない外道な奴。さらには、事業で成功するために悪魔と契約し、過去にもプレス機に生贄を捧げていたことが判明するが、因果応報自業自得で、最後には若い愛人とともに自分もプレス機にプレスされ息絶える。

そこで終わりかと思いきや、やっぱり宿った悪魔を何とかせねばと、ハントンは社長の姪シェリーと義弟のマークとともにお祓いを行うが、儀式は失敗、手足が生えて動き出したプレス機に追われてマークは死亡するが、何とか逃げ延びる。翌日、工場を訪れたハントンはプレス機が元あった場所で稼働しており、従業員たちが依然と変わりなくこき使われているのを見るが、それを指示しているのが新しく社長の座に就いたシェリーであることを確認して去っていく。結局、社長が変わっただけで、工場の劣悪な環境は何も変わらない。生きていくためには、こんなところでもひたすら我慢して働くしかない。ホラームービーなのに、そんな労働者や底辺階級の悲哀を感じる映画で、見ているこちらも悲しくなる映画であった。

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メイ

2020年03月23日 07:25

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【原題名】MAY
【製作】マリアス・バルチュナス、スコット・スタージョン
【監督】ラッキー・マーキー
【脚本】ラッキー・マーキー
【撮影】スティーブ・イェドリン
【音楽】ジェイ・ラケット
【出演】アンジェラ・ベティス、ジェレミー・シスト、アンナ・ファリス
2002年/アメリカ映画/94分


【STORY】
動物病院で働くメイは、生まれつきの目の障害と内気な性格もあって友達がいなかった。唯一心を許せるのは、幼いころ母親がプレゼントしてくれた人形のスージーのみ。そんな彼女にも好きな男性ができる。自動車工場で働くアダムに心を寄せるメイは、ふとしたことをきっかけに彼と付き合うことになり、幸せな時間を過ごすが、のめりこんでいくメイが見せる奇行に驚くアダムは次第に彼女と距離を置くようになる。そんな彼女を職場の同僚ポリーが慰めてくれるが、彼女ともやがてうまくいかなくなっていく。再び独りになり、精神的にも追い詰められていくメイ。そんなとき彼女はふと気が付く。「友達ができないのなら、自分で作ればいい―」職場の手術器具を持ち出したメイは、気に入った人間のパーツをつなぎ合わせて究極の友達を作ろうとする。

【REVIEW】
ホラー的な要素は、狙いを定めた相手を容赦なく殺して集めた人体のパーツで体をつなぎ合わせていく下り(※メイは裁縫が趣味で、衣装も自分でミシンを踏んで作っていくので、人体パーツもササっと縫い上げていく)。それまでは、なかなか社会に溶け込めず、友人や恋人づくりに苦労する青春ドラマの色が濃い。不器用でコンプレックスの多いメイが人並みに恋し、それを成就させようと四苦八苦するのはよくあるお話だが、他人とうまく噛み合わず、すれ違い離れていくのを見ているのは切ない。まあ、相手方からしたら性格が合わなけりゃ、行動が理解できなけりゃ別れようと考えても普通かもしれんが、逆の立場のメイからしたらもうこの世の終わり~絶望の淵・・・みたいになっているわけで、殺されるほうは何で殺されているのか理解できないだろうなあと思う。現実でも人間関係で悩んで殺人を犯してしまうのは、たぶんこんな感じじゃないかと思えるので、なんだか本当にやるせないものがズズーンと残るストーリーだ。

救いがあるとすれば、殺される登場人物が軽いノリのタイプが多くてそれほど可哀そうに思えないところと、ラストにメイが少し満足した笑顔で息を引き取っていく姿が映っていたところか。孤独は現代でもいろいろな世代と国々で社会問題化しているが、決して他人事ではない身近に潜むリスクであると思う。メイだって、誰か一人でも理解してくれる、側にいてくれる人間が居たら絶望の末に凶行に及ぶことはなかったはずだろうし、自分だって孤独な時間が延々と続いていったら理性を保っていけるかなんて保証はない。

主人公のメイを演じたやたら目力のある女優アンジェラ・ベティスは、フーパ―の『ツールボックス・マーダー』でも主役を張っていた人。彼女の演技力でこの映画はほぼ成り立っているといっても過言ではないと思う。惜しむらくは、最後の人体パーツの作成場面の描写が割とマイルドだったこと。同じような内容では、頭のおかしくなったオジサンが人体パーツでジグソーパズルを作ろうとする『ブラッドピーセス~悪魔のチェーンソー』が振り切った描写で楽しませてくれているので、ついついそんなレベルの映画を想像していたので、血糊が足らなかったのが寂しく感じたんだと思います。

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マッドマン・マーズ

2019年06月16日 19:35

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【原題名】MADMAN
【製作】ゲイリー・セイルズ
【監督】ジョー・ジャノン
【脚本】ジョー・ジャノン、ゲイリー・セイルズ
【音楽】ウィリアム・メレディス
【出演】アレキサス・ダビン、ジャン・クレア、トニー・フィッシュ
1981年/アメリカ映画/89分


【STORY】
森の中でキャンプファイヤーを囲む若者たちが指導員らから怖い話を聞かされる。
「家族を皆殺しにした狂った農夫“マーズ”の名を呼ぶと、彼は姿を現して、名前を呼んだ者を血祭りに上げる」
若者の一人リッチーはふざけて“マッドマン・マーズ”の名を大声で叫んでしまう。キャンプはその後お開きとなり、皆ロッジへ帰っていくが、不審な人影を目撃したリッチーはその後を追って森の奥へ。指導員のティーピーはリッチーが居ないことに気付き、森へ捜索に行くが、突然荒縄を首に巻かれて木に吊るされて窒息死する。ティーピーも戻ってこないことを心配するガールフレンドのベティは親友のステイシーに相談、他の指導員らも森へ捜索に行くが、謎の大男に次々に殺されていく。一人残っていたベティは殺人鬼が仲間を殺していたことに気付き、子供たちを避難させ、猟銃を持って殺人鬼を追って森へ向かう。

【REVIEW】
製作されたのが81年なんで、丁度スラッシャー映画が全盛期であったころに作られた1本。森の中のキャンプ場で若者が襲われるお決まりのパターンながら、殺人鬼は田舎の農夫スタイルで登場、凶器は斧がメインながら、強制首吊りや怪力を生かした殺し方などもあり少し変わった味付け。名前を呼ぶと殺人鬼が現れるという都市伝説的な登場の仕方も悪くないが、何故殺人を重ねるのかははっきり描かれず(まあ、もともと狂っていたという設定なんで、そこはどうでもいいのかもしれないが―)、とりあえず見つけた奴は皆殺しにしていく。自分が殺した犠牲者は全員自分の家まで引きずっていき、地下室に並べてパーティー状態にしているのもよく見かける光景で、この辺はもはや定番化していたんだろう。

スラッシャー映画なんで何はともあれ“殺し”が見せ場なわけだが、殺される人数も多いし、肝心の殺しの場面もテンポ良く見せてなかなか飽きさせない。首チョンパが計2回あり、そのどちらも生首ゴロリを見せてくれるのも嬉しいし、首吊り状態の男が必死で枝に捕まって一息ついていたところを殺人鬼のおっさんがベルトを引っ張ってとどめを刺すシーンも楽しい(首の折れる音が、妙にリアル)。しかし、なんか危ないデ~という雰囲気なのに、なぜ一人ずつ探しに行くのか(たぶん、皆、殺されに行ってるようなもんだぞ!と突っ込んでいると思う)、殺人鬼の家がエライ近くにあるのに、なぜ誰もその存在に気付いていないのか、など突っ込みどころはやっぱりあるけれどもその辺はまあ気にしないということで。ちなみにヒロインのベティ役は、『ゾンビ』のゲイラン・ロスがアレキサス・ダビンの変名で出演。『ゾンビ』以外だと『クリープショー』も出演作があるが、ほとんどまともにカメラに映っていないんで、本作は貴重な存在と言えましょう。


マッドマン・マーズ02

マッドマン・マーズ01



ミミズバーガー

2019年03月07日 12:23

ミミズバーガー表

【原題名】THE WORM EATERS
【製作】テッド・V・マイクルズ
【監督】ハーブ・ロビンズ
【脚本】ハーブ・ロビンズ
【出演】ハーブ・ロビンズ、バリー・ホステットラー、ジョセフ・サケット、リンゼイ・アームストロング・ブラック、ロバート・ギャリソン
1975年/アメリカ映画/89分


【STORY】
町はずれの沼地を再開発してひと儲けしようと企む市長一派は、土地を所有しているアムガーを疎ましく思っていた。人付き合いを敬遠して生活しているアムガーの楽しみはミミズを飼育すること。一匹一匹に名前を付けて愛情を持って接しているが、他人には変人扱いされている。ある日、アムガーの家にやってきたっ女性が、ミミズの混入したパスタを食べてしまい、彼女は下半身がミミズになってしまう。困ったアムガーは彼女を檻を作って中で飼育する。その頃、町では沼地の開発案が可決され、それを知ったアムガーはそれを阻止しようと、町の食物にミミズを入れミミズ人間を増やしていく。

【REVIEW】
ミミズを扱ったホラーといえば、『スクワーム』が有名だが、もう1作答えなさいと言われたら、出てくるのがこの『ミミズバーガー』。『スクワーム』は大量発生したミミズやゴカイが街や人を飲み込んでいくスケールの大きい作品だったが、本作はほとんどが主人公の家の周りで起こる珍事を描いた小粒な作品。ミミズを食べたら、ミミズ人間になっちゃった!・・・というのをバカ真面目に撮っているだけにかなり痛い仕上がりとなっている。主人公のアムガーおじさんを演じたハーブ・ロビンスは生ミミズを吹き替えなしで食べており、劇中ではミミズを手に取ってうっとり話かけるシーンを熱演。監督・脚本も彼の名前でクレジットされており、アムガーおじさんワンマンショーといった趣だ。

さらに肝心のミミズ人間の姿が下半身に布をぐるぐる巻きにしただけで、出来損ないの人魚みたいなのも凄い。そんなミミズ人間が腕の力だけで這って進んでいく姿はシュールを通り越して唖然とするしかない光景。ミミズ人間の男3人組は、俺たちに女のミミズ人間をあてがえ!と脅し、檻の中ではミミズ人間が奇妙な声を上げて暮らしている。アムガーがミミズと戯れる場面で流れる安っぽいエリーゼのためにも切ない。ほとんど予算の無いコントを延々と見せられている感じがし、リモコンの早送りボタンから手が離せない。製作のテッド・V・マイクルズは、エド・ウッドの唯一のライバルという触れ込みだったが、他に手掛けた作品が、『人間ミンチ』や『アストロ・ゾンビ―ズ』などがあり、ソフトの特典で映像が紹介されているが、どれもこれも同じようなレベルの仕上がりで、ある意味凄いな・・・と思ってしまった。ホラー映画には玉石混合様々な作品が存在するが、間違いなくその最底辺に位置するといっても過言ではない、カルト作だ。

ミミズバーガー裏
中古で購入したら、なぜか未開封の新品が送られてきた。それほど嬉しくないのはなぜだろうか。



マーターズ(2015)

2017年12月12日 06:00

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【原題名】MARTYRS
【製作】ピーター・サフラン、アニエス・メントレ
【監督】ケヴィン・ゴーツ、マイケル・ゴーツ
【脚本】マーク・L・スミス
【撮影】ショーン・オディー
【音楽】エヴァン・ゴールドマン
【出演】トローヤン・ベリサリオ、ベイリー・ノーブル
2015年/アメリカ映画/83分


【STORY】
何者かによって長期間監禁され、拷問と虐待を受け続けていた少女リュシーは、逃げ出して放浪していたところを保護され施設に収容される。そこで同年代の少女アンナと心を通わせ回復していくが、得体のしれない何かに襲われ続ける悪夢は消えなかった。
数年後、とある一軒家を訪ねたリュシーは、持っていた銃で住人を次々に射殺する。連絡を受けてやってきたアンナは、死体の山を見て驚き、リュシーは自分を監禁していた犯人に復讐を果たしたと告白するが、自傷行為を続ける姿を見て、アンナの疑念は消えない。その後、アンナは一軒家に地下室があることを発見、そこには監禁された少女たちが居り、リュシーの過去の謎が判明する。


【REVIEW】
パスカル・ロジェが監督した『マーターズ』のハリウッドリメイク作品。オリジナルの残虐度と先の読めない展開、そして理不尽で不条理なラストの衝撃はかなりのものがあったが、それをハリウッドがどう料理したのか興味があったが、結果はあえなく撃沈―。オリジナルを初めて見たときのインパクトには到底及ばず、かつ改変されたストーリーも「これで良かったのか!?」と何とも言えん感じで巷の評価が低いのも仕方がない出来栄え(そもそも、オリジナルに勝つのは至難の業であるのは明白であったが、それじゃあ、なんでわざわざリメイクしたの?というところではありますが・・・)。以下、新旧主だった相違点を比較してみますと―、

①オリジナルでは途中でリュシーが自殺してしまい、後半はアンナが主役を引き継ぐが、リメイクの方はリュシーは最後まで生き残り、W主役という感じに。2人の友情を強調したような演出も見られるが、何も関係なかったアンナに強烈な業を背負させるオリジナルの不条理さと比べるといささか爽やかすぎる。

②謎の組織の黒幕の女性がリメイクではバンバン登場、惜しげもなく姿を見せ続ける。オリジナルは出番は少ないものの、それが逆に正体不明の得体のしれない不気味な雰囲気を出していたのにね。

③あの世まで逝って見てこさせるための拷問のはずなのに、リメイクは時間短縮であっさりめ。またリュシーの皮剥ぎ場面も大幅に減少され、「あんなもんでいいの!?」と突っ込みたくなります。

④そして、パッケージの謎の金属器具を付けられた監禁女性ですが、リメイクの方では全く出てこず・・・。このジャケット、あかんでしょ!?

などが気になった点ですが、やっぱり改悪されたという雰囲気しか感じない気がします。ストーリーを変更し、アンナがリュシーや監禁された娘たちを助け出そうとするところ、犯人たちをバッタバッタと撃ち殺していくところなんかは、いかにもアメリカ的な分かりやすい、共感を呼びやすい流れではあり、それが狙いだったのでしょうが、オリジナルの良く分からない理解し難いところから生じる不条理な怖さと対比すると、やはり凡庸な普通のホラー映画に成り下がった感は否めません。結果、「やっぱりオリジナル版の方はスゴかったよな!」ということを再確認させてくれた映画ということですかね。


マーターズ02




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