4匹の蠅

2018年04月01日 10:26

四匹の蠅03

【原題名】QUATTRO MOSCHE DI VELLUTO GRIGIO
【製作】サルヴァトーレ・アルジェント
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ダリオ・アルジェント、ルイジ・コッツィ、マリオ・フォリエッティ
【撮影】フランコ・ディ・ジャコモ
【音楽】エンニオ・モリコーネ
【出演】マイケル・ブランドン・ミムジー・ファーマー、ジャン・ピエール・マリエール、バッド・スペンサー、
1971年/イタリア映画/101分


【STORY】
ロックバンドのドラマーのロベルトは最近、見知らぬ男に付け回されていてウンザリしていた。ある晩、リハーサルを終えた後、立ち去ろうとするその男を発見したロベルトは後を追い、なぜ自分を尾行するのか詰問する。口論となり、男はナイフを持ち出し脅すが、揉み合いの末、ロベルトはナイフで男の腹部を刺していた。男は倒れ落ちるが、そのとき何者かがその瞬間をカメラに映していた。

その後、ロベルトの自宅に死んだ男の身分証や犯行現場の写真が送られてきて、ある晩ロベルトは侵入してきた不審者に脅迫されて殺されかける。警察に頼れないロベルトは親友のゴッドフリーに相談、私立探偵も雇って犯人捜しを開始する。しかし、ロベルトの家のメイドが殺され、犯人を見つけ出していた私立探偵も殺されてしまう。恐怖で混乱する妻のニーナを自宅から避難させたロベルトは、代わりに身を案じてくれるニーナの従姉妹のダリアと親密になるが、やがてダリアも殺されてしまう。警察はダリアの網膜に犯人の映像が残っているかもしれないと司法解剖を提案、検査の結果、映っていたのは4匹の黒い蠅だった。

【REVIEW】
歓びの毒牙』『私は目撃者』に続く、アルジェントの初期三部作の三作目。殺害現場を目撃された主人公が、脅迫を重ねる姿の見えない犯人を捜していくというストーリー。動物や昆虫を謎解きのキーワードにしていた作品が続いていたが、ここでは“蠅”が犯人を捜しあてる重要なポイントに。レーザー解析で死ぬ直前に網膜に映っていた映像を観るというのは奇抜なアイデアだが、科学的な根拠は!?と少々疑問符も。犯人が幼少のころに受けた事件で人知れず病んでおり、それが殺人事件の動機になっているのはアルジェントの一貫した犯人像だが、ロベルトをターゲットにした理由はいささか弱い(というか、強引)。

公園で追い詰められていきメイドが殺されるシーン、地下鉄で尾行をしていた私立探偵がトイレで返り討ちに合うシーンなどは、なかなかサスペンスフルで見応えがある。また、ニーナ役のミムジー・ファーマーがラスト車を飛ばしてトラックに激突、フロントガラスが粉々に飛び散り彼女が死んでゆく様をスローモーションで延々と見せるあたりは、アルジェントの異様なこだわりが垣間見える。音楽も安定のモリコーネながらも、本作は一風変わった登場人物で笑いの要素が多いのも特徴。友人のゴッドフリーは川辺に住む浮浪者だし、彼から紹介される私立探偵は事件を全く解決したことのないオカマキャラ、ロベルト宅にやってくる郵便配達員は不審者に間違えられて袋叩きに遭い、次回からは武装して配達に来る仕事熱心な男だったりする。

シナリオが強引、ストーリーの展開がご都合主義なのは、それがアルジェントじゃないか!と許せるなら楽しめるでしょう。殺人場面がおとなしくて流れる血の量は少ないのが残念だが、冒頭で登場する人形と、自分の過去を暴露しロベルトを追い詰めるミムジー・ファーマーの演技は怖い。何よりも、劇場公開から37年間、長らくソフト化されず、幻とされていた本作が、今現在こうして普通に鑑賞できることが嬉しいと思います。

四匹の蠅01


四匹の蠅02




遊星からの物体X ファーストコンタクト

2015年02月04日 02:27

遊星からの物体X ファーストコンタクト [DVD]遊星からの物体X ファーストコンタクト [DVD]
(2013/01/09)
メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョエル・エドガートン 他

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【原題名】THE THING
【製作】マーク・エイブラハム、エリック・ニューマン
【監督】マシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr
【脚本】エリック・ハイセラー
【撮影】ミシェル・アブラモヴィッチ
【音楽】マルコ・ベルトラミ
【出演】メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョエル・エドガートン、アドウェール・アキノエ=アグバエ
2011年/アメリカ映画/103分


【STORY】
コロンビア大学の古生物学者のケイトは極秘の調査を依頼され、南極のノルウェー基地へ向かう。隊員たちが案内した場所には、約10万年前に墜落してきたとみられる飛行物体と、それに乗ってやってきた地球外生命体が氷に閉じ込められていた。その生命体を基地に持ち帰り、早速調べ始めるが、その中の生命体はまだ生存していて氷を突き破って脱出、隊員たちに襲いかかっていく。ケイトらは、その生き物の細胞を検査し、細胞単位で他の生き物を取り込み同化することができると推測する。

【REVIEW】
原作はジョン・W・キャンベル・Jrの「影が行く」。最初の映画化は51年のハワード・ホークス版『遊星よりの物体X』、そのリメイクが82年の『遊星からの物体X』、本作は82年版の前日譚、なぜノルウェー基地は全滅したのか!?その経緯を描いたもの。前日譚なんで物語の着地点はほぼ決まっているので、要はそこまでをいかに面白く見せるかがポイントだと思うのだけど、個人的には良くできたと誉めてもいいと思います。

82年のカーペンター版は出演者が全員男ばかりでしたが、今回は女性が2人登場。特に主演のケイトを演じるメアリー・エリザベス・ウィンステッドが知的かつ男勝りなヒロインを演じていてグッド!エイリアンに臆することなく、最後まで渡り合って、終始シリアスな演技も良かったです。それに比べると、他の男性陣が若干影が薄いのが残念。また、エイリアンの造形も当然CG技術が格段に進歩した今ならではのスムーズな変化を見せてくれていて、これも及第点。腕が外れて、個別に動き回ったり、人間に顔ごと押し付けて同化していく様は、これぞ物体X!と拍手喝采の場面。この2人同化したままで焼け死んじゃう奴が82年版にも出てくるので、ファンなら思わずニヤリとしてしまうのでは!?ほかにも連動しているネタが散りばめられていて、こういうファンサービスは嬉しいですね。

ただ、全体を見渡せば、82年版の焼き直し~アメリカ基地で起こったことがノルウェー基地で起こっているだけ~とも言え、目新しさが感じられないのは否めない。人間に同化している中から見つけ出す方法に、歯の治療跡を確認するのや有機物以外はコピーできないなど、細かなアイデアが追加されているのは面白かったですが、基本82年版を大きく逸脱しているところはありません。裏を返せば、それだけカーペンター版が良くできていたということ。犯人探しで皆が疑心暗鬼になっていくサスペンスも、クリーチャーのデザインも、前作を越えているかと言えば、正直できていない。CG技術がこんだけ進歩していても、ロブ・ボッティンの超絶特殊メイクで造型された物体Xは今見ても、全く色褪せていません。30年以上前の作品なのに、見劣りしないってスゴイですよね!?多分、これ以後もあのインパクトを超えるものは出てこないんじゃないかと思います。

とまあ、勝ったか負けたかの勝負はさておき、82年版に続いていくプロローグとして見ていけば、クオリティーは保てていると見ていいでしょう。最後、生き残ったヒロインはどこに消えたのか!?謎を残しつつも、基地から逃げ出したあの犬を追ってヘリが飛び立っていくラストシーンも、作り手はよく分かっていると思います。ああー、見終わったら、やっぱりカーペンター版が見たくなってきた・・・。この後、見ます。


THE THING 006

THE THING007

歓びの毒牙

2012年10月22日 22:34

歓びの毒牙 HDリマスター版 [DVD]歓びの毒牙 HDリマスター版 [DVD]
(2012/07/03)
トニー・ムサンテ、エヴァ・レンツィ 他

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【原題名】THE BIRD WITH THE CRYSTAL PLUMAGE
【製作】サルヴァトーレ・アルジェント
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ダリオ・アルジェント
【撮影】ヴィットリオ・ストラーロ
【音楽】エンニオ・モリコーネ
【出演】トニー・ムサンテ、スージー・ケンドール、エンリコ・マリア・サレルノ、エヴァ・レンツィ
1970年/イタリア・西ドイツ映画/96分


【STORY】
ローマに滞在している米国人作家のサムは、夜に帰宅途中、通りがかった画廊で争う2人の姿を目撃する。揉み合う中、腹部をナイフで刺された女性が倒れ、もう1人の黒いコートの人物は逃げ去って行った。女性はこの画廊のオーナーの妻のモニカで、幸いにも一命は取り留めた。事件の目撃者として、警察から足止めをくらったサムは、好奇心から犯人を捜し始める。その頃、ローマでは、若い女性ばかりが襲われる連続殺人事件が起こっていた。そして、手掛かりをつかもうとするサムの周りにも、犯人の魔の手が伸びて来ていた。


【REVIEW】
ダリオ・アルジェントが推理小説「通り魔」をベースに脚本を書き下ろし、そして自らの監督デビュー作ともなった記念すべき作品。次々に襲われる若い女性たち、犯人の黒づくめの衣装、凶器のナイフに対する異常な執着心など、アルジェント独自のこだわりはすでに第1作から垣間見える。そして、主人公が外国からやってきて、たまたま事件に巻き込まれる、犯人は過去にトラウマを負い人知れず苦しんでいて、それが犯行の動機だった、などの設定もお馴染みであり、基本的な骨格はこの後もずっと続いていくわけである。

事件を担当する警察が全く役立たずで、主人公の推理がビシバシ当たって面白いほど核心に迫ってゆくストーリーはご都合主義とも取れなくはないが、この流れるような展開こそアルジェント節なのかもしれない。だから、犯人は誰だ!?という謎解きよりも、スタイリッシュに魅せる殺人絵巻を堪能する映画なんでしょう。エンニオ・モリコーネの奏でる渋いBGMも、さすがの出来栄え。

サムの恋人役のスージー・ケンドールは、同じイタリア製のジャーロの名作『影なき淫獣』でもヒロインを演じてた女優さん。冒頭で襲われるモニカ役のエヴァ・レンツィもキレイな人ですが、ラストの狂気をはらんだ高笑いは最後まで耳に残ります。でも、特典のインタビューで、この作品のこの役を演じた事は役者人生においてマイナスだったと言い放っているのには意外でした。やっぱ、俳優さんて自意識過剰というか、プライド高い人が多いんですかねえ。


歓びの毒牙01

歓びの毒牙02

歓びの毒牙03



遊星からの物体X

2012年09月20日 15:23

遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]
(2012/11/02)
カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー 他

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【原題名】THE THING
【製作】デビッド・フォスター、ローレンス・ターマン
【監督】ジョン・カーペンター
【脚本】ビル・ランカスター
【撮影】ディーン・カンディ
【音楽】エンニオ・モリコーネ
【特殊メイク】ロブ・ボッティン
【出演】カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー、T・K・カーター、デビッド・クレノン、キース・デビッド、リチャード・ダイサート、チャールズ・ハラハン、ピーター・マロニー、リチャード・メイサー、ドナルド・モファット、ジョエル・ポリス、トーマス・ウェイツ
1982年/アメリカ映画/109分


【STORY】
南極、アメリカの観測基地に一匹の犬を追ってノルウェーのヘリコプターがやってくる。ノルウェーヘリの乗組員は犬を殺そうと銃を乱射して、射殺される。異様な事態にパイロットのマクレディたちはノルウェー基地へ向かう。基地内外は無残に破壊され、隊員たちは全滅していた。マクレディらは、資料と、変わり果てた死体を基地へ持ち帰る。

それらを調べて分かって来たのは、10万年前に宇宙から飛来したUFOが南極大陸に着陸して埋まっていたものを、ノルウェー隊が発掘したこと。そして、そこには生物らしきものが眠っていて、それを起こしたことにより、ノルウェー基地は全滅したこと。その頃、持ち帰った死体から溶けた血液が隊員に襲いかかる。

【REVIEW】
1951年の『遊星よりの物体X』を原作の「影が行く」により忠実にリメイクしたのが82年の本作。『遊星よりの~』は人型エイリアンがやってきたが、ジョン・カーペンターの『遊星からの~』の方はエイリアンが特定の姿を持たないことにより、誰に乗り移っているのか分からないサスペンスを生むのに一役買っている。さらに、今年になって、ノルウェー基地でのエイリアンとの遭遇を描いた前日譚『遊星からの物体X~ファースト・コンタクト』も公開された。

個人的にはSFホラーで1,2を争う傑作だと言い切りたい!(もう1本は、やっぱり『エイリアン』かな・・・)演出のカーペンター、主演のカート・ラッセル、音楽のエンニオ・モリコーネ、特殊メイクのロブ・ボッティン。非凡なる彼らの才能が結集して作られた本作は、初めて見たときは本当にもう衝撃で、そして30年たった今見ても全く色褪せない素晴らしい作品だと思います。

南極という閉ざされた空間で男ばかりの隊員らに襲いかかる物体X。とにかくこの造形が見事の一言。相手の体内に入り込み、同化していくわけですが、正体を見破られるとその姿を露呈。冒頭の犬は顔が四方に裂けクモのような長い脚が生えて他の犬に襲いかかり、人間の胴体から現われたヤツは天井の梁にしがみつき、その異様に長い首と表情が一度見たら忘れられない不気味な姿をしてました。さらに、首だけ千切れてニョキニョキと足が生えて歩き出すわ、頭がバカっと割れて噛みつくわ、あり得ない人体変形のオンパレード。これらを創造したボッティンは当時20歳くらいだったというから天才というしかないんでしょうね。

公開当時はSFX過剰で映画としての出来はイマイチと、評判は芳しくなかったようですが、それだけ素晴らしい出来栄えであったということ。それはCGによるVFXが主流の現在でも、全く見劣りしない、というか手作り感が生み出す迫力は昔の方が上じゃあないでしょうか。それ位エイリアンの造形は見事。最後に対決するブレアモンスターが意外なほど、あっさりダイナマイト一発でやられちゃうのは、もったいない気もしましたが。

ラスト、燃え上がる南極基地を見ながら男2人が凍えてゆくのを待つシーン。残った2人は人間だったのか、それともエイリアンに同化されていたのか、最後まで分からないまま終わっていきます。どちらにしても、主人公たちを待つのは死でしかない、救いようのない終わり方がいつまでも印象に残ります。バックに流れるエンニオ・モリコーネのスコアもマッチしていて最高!

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