ラ・ヨローナ~泣く女~

2020年05月18日 23:54

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【原題名】THE CURSE OF LA LLORONA
【製作】ジェームズ・ワン、ゲイリー・ドーベルマン、エミール・グラッドストーン
【監督】マイケル・チャベス
【脚本】ミッキ・ドートリー、トビアス・イアコニス
【撮影】マイケル・バージェス
【音楽】ジョセフ・ビシャラ
【出演】リンダ・カーデリーニ、レイモンド・クルツ、パトリシア・ヴェラスケス
【製作年度】2019年
【製作国】アメリカ
【時間】93分


【STORY】
ソーシャルワーカーのアンナは、自分が担当する家庭の子供が無断で学校を休んでいたため、その家を訪問する。対応した母親パトリシアの態度は不自然なものであり、2人の子供は施錠された部屋にじっと隠れていた。虐待を疑うアンナは子供たちを施設で保護するが、パトリシアは何かから子供らを守ろうとしているように見えた。その後、施設内を抜け出した子供らが川で溺死体で発見される。パトリシアは、アンナの対応が子供たちを死に至らしめたと糾弾し、アンナの子供らが同じ目に遭うと警告する。それから、アンナの子供サマンサとクリスは白装束の謎の女性を目撃するようになる。その女性は、メキシコに古くから伝わる呪われた“ヨローナ”という亡霊であった。子供らに危険が迫る中、アンナは教会に助けを求める。

【REVIEW】
『死霊館』シリーズの世界観に存在するエピソードとして描かれた幽霊もの。主人公のアンナが助けを求める教会の神父は、『アナベル 死霊館の人形』でも登場した人物で、アナベルもちょこっとだけ見える。本作に出てくる幽霊“ヨローナ”は、不貞を働いた夫に絶望し復讐するため愛する子供らを溺死させるが、我に返った彼女は悲嘆し自らも入水自殺、その後幽霊となったヨローナは自分のすすり泣く声を聞いた子供たちを連れ去っていく・・・という、有名な存在らしい。そんな幽霊に呪われたアンナ母子と彼女らを助けようとする神父(最初の神父とはまた別の人)の戦いを描いている。

さて、結論から言うと本作あまり怖くない。このシリーズ伝統の不意に現れて脅かすパターンは健在でびっくりする箇所はあるけれども、お話全体があまり怖くない。驚かせ方も上手いが、定番すぎて予想できてしまうところがあり(やっぱり人間慣れてしまう)、肝心のヨローナの存在が怖くないのだ。ビジュアル的に怖いというよりも綺麗とか美しいんじゃないという感じで、日本の女性の幽霊のようなゾワゾワ~ッと来るような不気味さが感じられないのだ。初代貞子もそうだが、動きが鈍いんで走って逃げきれそうな気がするが、余りの不気味さ・怖さに腰がすくんで逃げられない、見たくないのに目を逸らせない、といった怖がらせ方じゃないのだ。どちらかと言えば、お化け屋敷のアトラクションにも似た感じで、キャーと言って逃げ回るようなライトな怖さに留まっていることが残念。

また、ヨローナに呪われるアンナ母子にスポットが当てられているが、本当に可哀そうなのは最初に出てきたパトリシア一家ではないだろうか?自力でヨローナの呪いから子供たちを守ろうとしていたが外部に邪魔されて子供たちはヨローナによって殺され、母親は殺人の嫌疑を掛けられてしまう。恨んだパトリシアはアンナにヨローナの呪いを差し向けるが、最後はアンナを助けることになる。まあ、詳しい事情をちゃんと説明していなかったから周囲に理解してもらえなくても仕方がないけど、なんか腑に落ちない、しっくりとハッピーエンドに感じないところ。

以上、全体的にはソツなく作られているが目新しい物がなく、驚かせ方もどこかで見たような気がしてしまい、怖くないホラーとなってしまい残念な作品。監督のマイケル・チャベスはこれが長編デビューということで、そう考えるとこんなものかな・・・と思うが、次作は『死霊館』の3作目を任されているらしい。大丈夫だろうか。

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レストストップ デッドアヘッド

2019年05月13日 23:43

レストストップ

【原題名】REST STOP
【製作】トニー・クランツ、ダニエル・マイリック、ジョン・シャイバン
【監督】ジョン・シャイバン
【脚本】ジョン・シャイバン
【撮影】マーク・ヴァーゴ
【音楽】ベアー・マクレアリー
【出演】ジェイミー・アレクサンダー、ジョーイ・メンディシーノ、ジョーイ・ローレンス、ニック・オレフィス
2007年/アメリカ映画/85分


【STORY】
ボーイフレンドのジェスと駆け落ちしたニコールはテキサスからハリウッドを目指して車で向かっていた。途中、寂れた休憩所のトイレに寄ったニコールは、出てくるとジェスが車ごと消え去っているのに驚く。そこに現れる薄汚れた不気味な黄色いトラック。トラックの運転席から投げ出されたのは、ジェスの携帯電話。ジェスはこの男に連れ去られたのか!?迫ってくる男からトイレに逃げ込むニコール。自分の携帯は圏外で、公園事務所にあった無線で呼びかけても助けは来ない。男の目的は何なのか!?追い詰められていくニコールは手元にある道具を使って、必死の抵抗を試みる。

【REVIEW】
人里離れた休憩所に取り残された女性が、トラックに乗った謎の男に襲われ続けるホラー映画。携帯は圏外で、歩いて助けを呼ぶには距離があり過ぎて、この孤独感と絶望感はなかなか堪えるシチュエーション。やっとのことで無線の呼びかけに答えてくれたのは実は犯人の男だったり、偶然やってきた白バイ警官もあっさり犯人にやられちゃったりと、ヒロインの助かりそうな期待は無残にも打ち砕かれていく。そして、とどめは恋人の拷問シーンを録画したビデオを見せられてニコールの恐怖も頂点に!・・・・と、けっこうハードな展開で、拷問シーンもなかなかグロくていいんですが、謎が多すぎて消化不良なまま終わってしまうのが難点。

襲ってくる謎の男の動機は不明だし(まあ、それはこの手の映画では割と多いが―)、おそらくこの男に殺されたであろう被害者が1970年代頃からずっと続いていて、思わず「こいつ一体いくつなん?」と突っ込みたくなるし、途中ニコールが逃げ込むキャンピングカーの変態一家の正体も不明だし、最大の謎はニコールが実体験する被害者との接触。逃げ込んだトイレの用具室からは、犯人に拷問されていた女性が隠れているのを発見するが突然姿を消し、瀕死の重傷を負った警官も忽然と消えてしまう。彼らの存在は何なのか?具体的な説明はないまま、ラスト同じような運命をたどるニコール。これでいいのか?、こんな終わり方でいいのか?問いかけるが誰も答えてくれない。観客を置きっぱなしで去っていく、なかなか素晴らしい映画だ。続編で、『レストストップ ドント・ルック・アップ』というのが2年後に製作されており、「こっちで、1作目の謎を解明してくれているのか!?」と一瞬期待したが、レビューを見ると、さっぱり謎解きはされていないようで、一瞬で見るのを放棄した。とまあ、スッキリしない本作だが、ヒロイン役のジェイミー・アレクサンダーは綺麗な女優さんなんで、唯一そこが救いか。


レイプ・オブ・アナ・フリッツ

2018年09月02日 21:37

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【原題名】THE CORPSE OF ANNA FRITZ
【製作総指揮】オリオル・マイモ、ヘクトール・ヘルナンデス・ビセンス
【監督】ヘクトール・ヘルナンデス・ビセンス
【脚本】ヘクトール・ヘルナンデス・ビセンス
【撮影】リカルド・カニエラス
【音楽】トロ・プラッツ
【出演】アルバ・リバス、クリスティアン・バレンシア、ベルナート・サウメル、アルベルト・カルボ
2015年/スペイン映画/75分


【STORY】
人気女優アナ・フリッツが急死したその晩、病院職員のパウは友人にアナ・フリッツの遺体があることを自慢する。友人のハビとイバンは興味本位で遺体安置室へ案内してもらうが、アナの遺体に触れるうちに欲望が目覚め、遺体を凌辱してしまう。イバンの後、パウが行為の最中、突然アナが目を覚ます。生き返ったアナを目の前にして、イバンはレイプ犯罪が発覚することを恐れて、アナをもう一度殺そうとするが、助けようと主張するハビと喧嘩になり、ハビは重傷を負ってしまう。何とか事態を収拾しようと試みるイバンとパウだが、身の危険を感じたアナは隙を見て逃げ出そうとする。

【REVIEW】
基本的に出てくる登場人物は男3人と生き返った女1人で、舞台はほぼ遺体安置室のみ。観る前のイメージがどことなく『ジェーン・ドゥの解剖』みたいな感じかな・・・と思っていたが、全然違ってました。憧れの女優アナ・フリッツの遺体をレイプしてしまったために、その犯罪をもみ消そうとアナを殺そうとするが、うまくいかず更に友人も殺してしまいドツボにはまっていく男たち。悪いことを隠そうとしてさらに悪事を重ねて戻れなくなっていく彼らが辿る道にハッピーエンドは無く、結局破滅しかないわけで・・・。善人面していたパウが一番悲惨な死に方だけれども、よーく考えれば、以前に死姦していたのを自慢していたし、実際アナもレイプしているわけだから、殺されても仕方がない気がする。ただ、ラストは衝撃的かもしれないが、そこに至るまでの中盤があまり盛り上がらないのがこの映画の弱いところ。設定次第では、もっと違った展開もできた気もするが、そもそも何故アナは生き返ったのかが謎のまま。蘇生した原因をもっと広げていけば面白くなっていたかも(例えば、超自然的な何かが原因で・・・とかね)。

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リーピング

2018年04月30日 17:06

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【原題名】THE REAPING
【製作】ジョエル・シルヴァー、ロバート・ゼメキス、スーザン・ダウニー、ハーバート・W・ゲインズ
【監督】スティーヴン・ホプキンス
【脚本】ケイリー・W・ヘイズ、チャド・ヘイズ
【撮影】ピーター・レヴィ
【音楽】ジョン・フリッゼル
【出演】ヒラリー・スワンク、イドリス・エルバ、デビッド・モリッシー、アナソフィア・ロブ
2007年/アメリカ映画/99分


【STORY】
かつて宣教師として赴いた地で、夫と娘を失ったキャサリンは信仰を捨て、今では宗教的な奇跡を科学的に解明する大学教授の職に就いていた。そんな彼女のもとにある不可解な出来事の真相を解明してほしいとの依頼が。ヘイブンという小さな町で突然川が真っ赤に染まる怪現象が発生し、その原因として12歳の少女が疑われているという。調査に向かったキャサリンは、さらに不可解な現象に遭遇、それらは旧約聖書の10の災いとそっくりなことに気付く。科学的な説明がつかないまま、疑惑の少女ローレンの家に向かった彼女は、そこで悪魔崇拝の儀式が行われていたことを知る。果たして、ローレンはサタンの生まれ変わりなのか?

【REVIEW】
ヒラリー・スワンク主演のオカルト・ホラー。この手の宗教を絡めたホラーは、やはり宗派が違うと、事の重大さや怖さに認識の違いが生じるからか、あまりピンと来ないことが多いが、本作も同じ感じが。旧約聖書に由来する不吉な出来事、「カエルが空から降ってくる」「家畜が大量死」「ハエや蛆虫が湧いてくる」などは、遭遇すると確かに驚くだろうが、超自然的な現象な気がして、神とか悪魔とかに関係しているとはあまりピンと来ないのが残念。それよりも、不吉なことが続いて不穏になった住民が、村八分にしている家の娘の仕業と決め付けて殺そうとする方がよっぽど怖い気がする。

物語的には、割とありきたりな「犯人と思っていたら、実は逆の方が・・・」みたいなパターンで驚くほどはなく、怪現象もあっさりしていて怖さが感じられないのがイマイチなところ。最後の天から降り注ぐ炎のところは、ホントそのまんまの描写で、住人がボンボン火の玉に当たって燃え尽きて逆に笑えてきてしまった。イナゴの大発生のシーンはCGと分かるが、迫力は『エクソシストⅡ』を凌いでいて、ここが最大の見せ場だったか。全体的にどこかで見たシーンが続いて目新しさは薄いが、派手な音響と短い上映時間で中だるみせず最後までもっていってくれているのは有難い。ラストは思わせぶりな終わり方だけれども、続編は―作らない方がいいだろうなあ。

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ラプチャー 破裂

2018年04月03日 11:10

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【原題名】RUPTURE
【製作】アンドリュー・ラザー、スティーヴン・シャインバーグ、クリスティーナ・ヴァイス・ルーリー、アンドレア・イェルヴォリーノ
【監督】スティーヴン・シャインバーグ
【脚本】ブライアン・ネルソン
【撮影】カリム・ハッセン
【音楽】ネイサン・ラーソン
【出演】ノオミ・ラパス、ピーター・ストーメア、レスリー・マンヴィル、ケリー・ビシェ
2016年/アメリカ映画/102分


【STORY】
シングルマザーのレネーは車で帰宅途中に、突然何者かに拉致される。気が付くと、そこは薄暗い研究施設で、彼女のほかにも拉致されてきて拘束されている人間がいた。そこでは被験者の恐れるものを与え続けて、その先で起こる人体の変化を確かめているらしい。実験に失敗した後は、記憶を書き換えられ元の生活に戻れる者もいるが、実験に耐え切れず死亡するものも。どうやら、実験を行っている者たちは人間ではないらしい。そして、レネーの実験の順番がやってくる。謎の薬品を注射された後、拘束され動けない彼女の体に与えられたのは、最も忌み嫌う“クモ”だった。


【REVIEW】
不思議な印象の作品。いきなりの拉致、拘束されての人体実験という流れはありがちなパターンながらも、この先どうなるんだろう?という期待させるサスペンス風の切り口だが、後半からは予想外のSF的な展開に。極限の恐怖を与え続けて、ある遺伝子が破壊(劇中では“破裂”と呼称)されると、どうやら人間を超越した何者かに変化を遂げるようで、実験を行っているやつらは、自分たちの仲間を増やすのが目的。しかし、仲間を増やして何をやっているのかが良く分からず(「人間は地球に対するウィルスで、邪魔な存在なんだ~」みたいな、ありふれたセリフも出てくるが、具体的に何をしたいかは不明)、観終わったあとはモヤモヤしたものが残る。例えば、変化した後は何か特別なスキルが備わっているとか、能力が人間をはるかに超えているとか見せてくれればまだしも、これじゃあ只の怪しい組織にしか見えない。ただ、映画自体から発する、何とも言えない不思議な雰囲気は面白い。先が読めない、正体不明、なんだかよく分からないものを見てしまった、という感じです。主演は、『ミレニアム シリーズ』『プロメテウス』のノオミ・ラパス。クモ恐怖症なのに、強制的に投入されて、発狂寸前状態を熱演、正直彼女の演技でこの映画は成り立っていた気がしますなあ。ただ、出てくるクモが意外に少なかったのが残念。最後は、全身クモまみれ!みたいなのを期待していたんですが・・・。

ラプチャー03


ラプチャー02






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