ゾンゲリア

2020年11月13日 21:37

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【原題名】DEAD & BURIED
【製作】ロナルド・シャセット、ロバート・フェントレス
【監督】ゲイリー・A・シャーマン
【脚本】ダン・オバノン
【撮影】スティーヴン・ポスター
【音楽】ジョー・レンゼッティ
【特殊メイク】スタン・ウィンストン
【出演】ジェームズ・ファレンティーノ、メロディ・アンダーソン、ジャック・アルバートン、デニス・レッドフィールド
【製作年度】1981年
【製作国】アメリカ
【上映時間】90分


【STORY】
小さな漁村ポッターズ・ブラフ。浜辺で撮影していた写真家が全身にガソリンを掛けられて焼かれる事件が起こる。保安官のダンは事件を追うが、手掛かりが掴めない中、写真家は入院先の病室で何者かに注射針を左目に突き刺されて死亡する。その後も街を訪れる観光客が残忍な方法で殺される事件が発生、ダンは葬儀屋兼検死官のドッブスに協力を依頼し捜査を続ける。
ある夜、パトロール中のダンは車に衝突した男の肉片を採取し鑑識を依頼するが、その肉片は死後3か月が経過していることが判明、さらに死亡した写真家がガソリンスタンドで働いているという噂を聞き、墓を掘り返すと棺には血まみれの心臓だけが入っていた。すべての事件の背後にドップスが関与していることに気付いたダンは、彼が別の州で死体を違法に使用して追放処分を受けていたことを知る。ドップスは死体を秘術で蘇らせた後、そのゾンビを使って犠牲者を増やして仲間にしていたのだった。

【REVIEW】
『ゾンビ』+『サンゲリア』の邦題とは別に、内容は暗く陰惨なサスペンスホラー。本作に登場するゾンビは、血肉を食らうタイプではなく、ブードゥーゾンビタイプ。蘇らせたドップスの命令で動き、普段は生者と変わらぬ生活をしており一見死んでいる風には見えない。知らぬ間に生者と死者が入れ替わっていき、やがては街全体がゾンビに支配されてしまっているというのがこの映画の怖いところではあるが、さらには最後にアッと驚くオチも用意されていて、さすがは脚本にオバノンが参加しているだけのことはあり、見応えがある。なぜ加害者は殺す前に写真を撮るのか、なぜわざわざ激しく損壊させて殺すのか、それも最後には明らかになるが、監督ゲイリー・A・シャーマンの淡々とした演出、終始暗い画面で進む画作りなどと相まって説得力を増しているように感じる。

勿論、ゴア描写も抜かりはなく、重傷で動けない状態で目ん玉に巨大な注射針を刺される名場面を筆頭に、鼻から硫酸を注ぎ込まれて顔面が内部から崩壊したり、岩で顔面を叩き潰したりと、回数は少ないが強烈な印象を残す場面が用意されている。特殊メイクを担当したスタン・ウィンストンは後に『ターミネーター』で名を馳せるが、ここでもいい仕事をしてくれている。個人的には、この『ゾンゲリア』20歳くらいの頃にビデオを購入して観たのだが、ビデオのジャケットが気味悪すぎて、数か月して手放した記憶がある。『サンゲリア』や『死霊のはらわた』のジャケットも当時はインパクトがあったが、この『ゾンゲリア』は何故か脳裏に焼き付いて離れなかった気がする。

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殺人魚フライングキラー

2020年08月15日 19:25

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【原題名】PIRANHA II: FLYING KILLERS
【製作】チャコ・ヴァン・リューウェン
【監督】ジェームズ・キャメロン
【脚本】ジェームズ・キャメロン
【撮影】ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
【音楽】ステルヴィオ・チプリアーニ
【特殊効果】ジャンネット・デ・ロッシ
【出演】トリシア・オニール、ランス・ヘンリクセン、スティーヴ・マラチャック、リッキー・G・ポール
【製作年度】1981年
【製作国】アメリカ=イタリア
【上映時間】95分


【STORY】
カリブ海のリゾート地でダイバーや観光客が行方不明になる事件が発生、この地でダイビング講師を務めるアンは、受講生が海中で無残な死体として発見されたことで責任を感じ、原因を探り始める。やがて、陸軍が極秘裏に開発した生物兵器の空飛ぶ殺人魚が存在していることを知り、観光客の避難を呼びかけるが、ホテルの支配人は耳を貸さない。そして、毎年恒例の祭りが開かれ、ホテルには多くの人々が詰めかけるが、海岸からは殺人魚が多数飛来し人々に襲い掛かるのだった。

【REVIEW】
ジェームズ・キャメロンの監督デビュー作としても有名なパニックホラー。邦題にはないが、ジョー・ダンテ監督の『ピラニア』の続編で、あの凶暴なピラニアにトビウオらの遺伝子を交配、海水での生息を可能とし、巨大なヒレで飛び出して陸上の生物にも襲い掛かるという新たなモンスターが登場する。『ピラニア』では水中に居る時が危険な時間帯だったが、陸上でも襲われるということで見せ場が広がったはず・・・であったが、その出来栄えは逆にトーンダウンし凡庸なホラー映画に成り下がってしまったのは残念なところ。

陸上でパタパタと飛んでくる殺人魚は“恐ろしい”と感じるより、むしろ滑稽で恐怖感は薄く、姿が全部見えることで造形の粗さも目立ってしまいいいとこなし。『ジョーズ』や『ピラニア』でもあった、観光・金儲け優先で現実から目を背け続ける権力者と主人公らとの対立する図式も今一つ盛り上がらない。頼りにならない男性陣を差し置いてアンが殺人魚退治に奔走するくだりは、強い女性像をメインに持ってくるキャメロンっぽい感じがしたが、ストーリーも中だるみし、演出もキレがなく、やはりC級作品程度の評価は致し方ないか。ただ、流血シーンは割とリアルで回数も多くてそれなりに楽しめる。無残に食い散らかされた死体や噛まれて喉元から飛び散る血しぶきが威勢がいい。全体的にのんびりした映画だが、「これが70~80年代テイストだよ」という気もしてきて、昔テレビのロードショーで流れていたのを見たような気分になって、これはこれで悪くはないのだが。


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ステファニー 死体と暮らす少女

2020年08月03日 19:38

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【原題名】STEPHANIE
【製作】エイドリアン・ビッドル、ジェイソン・ブラム、エレン・ゴールドスミス=ヴァイン、マット・カプラン
【監督】アキヴァ・ゴールズマン
【脚本】ベン・コリンズ、ルーク・ピオトロフスキ
【撮影】アントニオ・リエストラ
【音楽】ネイサン・ホワイトヘッド
【出演】シュリー・クルックス、フランク・グリロ、アナ・トーヴ
【製作年度】2017年
【製作国】アメリカ
【上映時間】86分


【STORY】
森の奥の一軒家に一人で暮らす少女ステファニー。瓶づめの食糧で飢えをしのぎ、ぬいぐるみと会話をして日々を暮らしているが、夜になると何者かの存在を感じ怯えていた。ある日、行方不明だった両親が帰ってきて、3人の暮らしが始まる。両親は、2階のベッドに横たわっていたステファニーの兄ポールの遺体を離れた地に埋葬するが、すぐに何者かの手によって家に戻されてくる。父親は、家の周りを囲むように塀を作り続け、母親は外部と通信し何者かの存在に怯えているようだった。ある日、父親はステファニーを連れてピクニックに出かけ、毒入りのホットチョコを飲ませようとするが―。

【REVIEW】
前半は少女ステファニーが一人で暮らす独り芝居を見せてくれるが、芸達者で見せるものを飽きさせない演技で引っ張ってくれる。この一軒家になぜ一人で住んでいるのか、両親はどこに行ったのか、兄弟はなぜ死んでいるのか、そして邪悪な存在はなんなのか―?やがて、両親が帰ってきて、少しずつ謎が明らかになっていくが、明確な説明は最後までなされず、またそれほどビックリもしない展開。パッケージの“『エクソシスト』『エスター』につぐ最恐ホラー”とあるが、この2作からは遥か遠く離れていて、正直怖さは感じなかった。オカルトなのかSFなのかも微妙なところで、説明不要で怖がらせるのならもっと視覚的な見せ場も用意しておいてほしかった。登場人物は少ないが、見るべきところがあるとすれば、当然ステファニー役のシュリー・クルックスの可憐な姿。それ以外は残念ながら無い。


サスペリア・テルザ 最後の魔女

2020年07月21日 12:02

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【原題名】MOTHER OF TEARS
【製作】クラウディオ・アルジェント、ダリオ・アルジェント、マリーナ・ベルルスコーニ、ジュリア・マルレッタ
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ジェイス・アンダーソン、ダリオ・アルジェント、ウォルター・ファサーノ、アダム・ギーラッシュ、シモーナ・シモネッティ
【撮影】フレデリック・ファサーノ
【音楽】クラウディオ・シモネッティ
【出演】アーシア・アルジェント、クリスティアン・ソリメーノ、アダム・ジェームズ、モラン・アティアス、ダリア・ニコロディ、ヴァレリア・カヴァッリ、ウド・キア
【製作年度】2007年
【製作国】イタリア/アメリカ
【上映時間】102分


【STORY】
ローマの博物館に勤めるサラ・マンディは教会から送られてきた遺品入れを調べ始めるが、現れた謎の集団にサラの同僚は殺され箱の中身は持ち去られてしまう。同僚殺しの嫌疑を掛けられたサラは恋人のマイケルとともに箱の謎を追い、オカルトに詳しいヨハネス神父を訪ねる。そこで、幼い頃に亡くした母のエリザが魔女で、サラもその力を受け継いでいることを教えられる。箱を持ち去った集団は“涙の母”を崇める邪悪な集団で、ローマには涙の母の復活を祝い、世界中の魔女たちが集結しつつあった。ヨハネス神父は魔女に操られた家政婦によってメッタ斬りにされ、サラを助けた降霊師のマルタは股間から槍を突き刺されて絶命する。マルタから教えられていた錬金術師のグリエルモに助けを求めたサラは、涙の母が建築家ヴァレリによって建てられた屋敷に住んでいることを知り、ローマの街中を探し回り、その屋敷を見つける。その館の地下では魔女たちの狂宴が繰り広げられていた。

【REVIEW】
サスペリア』『インフェルノ』に続くアルジェントの“魔女三部作”の完結編。嘆きの母はドイツのフライブルクに、暗闇の母はニューヨークにいたが、最後の涙の母はイタリア・ローマで復活、最も美しく残忍な彼女は白い魔女の血を受け継ぐサラを狙い、関係する人々を次々に殺していく。『インフェルノ』から実に27年ぶりに作られた本作は、この壮大な三部作ラストを飾るのに相応しい内容であったのか!?結論から言うと、期待値が高ければ高いほど落胆する度合いは深まる壮大な失敗作品・・・と言ってしまうとそれまでだけれども、見所がないわけではないので、良い面、悪い面をそれぞれ挙げてみたい。

まず、良かった点。前2作を上回るゴア描写。とにかく人体破壊をこれでもかと見せつける展開はシリーズ随一。「切り裂かれた腹部から溢れ出た腸で首を絞められて絶命する女性」「斧で執拗に頭部をカチ割られる神父」「鋭利な凶器で両目を抉られる女性」「股間から刺さった槍が突き抜けて口から飛び出して死ぬ女性」などなど、全盛期のフルチも驚くようなゴア描写が盛り沢山。それ以外にも、乳児を川へ投げ捨てたり、子供の惨殺死体を見せたりと、容赦ない描写もあり、全体的には逆にやり過ぎ感も感じてしまうほど。次に、魔女の力で世界が邪悪な雰囲気に包まれていく設定は面白い。作られたのは2007年だが、世紀末的な感じがちょっとワクワクさせるし、世界に散らばってる魔女が電車や飛行機で集まってくるのもある意味斬新だ。

対して悪かった点は―こちらの方が多いんだけど―、まず、魔女の設定がイマイチ。続々と集まってくるのはいいんだけど、気品のかけらもないただのケバイお姉ちゃん連中がハイテンションで騒いでるようにしか見えず、肝心の涙の母も凄みが足りない。大体、着ている法衣がまるでホームレスが来ているようなボロ布なのも頂けないが(ほとんど裸体なのはまあ良いとして)、なんかこうラスボス感が感じられないのだ。相変わらず、唐突にやられて終わるのはいつものパターンだけれども、今回も法衣を剥ぎ取られたら魔力を失ってあまりにもあっさり死んじゃうのには「もう笑うしかない」。そして、残念なのが全体的にチープなつくりが見えてしまうところ。『サスペリア』も『インフェルノ』も古風で独特な建物や調度品がいい雰囲気を醸し出していたし、ケバケバしい原色を使った色彩が他の映画には無い個性を放っていた。しかし、本作にはそれがない。あまりにも時間が空きすぎて風景も変わり、別次元の物語のように思えてしまう。そして、音楽。一応、シモネッティがクレジットされているが、一言でいえば地味。ゴブリンのサウンドを超えるのはまず不可能だけど、何かもっと特徴的なメロディーを聞かせてほしかった気がします。

その他にも、ストーリーが破綻しているとか(これはいつものこと)、キャラの行動が意味不明とか(これもいつものこと)、最後サラが魔法を使わんと槍を使って終わっちゃうとかまるで設定を生かしていないところとか、突っ込みどころは多々あるが、よくよく考えればこれがいつものアルジェント節なのかもしれない。ただ、昔は、それらの欠点を吹き飛ばすような勢いがあったのに、それができなくなっているのが本作の欠点になっているのかも。アーシアとダリア・ニコロディの母娘共演も嬉しいんだが、その霊的表現が古臭いのも含めて(余りにも安っぽいCGなのも悲しい)、アルジェントも年を取ったんだなあ~・・・としみじみ感じてしまったのが寂しい。しかし、取り合えず死ぬまでに撮ってくれたんだから、それだけでも良しとしていいんじゃなかな。甘いか。


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死霊のえじき Blu-ray 『初回生産限定版』

2020年03月06日 01:49

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『死霊のえじき』ブルーレイ。先月自宅に届いていたんだけれども、諸事情で、最近開封したところ。封入特典は、「42Pフルカラーブックレット」「THE DEAD WALKの新聞ミニレプリカ」「オリジナル脚本」「VHS風アウターケース」で、表のBOXのジャケットは3D仕様でいろいろと凝った仕掛けが施されております。さらにディスクは2枚組で、HDニューマスターによる滅茶苦茶キレイに生まれ変わった本編に、合計320分にも及ぶ特典映像を収録したディスクが付いたものになっている。まだ、特典ディスクまでは観きれてないんだけれども、とりあえず本編を久々にじっくり見て、今まで見た中で一番美しい『死霊のえじき』を満喫できました♪とても1985年製作の35年前の映画とは思えない映像で、細部までレストアされていて、ここまで細かな作業を行ってくれたことに本当にご苦労様ですと言いたいです。新録の日本語吹き替えもあるし、オマケのトリビア字幕も楽しめました。

作品内容については、以前の記事でも書いたけど、哲学的なゾンビ映画逸品である認識は変わらず。日本公開当時は、ホラー映画~とりわけ特殊メイクを前面に押し出したスプラッタームービー~が最も勢いのあった頃で、この『死霊のえじき』も残酷ゴアシーンをこれでもかと予告編でも打ち出していたんで、皆それを目当てで映画館に足を運んだはずだが、いざ本編を見てみると、なかなかお目当てのゾンビと残酷場面はなかなか出てこず、どちらかといえば地味~な会話シーンが延々と続き(オマケに地下のシンプルな会議室&実験室ばかりで、太陽の光がほとんど差し込まない暗い画面がほとんど)、クライマックスの軍人大殺戮でやっと留飲を下げたという、少々消化不良で映画館を後にした記憶が今でも残っている、残念な記憶で終わった映画であった。これはあの『ゾンビ』の続編で、ロメロのゾンビ・サーガ3部作の完結編であるとの情報もあって、ファンの期待値を最大にまで上げていたことも、評価を下げてしまった原因であったと思われる。逆に同年公開の『バタリアン』は前評判よりも良かったこともあって、映画自体の評価は上がった方であった。そんなふうに当時は低評価&興行成績もライバルに負けてしまい、不遇な扱いを長年受けてきた本作だが、年数を重ねていくうちに作品自体が見直されて、今では一定の評価も受けて「そんなに悪い映画じゃないよね。むしろ、よくできた作品だよね」に変わってきているのが個人的には嬉しく思います。『ゾンビ』の明るい雰囲気とは真逆のシリアスで真面目な『死霊のえじき』、“夜明け”から“昼間”にタイトルが変わったのにむしろ暗い画面ばかりになっているけれども、この重苦しい終末観あるれる感じが好きなんですよねー。まあ、人によって好みはあると思いますが、間違いなくゾンビ映画史にその名を刻んでいる、ゾンビ映画を語るうえで、『死霊のえじき』はやっぱり外すことのできない重要な作品であると思います。


特典5種類
左上から、アウターBOX、VHS風ケース、
左下から、新聞ミニレプリカ、オリジナル脚本、カラーブックレット



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左が、VHS風ケースで、右が、中のジャケット。BOXのジャケットとはまた違ったものになっている(というか、通常版のデザインですね)






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