ザ・リッパ―

2010年10月20日 09:20

ザ・リッパ―04
【原題名】LO SQUARTATORE DI NEW YORK/THE NEW YORK RIPPER
【製作】ファブリッツィオ・デ・アンジェリス
【監督】ルチオ・フルチ
【脚本】ルチオ・フルチ、ジャンフランコ・クレリチ、ビンチェンツォ・マンニーノ、ダルダノ・サケッティ
【撮影】ルイジ・クベイレル
【音楽】フランチェスコ・デ・マージ
【出演】ジャック・ヘデレ―、アルマンタ・ケラー、ハワード・ロス、アンドリュー・ぺインタ―、アレッサンドラ・デリ・コリ、パオロ・マルコ
1982年/イタリア映画/87分


【STORY】
ニューヨークで発生した猟奇連続殺人事件。被害者はいずれも若くて美しい女性で、鋭利な刃物で切り刻まれていた。事件を追うウィリアムズ警部は、「アヒルのような喋り方をする人物」という手がかりを得るが、犯人を特定できないまま、被害者は増えていく。

その後、襲われながらも一命を取り留めた女性フェイの証言から、容疑者に指が2本無い男が浮上するが、必死の捜査にもかかわらず、その男は死体で発見される。事件のあった晩の記憶をたどり、真相を探るフェイ。しかし、切り裂き魔の正体を突き止めたとき、再び犯人の魔の手が近づきつつあった。


【REVIEW】
『地獄の門』『ビヨンド』『墓地裏の家』などの一連のゾンビものを撮った後に、フルチが発表したサスペンス・スプラッター。ニューヨークを舞台に、美女たちが次々に血祭りにあげられるパターンは後年作った『マーダー・ロック』と似ていますが、内容的には本作の方が上。犯人探しのミステリーが弱いのはどちらもですが、殺し方の残忍さ、飛び散る血の量ともに『ザ・リッパ―』の方が格段に高いです。それに加えて、エロチックな要素が多いのも特徴。やたら出て来る女優さんのヌードシーンと、どぎついスプラッターシーンが絶妙にミックスされた怪作です。

狙われるのは“若くて美しく健康的な女性”。それが犯人の動機でもあり、事件の背景に不幸な少女の存在が浮かび上がるラストにつながるのですが、ストーリーにあんまりその悲しみなんかが反映されていなくて感情移入できないのが残念。となると、やっぱり目玉は残酷シーンになるわけで、その点本作は期待を裏切らない仕上がり。腹部をナイフでメッタ突きしたり、女性の股関に割れたビンを突き刺すなど痛いシーンが続出。さらに、ベッドに縛り付けられた半裸の娼婦を殺すシーンでは(被害者役は『地獄の門』や『墓地裏の家』にも出演していたD・ドリア)、剃刀で眼球や乳首が真っ二つに切られ、その後全身を切り刻まれます。で、極めつけは犯人がフェィに襲いかかるラストシーンなんですが、そこに警察が駆けつけ発砲~で弾丸が顔面を貫通!血しぶきがビシャッと飛び散る場面。身体でなく顔面を砕くあたりをきっちり映すなどサービス精神は旺盛でした。そういえば、『ビヨンド』でも、少女ゾンビの頭が吹っ飛ばされる有名なシーンがありましたが・・・。最初の方では、小言を言う署長役でフルチ自身も登場しています。

マーダー・ロック

2010年10月18日 16:06

マーダ―ロック01
【原題名】MURDER ROCK
【製作】アウグスト・カミニ―ト
【監督】ルチオ・フルチ
【脚本】ルチオ・フルチ、ジャンフランコ・クレリチ、ヴィンセンツォ・マンニーノ、ロベルト・ジャンヴィッティ
【撮影】ジョセッぺ・ピノリ
【音楽】キース・エマーソン
【出演】オルガ・カルラトス、レイ・ラヴロック、クラウディオ・カシネッリ、コシモ・シニエリ、ジョセッぺ・マンアイウオロ
1985年/イタリア映画/89分


【STORY】
ニューヨークのアーツ・フォー・リビングセンター。ブロードウェイを目指す若者達が、新作ミュージカルの舞台を目指し、練習に励んでいた。そんな中、殺人事件が発生、被害者はレッスンに通う女生徒で、鋭利で長いピンのようなもので心臓を貫かれていた。警察はセンター内部の人間の犯行ではないかと疑うが、犯人を特定できぬまま、第二第三の殺人事件が起きる。手口はいずれも同様の凶器によるものだった。

その頃、スクールの女教師のキャンディスはたびたび見る悪夢に悩まされていた。ある日、悪夢の中で襲いかかってくる男と瓜二つの人物を見かけた彼女は、その男に接近する。その男の名はジョージといい、売れない俳優だという。キャンディスは夢で出会ったこの男が、事件の犯人だと確信するが・・・。


【REVIEW】
「イタリア・ホラーの帝王、ルチオ・フルチが放つスプラッター・スリラー」というふれこみで観ましたが、肝心のスプラッター描写は控えめなサスペンスもの。犯人はクロロホルムを嗅がせて眠らせたあと、長いピンを胸に突き立てて、心臓を貫く!のですが、流れる血の量もわずかで、一連のフルチのゾンビものを経験した後では、なんとも物足りない。同じニューヨークを舞台にしたサスペンスもの『ザ・リッパ―』と比較してもゴア度は低めだ。本格的なスリラーを目指してあえて控えたのかもしれませんが、いかんせん犯人捜しのサスペンス構成が弱いので、なんともどっちつかずな印象になってしまっているのは残念。ラストの犯行の動機が分かるところはいいのですが、被害者たちはとばっちりで殺されたようなもんで、なんとも釈然としないものが残ります。

舞台がダンススクールということで、レオタード美女がわんさか出演。被害者もキレイなオネエチャンばかりで、この辺はフルチ先生もツボを押さえています。『サンゲリア』にも出ていたオルガ・カルラトスが女教師役、夢の中の殺人者ジョージで『悪魔の墓場』のレイ・ラヴロックが出ております。音楽のキース・エマーソンも今となっては懐かしですね。



“ホラー・マニアックス”シリーズ

2010年10月15日 00:47

「いま蘇る傑作ホラーコレクション!
ファン待望の傑作・名作続出!!」

SPOさんから現在リリース中のDVD。
8月発売が『地獄の門』と『怪奇!血のしたたる家』、
10月発売が『ビヨンド』と『ハウリング』、
12月発売が『墓地裏の家』と『オペラ座の怪人』。



“納得の映像特典と充実のスペック”が売りらしいですが、ホラー映画ファンとしては廃盤になっていて入手困難だったり、新しく特典が付いてきたりしての再発が増えるのは嬉しいのですが―。

私的に気になるのは、当然フルチ先生の3作品なわけで、果たして買うべきか、買わずに見送るべきなのか!?お金に余裕があれば、バンバン買い揃えれば何も悩まなくて済むのですが、当然そんな余裕があるわけもなく、日々の小遣いから工面しなくていけないのがつらいところです。

持っていない作品ならば、即ゲットなんでしょうが、どれも以前出ていたのが家にある。なので、仕様がどれだけ良くなっているかが問題。デジタルリマスター&5.1chサラウンド仕様なのは、やっぱり魅力的。お世辞にもJVD版の『地獄の門』なんかは映像はキレイとはとても言えないものでしたから。フルチの油の乗り切った残酷絵巻を高画質で鑑賞できるのは、それだけでも嬉しいですもんね。

問題は特典。『地獄の門』は・映像特典:1.オリジナル劇場予告編 2.ラジオスポット とちょっと寂しくないかい?という印象。『ビヨンド』は、・映像特典:監督インタビュー、主要キャスト&スタッフのインタビュー、ドイツ語版プレクレジット・シークエンス、3種類のオリジナル劇場予告編、ヴァン・ベッバーによる音楽ビデオ<約72分> と、けっこう盛りだくさん。以前出ていたパイオニア版よりは、充実してますね。(ポスター&スチールギャラリーは無いみたいね)で、『墓地裏の家』は、・映像特典:1.ダルダーノ・サケッティ(脚本)のインタビュー 2.イタリア版劇場予告編 3.アメリカ版劇場予告編 4.アメリカ版TVスポット 5.本邦初公開の削除シーン。サケッティ先生のインタビューと、削除シーンが新たに増えてマス。当然、減っては無いけど、強烈に購買意欲をかきたてられるほどでもないような。

しかし!そこはメーカーさんもぬかりなく。このラインナップの中から3枚買って応募すると、『地獄の門』+『ビヨンド』のオリジナル・サントラがもれなく貰えるのだとか!期限は年内いっぱい。そして、サントラだけの発売の予定はないらしい・・・。

なんだかんだ悩んでも、やっぱり買わされてしまいそうな気がします。商売上手よねえ。しかし、『ゾンビ』の新世紀完全版DVD-BOXも、「今買わないと、今後入手は困難!」みたいなアナウンスがあったのに(貯金おろして買いましたよ!)、すぐに単品DVDが発売になったりと、先のことは読めません。なので、結局欲しいのは全部買っちゃうパターンなんでしょう。(そのうちブルーレイも出るでしょうが・・・)


しかし、以前買いそびれていた方には朗報なのは間違いなし。鮮明になったフルチ作品を堪能する機会ですね。

スクワーム

2010年10月13日 22:50

スクワーム01
【原題名】SQUIRM
【製作】ジョージ・マナス
【監督】ジェフ・リーバーマン
【脚本】ジェフ・リーバーマン
【撮影】ジョセフ・マンジーン
【音楽】ロバート・プリンス
【原作】リチャード・カーティス
【出演】ドン・スカ―ディノ、パトリシア・ピアシー、R・A・ダウ、ジーン・サリバン
1976年/アメリカ映画/93分


【STORY】
1975年9月、ジョージア州の海辺の小さな町フライ・クリークでは未曾有の集中豪雨で高圧電線が切断され、大量の電気が地中に放電された。一夜明け、ジェリーは隣人のロジャーから養殖場のトラックを借り、ニューヨークから訪ねて来る恋人のミックを迎えに行く。トラックには養殖されている10万匹のゴカイが積まれていたが、ジェリーたちが帰ってきた後、ゴカイは全て消えていた。

ジェリーに横恋慕するロジャーは、釣りに行った途中でジェリーに想いを告白、迫るが彼女に拒否され、倒れた拍子に餌のゴカイに襲われる。凶暴化したゴカイはロジャーの顔面に喰らいつき、ロジャーはもがきながら森へ消えて行った。

その頃、街でも被害が続出。ロジャーの父親もゴカイにはらわたを喰われ、水道やシャワーからもはい出てきたゴカイはやがて街全体を飲み込んでいく。ジェリーの一軒家にもゴカイは押し寄せ、母親も犠牲になる。ゴカイの洪水に2階へ逃げこむジェリーとミック。そこに狂ったロジャーが襲いかかってきた。ロジャーとミックはもつれあい、ロジャーはゴカイの渦に転落し、沈んでいった。

夜が明け、目を覚ますと、電力会社の社員が復旧したことを伝えにきた。大量のゴカイの姿はなく、静かな風景が戻っていた。しかし、街の住民の姿も消えていた―。


【REVIEW】
70年代に量産された動物・昆虫パニックもの。特に、大量の虫が出て来るタイプの映画はそれだけでも恐怖ですが、本作の主役はうにょうにょと蠢くゴカイ!同類の映画で『ミミズバーガー』なんてのもありますが、長くてうねる生き物は、それだけで生理的に来るものがありますね。タイトルのスクワームは、ミミズなどがのたくって這うという意味で、クライマックスのゴカイの洪水は吐き気をもよおす出来栄えです。(鑑賞後、スパゲッティは当分ノーサンキューですね)

ほとんど無名の俳優陣の中で、主役はやっぱりゴカイ!特別に調教されたゴカイのアップ映像なんかも織り交ぜ、CGの無かった時代の工夫を感じさせます。量で攻めて来る気持ち悪さは、『クリープショー』第5話のゴキブリの大群といい勝負ではないでしょうか。さらに、特殊効果でリック・ベイカーも参加。皮膚に食い込むゴカイのメイクなんかは出色の出来で、さすが!です。ロジャーが襲われるシーンはトラウマ必至の名シーンですね・・・。


殺戮謝肉祭~屍肉の晩餐~

2010年10月08日 17:00

殺戮謝肉祭01
【原題名】LES RAISINS DE LA MORT
【製作】クロード・ゲージ
【監督】ジャン・ローラン
【脚本】ジャン・ローラン
【撮影】クロード・ビクニ―
【音楽】フィリップ・シズモン
【特殊効果】アルフレード・ティベリ
【出演】マリ―・ジョルジュ・パスカル、セルジュ・マルカン、ブリジット・ラーエ、フェリックス・マルテン
1978年/フランス映画/85分


【STORY】
恋人に会いに行くために、南仏に向かっている列車の中でエリザベスは不審な男に襲われる。顔面から不気味な液体を垂らしながら追いかけて来る男から逃れるため、エリザベスは列車を降り、一軒家に助けを求めて立ち寄るが、その家の親子も何かの病気に冒されているのか様子がおかしい。やがて、父親は娘を農具で串刺しにし、自身も死を懇願する。

その後、寒村にたどりつくが、すでに村人も奇病に冒されており、襲いかかってきた。からくも、救出隊に助け出されたエリザベスは、恋人の待つ農園へ向かう。やっとのことで、再会を果たすが―。恋人も奇病にかかっていて、変わり果てた姿に彼女は言葉を失う。最愛の人間も失い、彼女が最後に取った行動は・・・。


【REVIEW】
フランスのカルト的な監督ジャン・ローランのゾンビ・ホラー。ただ、厳密に言えばゾンビとは言い難い面もあります。主人公たちを襲うのは、農薬で汚染されたワインを飲んだ人々。身体に痘痕ができたり、膿を垂らしたりと、見た目はグロくゾンビチック。でも、襲ってくるものの、噛みついたりはしないし、人肉を欲したりもしません。どちらかといえば、伝染病にかかっている不審者といった方が適切かも。

盲目美女の首を手斧でぶった切ったり、不気味な村人の造形はまぎれもなくホラー。しかし、エリザベスの逃避行を淡々と追っていく前半部分は、なんともまったりした感じで、緊迫感を盛り上げようと言う感じが薄い。恐怖の積み重ねよりも、恋人を殺してしまい悲嘆にくれ、生首に口づけして息絶える男や、恋人の仇を取って復讐するエリザベスの姿などの方が重要視されていて、メランコリックな味わいはさすがジャン・ローランといったところでしょうか。なので、この雰囲気が好きな人は受け入れられるでしょうが、一般的な映画としてみるとつらいと思います。まあ、ホラー映画の大半は一般論の通じないものがほとんどでしょうが。


ナイトメア・シティ

2010年10月05日 17:52

ナイトメア・シティ01
【原題名】NIGHTMARE CITY(CITY OF THE WALKING DEAD)
【製作】ディエゴ・アルシメード
【監督】ウンベルト・レンツィ
【脚本】アントニオ・チェザーレ・コルチ、ルイス・マリア・デルガド、ピエロ・レニョーリ
【音楽】ステルビオ・チプリアーニ
【撮影】ハンス・バーマン
【出演】メル・ファーラ―、ヒューゴ・スティグリッツ、ラウラ・トロッタ―、フランシスコ・ラバル
1980年/イタリア・スペイン合作/87分


【STORY】
TVレポーターのジャンは、有名な科学者であるハーゲンベック教授にインタビューするために空港へ向かう。そこで、交信不能の軍輸送機の緊急着陸を目撃、厳戒態勢の中、中から降りてきたのはゾンビの集団だった。銃や凶器で武装したゾンビたちは、取り囲んでいた警備兵たちを血祭りにあげ、街へ向かう。

軍の調査で、ゾンビのたちは放射能を浴びた人間の変わり果てた姿であることが分かる。驚異的な生命力を持った彼らは、頭を破壊されない限り死なず、自身の細胞破壊を食い止めるため、人間の血を吸っているのであった。

発電所、TV局、病院、そして空軍基地と、ゾンビの群れに制圧され、軍本部も作戦を放棄、街には犠牲者の死体の山が。その頃、ジャンは妻と合流し必死に逃亡を続けるが、逃げ込んだ遊園地のジェットコースターの上で追い詰められてしまう。駆けつけたヘリに救出を求めるが、あと一歩のところで、妻が転落死―。そこで、ジャンは目覚めた。あれは悪夢だったのだ。ほっとするジャンは急いで仕事に向かう。今日は著名な教授のインタビューがあるのだ。空港に向かった彼の目前で、正体不明の軍の輸送機が不時着する。


【REVIEW】
『人喰族』で知られるウンベルト・レンツィが放った異色のゾンビ映画。ロメロが定義づけたリビングデッドと大きく異なるのは、本作のゾンビは武器を使用し、全力疾走。仲間と連携し、生存者を追い詰める。『バタリアン』で走るゾンビは認知されたが、本作はその先を行っていた。そのゾンビは顔にコケを生やしたようなグチャッとしたメイク(やっぱり放射能を浴びたから?)、でも着ている衣服はなぜかキレイ。無表情で~少し怒り気味かも~人間を襲いかかる殺戮ショーが延々と繰り広げられる。

途中、手術をしている最中にゾンビが乱入。医者がメスを投げて応戦!なんて珍シーンもあるが、全体的には真面目に作ってある。なのに、ギャグにしか見えないのは何故だろう。空港で一大事を目撃した主人公はTV局に帰って、緊急放送を試みるが圧力がかかって放送は中止。代わりにダンスシーンを収録中にゾンビが乱入、血しぶきがあがる・・・。この間も、のんびりした音楽が流れ、出演者たちもマイペース、緊迫感は微塵もない。ゾンビが襲いいかかるスプラッター描写はたんまりあるのだが、パニックになっている人の様子や、軍部の具体的な制圧作戦の描写もなく(偉いさんがヘリで偵察しているだけ)、スケール感とか映画としての奥行きが無さ過ぎ。そんなところがいかにもB級イタリア映画らしいといえば、らしいか。

本作は、『ナイトメア・シティ』というタイトルではビデオ発売、『ゾンビドローム』という題名で劇場公開、『吸血魔の街』というタイトルでLDも出ていたそうです。

悪魔の沼

2010年10月04日 13:15

悪魔の沼01
【原題名】EATEN ALIVE(DEATH TRAP)
【製作】マーディ―・ラスタム
【監督】トビ―・フーパー
【脚本】アルビン・L・ファスト、キム・ヘンケル、マーディー・ラスタム
【音楽】ウェイン・ベル、トビ―・フーパー
【撮影】ロバート・カラミコ
【出演】ネヴィル・ブランド、メル・フェラー、マリリン・バーンズ、ウィリアム・フィンリー、キャロリン・ジョーンズ、スチュアート・ウィズマン、ロバート・イングランド
1976年/アメリカ映画/91分


【STORY】
人里離れたモーテルに部屋を取りに来たクララ。店の主人ジャドに案内されるが、彼女が売春婦だと分かると態度が豹変。襲いかかるジャドを押しのけ外へ逃げるが、凶器でめった突きにされ、モーテルのすぐそばの沼に放りこまれる。そこには巨大なワニが潜んでいた・・・。

やがて、旅行中の親子、行方不明の娘を探す父親と姉(冒頭で惨殺される売春婦は、この家族)、街の若いカップルなど、ふだんはほとんど人気の無いこのモーテルに続々と人が集まってくる。その中で、ジャドの狂気も加速、次々に大ガマで血祭りにあげ、ワニの餌にしてゆくのだった。

【REVIEW】
悪魔のいけにえ』で衝撃的なデビューを飾ったトビ―・フーパーが、ハリウッドに乗り込んで撮った2作目。今回は、戦争体験をトラウマに抱えるサイコなモーテルの主人が、宿泊客を殺してワニの餌食にさせていたという、これまたショッキングな内容の1本。前作に引き続き、実話ネタがベースということで、アメリカの片田舎(特にテキサス辺り)へ行くときは、食肉工場と寂れたモーテルには絶対近づくなという教訓が身にしみます。

なんの罪もない若者たちを有無を言わさずチェーンソーで殺しまくった『悪魔のいけにえ』と比べると、どうしてもパワーダウンが否めない、なんとも不幸な作品。チェーンソーに対して大ガマはどうみても迫力不足だし、それを補う人喰いワニもハリボテ感ありありで、今一つ。セット撮影されたモーテルの雰囲気も悪くないが、『~いけにえ』のざらついたロケ撮影のフィルム感が醸し出す恐怖の上を行くのは難しい。つまるところ、“傑作だった『悪魔のいけにえ』の監督の次の作品”というレッテルを貼られて、常に比較されてしまうのがネックなんでしょうね。

しかし、そういう先入観を無くして鑑賞すると、意外に楽しくて見所もあります。霧の立ち込める沼地、赤を中心に原色を使った照明は、お化け屋敷風でいい感じ。床下に逃げ込んだ少女の叫び声が、下から聞こえてきてくるシーンは、セット撮影が活かされたところ。ベッドに縛りつけられて、狂ったようにもがく女を『悪魔のいけにえ』に続いてM・バーンズが熱演。さらに、ジャドを小馬鹿にし、モーテルでワニの餌食にされる青年役で、『エルム街の悪夢』のR・イングランドも出演しています。殺人鬼役のN・ブランドのサイコがかった演技も、最初からラストまで途切れず続きますが、最後は飼っていたペットにガブリ。爬虫類とはいえ、やっぱり、しつけはちゃんとしておくべきだったか。




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