ゴア・ゴア・ガールズ

2020年12月09日 22:43

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【原題名】THE GORE GORE GIRLS
【製作】ハーシェル・ゴードン・ルイス
【監督】ハーシェル・ゴードン・ルイス
【脚本】アラン・J・ダッチマン
【撮影】エスカンダー・アメリプール
【音楽】シェルドン・セイモア
【出演】フランク・クレス、エイミー・ファレル、ヘッダ・ルービン
【製作年度】1971年
【製作国】アメリカ
【上映時間】84分


【STORY】
ゴーゴーダンサーが惨殺される事件が発生、新聞記者のナンシーは私立探偵のエイブラハムを雇い事件を追う。ストリップクラブに潜入して聞き込みを続けるが、ダンサーたちが次々に殺されていく。犯人をおびき寄せるため、エイブラハムは素人ストリップコンテストの開催を持ち掛ける。コンテストは、飛び入り参加したナンシーが優勝、その夜酔いつぶれたナンシーのもとに殺人鬼が現れた。エイブラハムに正体を見破られた犯人はマンションのベランダから飛び降り地面に激突、通りすがりの車が犯人の頭をひき潰していく。

【REVIEW】
スプラッタームービーの帝王ルイスの取り合えず引退作品。『血の祝祭日』『悪魔のかつら屋』『2000人の狂人』など1960年~70年だにかけて低予算スプラッタームービーを製作、ドライブインシアターを中心に人気を博すが、本作をもって映画製作を離れることになる。ルイス作品は、その後の80年代のホラーブームで再評価を受け、ビデオリリースも続き、ルイス本人も2002年に『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』で監督に返り咲くことになる。

この『ゴア・ゴア・ガールズ』でもスプラッター描写が盛り沢山で、ダンサーの顔面を鏡に執拗に打ち付けてグチャグチャに潰したり、刃物で目ん玉を抉りだしたり、沸騰した油に顔面を押し付けたり、熱したアイロンで顔面を焼いたりと、これでもかと美女がエグイ殺され方をされまくります(これには、犯人の過去の恨みが関係している)。もちろん、古い作品なので、特殊メイク自体はリアルではないが、作り物と分かっていても時間をかけてネチネチと顔面を損壊させていく描写は病的な匂いさえする。それでも、怖さがあまり感じられないのは、殺人に至るまでの描写があまりにもあっさりしていて、非常に明るい感じがするから。主人公の探偵が潔癖症でスカしたキャラだったり、捜査している刑事も真面目なのか馬鹿なのか微妙な設定で、やっていること演技も含めてほとんど素人同然だから仕方がないのかも(実際、本業の役者よりも、ルイスの知人が大挙出演しているらしいから、素人映画なのだろう)。ということで、見せ場はゴア描写とこれまたやたらと出てくるダンサーたちのヌード描写。まあ、脱いでは殺され、脱いでは殺されていき、分かりやすいある意味素晴らしい映画なのかもしれません。


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クロール -凶暴領域-

2020年12月05日 21:32

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【原題名】CRAWL
【製作】サム・ライミ、クレイグ・フローレス、アレクサンドル・アジャ
【監督】アレクサンドル・アジャ
【脚本】マイケル・ラスムッセン、ショーン・ラスムッセン
【撮影】マキシム・アレクサンドル
【音楽】マックス・アルジ、シュテフェン・トゥーム
【出演】カヤ・スコデラーリオ、バリー・ペッパー
【製作年度】2019年
【製作国】アメリカ
【上映時間】88分


【STORY】
大学の競泳選手であるヘイリーは、姉のべスから父親のデイブと連絡が取れなくなっていることを聞かされる。デイブは離婚後フロリダで独り暮らしをしており、その地域一帯にはハリケーンにより避難警報が発令されていた。気になったヘイリーは暴風雨の中実家へ戻り、家の中を探すうち、地下室で重傷を負ったデイブを発見する。助け出そうと階段へ向かうが、巨大なワニと遭遇し地下室から抜け出せない。この家の周りの湿地帯にはもともとワニが多数生息しており、折からの大雨でワニが家の周りまで入ってきていたのだった。地下室内はどんどん浸水し、二人はワニの攻撃をかわしながら何とか脱出を試みる。

【REVIEW】
昨年、スクリーンで鑑賞した『クロール-狂暴領域-』が安くなっていたので、ソフトを購入して鑑賞。劇場で見たときには、昨今の公開作品が150分を超えるものも珍しくない中、上映時間90分弱と潔い短さで若干物足りなさもありましたが、自宅で見ると丁度良い長さ。この手の動物パニック物は短く感じるくらいが丁度いい気がします。

で、この映画、主な登場人物は主人公親子+飼い犬(名前はシュガー)のみでほぼ進行、途中、助けを求めようとした若者3人(向かいの店で火事場泥棒中)や様子を見に来た警官2人(うち一人は姉のベスの元カレ)はワニの群れに瞬殺されてしまい、結局人間2人でワニと対峙することに。「結構ワニに噛みつかれて重傷なのに結構素早く動けちゃうのね」とか、「ワニが居るはずの場所で結構のんびり水に浸かっちゃっているいるのね」とか、いろいろと突っ込みどころは存在するものの、ワニの造形や襲ってくるタイミング、ワニとの攻防場面が良くできていてワニの群れ+洪水からの脱出劇として単純に楽しめる作品だと思います。まあ、ほかに存在するワニ映画が出来の悪いものも多数存在するんで、それらと比べれば至極マトモな映画である気がします・・・(比べたらあかんのかもしれませんが・・・)。

主人公のヘイリーと父親のデイブとの関係がこのワニ事件で回復していくのをサラッと組み込んでいるのはいいんですが、ワニの群れが多数泳ぐ水の中で「お前ならできる!!」とヘイリーにボートまで泳がせるシーンには「おいおい、それはないんとちゃう!?」とさすがに自分も突っ込んでしまいましたが、一応競泳生活で思い悩んでいたヘイリーが自ら殻をぶち破ったということで良しとしておきます。タイトルも『クロール』ですしね。監督のアレクサンドル・アジャは、同じ水中パニック物で過去に『ピラニア3D』を撮っていましたが、ブラックなジョークが散りばめられていたピラニアと比べると本作はシリアスに徹していて笑う場面はほぼ無し。ワニも怪獣っぽくはなくリアルな生物として描いていて真面目な作り。脚本にはもうひとひねりほしかった気もしますが、まあ見ても損のないワニ映画だとしておきます。


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クロールステッカー
ブルーレイ+DVDのセットで購入。謎のワニのステッカーまで付いていました。




ガバリン

2020年11月12日 20:51

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【原題名】HOUSE
【製作】ショーン・S・カニンガム
【監督】スティーヴ・マイナー
【脚本】イーサン・ワイリー
【撮影】マック・アールバーグ
【音楽】ハリー・マンフレディーニ
【出演】ウィリアム・カット、ジョージ・ウェント、リチャード・モール、ケイ・レンツ、メアリー・スタヴィン
【製作年度】1986年
【製作国】アメリカ
【上映時間】93分


【STORY】
ホラー作家のロジャーは、相続した叔母の屋敷に引っ越してきた。ここでは以前幼い息子が失踪、それが原因で妻とも離婚した経緯があり、家主の叔母は首をつって自殺していた。曰くつきのお化け屋敷であったが、息子の手掛かりを探すのと新作小説を執筆するため、生活を始めることに。ある晩、叔母の幽霊を見たロジャーは屋敷内で怪物と遭遇し始める。やがて、記憶はベトナム戦争に従軍していた頃に遡る。ロジャーには戦友のベンという男がいた。二人で行動していた時、ベンは負傷しロジャーは助けを求めて隊へ戻るが、ベンを助けることができなかった。そして、息子の失踪が、この忌まわしき戦争時の体験が原因であることを確信したとき、ベンの亡霊が現れる。

【REVIEW】
制作:ショーン・S・カニンガム、監督:スティーヴ・マイナー、音楽:ハリー・マンフレディー二の“13日の金曜日”トリオによるホラー・コメディー。ロジャーが越してくる屋敷にはいろいろな怪物が出てくるが、日本公開時には、独自のネーミングが付けられてキャラがクローズアップされていた。妻のサンディから変身するのは「ダイエット・デブリン」、亡霊ゾンビは「ビッグベン」、クローゼットから現れるモンスターは「アイトラム」など、この辺のノリは『バタリアン』のネーミングとも同じ感じ。モンスター群も見かけはグロいが、残酷さはなく、むしろどことなくユーモラスさが漂う。血糊が画面に飛び散ることもなく、ファミリーで楽しめる健康的なホラー映画な作りとなっている(ちなみに、日本公開時は「パズル・スリラー」なるキャッチフレーズが付けられていた)。

だからといって大人が楽しめないというわけではなく、ロジャーやベン、隣人らのキャラも立っていて面白いし、細かな笑いも所々に散りばめられていて飽きない。怖さを突き詰めていく王道ホラーもいいが、この『ガバリン』のように肩ひじ張らずお気楽に見る小品も悪くはない。アメリカ映画のいいところは、こういう一見子供向けのジャンル映画を予算をかけて真面目に制作して、子供も大人も楽しめる作品を作ってきたことじゃないかと思う。今見ても、モンスターの造形はいい。CGじゃない手作り感満載の質感が良いんですよ。

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ギリシャ・ゾンビ

2019年02月13日 18:09

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【原題名】TO KAKO
【製作】ランブロス・トリフィリス、P・ノウシアス、クラウディオ・ボリヴァー
【監督】ヨルゴス・ノウシアス
【脚本】ヨルゴス・ノウシアス
【撮影】ヨルゴス・ノウシアス
【音楽】G・グリゴロボウロス、タノス・カラバジアキス
【出演】メレティス・ゲオルギアディス、べビ・モスコヴァコウ、アルギリス・タナソウラス
2005年/ギリシャ映画/85分


【STORY】
地下洞窟を探索していた3人の男性が何者かに襲われる。からくもそこから逃げ出すことに成功するが、彼らにはその時の記憶が抜け落ちていた。それから数時間後、彼らは突然周囲の人間に襲いかかり、彼らに噛みつかれた人間はゾンビとなってさらに犠牲者を増やしていくのだった。

父親が母親を噛み殺した現場から逃げ出した少女ジェニーは、同じアパートに住む女性と一緒に街中に向かうが、そこでもゾンビが溢れかえっていた。またタクシー運転手のアルギリスは客を乗せて走行中にゾンビの大群と遭遇し、ゾンビのいない場所へ車を走らせる。途中でジェニーら生存者と合流したアルギリスたちだったが、行く先々でゾンビに見つかり、ゾンビとの戦いの果て仲間たちも命を落としていくのだった。

【REVIEW】
ギリシャ初の本格ゾンビ・ムービーという触れ込みの本作は、演出・脚本ともに粗削りながらもユーモアとゴア描写が混然一体となったなかなかパワフルな仕上がりの1本。原因不明のゾンビパンデミックが発生したアテネ市内は戒厳令が引かれ、僅かに生き残った人々は安全な場所を求めて逃げ続けるが、ゾンビの群れは執拗に追いかけてゆく・・・。ありふれたストーリーながら、不気味な音楽、ビデオ撮りと思われるドキュメンタリーチックな映像が独特の雰囲気を醸し出しており、荒っぽい展開や素人くさい俳優の演技さえもこれらに貢献している感じさえするから不思議。ひたすら走るゾンビから逃げていく展開は『28日後...』の影響が大きいと思われるが、80年代に作られた『ナイトメア・シティ』にも似た感がある。

見せ場のゴアシーンは唐突に出現、中盤のレストランの場面、隠れ家にゾンビが押し寄せてきた場面に集約されていて、ゾンビを首チョンパ、親指で目潰し、胴体チョンパなど過激なスプラッター描写が目白押し。また、登場人物のゾンビへの攻撃が何故か執拗で(何回も何回もナイフで刺したり、鈍器で何回も何回も頭部を潰したり―など)、この辺がまた何か病的な感じがして、狙ってやっているとしたら面白い(じゃなければ、ただのやり過ぎ演出)。目立った主人公が居ないため、最後まで誰が生き残るか分からない展開も、結果的にプラスになっている(褒め過ぎか)。勿論、低予算で製作されているのは明らかで、特殊メイクもチープだが、勢いが感じられるのは評価していいと思う。『死霊のはらわた』もそうだったが、お金が無くても見せたいものを存分に見せてやる・・・!という気概のようなものが感じられ、個人的にはツボにはまった作品です。ちなみに、同監督は2009年に『ヴァーサス・ゾンビ 時空を越えた生きる屍』という続編も撮っているらしいので、見てみたい(ユーザーレビューが低いので、期待しない方がいいかもしれませんが)。

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キャンディマン

2018年08月08日 21:24

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【原題名】CANDYMAN
【製作】シガージョン・サイヴァッツォン、アラン・プール、スティーヴ・ゴリン
【監督】バーナード・ローズ
【脚本】バーナード・ローズ
【撮影】アンソニー・B・リッチモンド
【音楽】フィリップ・グラス
【出演】トニー・トッド、ヴァージニア・マドセン、ザンダー・バークレイ、ケイシー・レモンズ、ヴァネッサ・ウィリアムズ
1992年/99分/アメリカ映画


【STORY】
大学院生のヘレンは都市伝説についての論文作成を進めている最中、“鏡に向かってその名前を5回唱えると、キャンディマンが現れる”という噂を聞き調べ始める。キャンディマンが犯人ではないかと噂される殺人事件の現場に向かったヘレンは、そこで奇妙な壁画を発見する。さらに興味本位で鏡に向かって名前を唱えてしまったヘレンの前に背の高い黒人の男が現れる。彼こそが、100年前に白人女性と禁断の恋に落ちたため、残酷な方法で処刑されたキャンディマンだった。単なる都市伝説だと決めつけその存在を否定してきたヘレンは夢か現実かも分からないまま、キャンディマンに追い詰められていく。

【REVIEW】
都市伝説を調査していく過程で触れてはいけないものに触れてしまったため、猟奇殺人事件に巻き込まれ、最後は自分自身がその伝説になってしまった女性の悲劇を映画いたホラー。人を殺す直接的な残酷描写はないが、おびただしい血糊や切り裂かれた死体の描写はあり、血なまぐささは感じられる。しかし、それよりも、伝承の中でしか生きられないキャンディマンが現実に現れ、主人公をあちらの世界にひきずりこもうとするやりとりが幻想的に描かれ、単なるゴアホラーで終わっていない。ヘレンがキャンディマンから逃れようともがけばもがくほど、抜けられない深みにはまっていく流れは心理的に絶望感が溢れていてドンヨリ来ます。特に、殺人犯として追われて病院から逃げ出してきたのに、自宅に戻ったら夫が他の女子大生とデキていたのを発見したときのヘレンの「もう、どうでもいいわー」感が切ない(そのあと、きっちり夫に復讐を果たすが)。また、アメリカに存在する根強い人種差別問題が物語の根底にあり、それが映画全体に重みも与えている。途中、登場する黒人たちの住む団地の怖さは格別、普通、白人女性が一人で行ったら絶対無事に帰ってこれない感が満載だ。この手の題材を扱う映画を見ていて思うのは、触れてはいけないものを見つけたらそっとしておけよ・・・!ということ。「やばそうだな~」と思ったあとには、絶対やばいことになっている確率100%なのに、それでも、首を突っ込まずにいられないのが人間なんでしょうなあ・・・。

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