【原題名】ZOMBIE DAWN OF THE DEAD
【製作】リチャード・P・ルービンスタイン、クラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ
【監督】ジョージ・A・ロメロ
【脚本】ジョージ・A・ロメロ
【撮影】マイケル・ゴーニック
【音楽】ゴブリン、ダリオ・アルジェント
【特殊メイク】トム・サヴィーニ
【出演】デビッド・エンゲ、ケン・フォーリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス
1978年/アメリカ・イタリア映画/119分
【STORY】
突如、死者が甦り、人間に襲いかかり始めた。原因は不明、分かっていることは、彼らが人間を襲うのは人肉を貪り喰うためであり、そして人間社会が崩壊の危機に瀕していることだった。
フィラデルフィアのTV局に勤めるフランは恋人のヘリパイロットのスティーブンと街から脱出することを決意する。途中、友人のSWAT隊員のロジャーとピーターと合流し、4人はヘリコプターで夜空へ飛び立っていく。しかし地上を歩くゾンビの群れは途切れることなく続き、燃料の補給に立ち寄った先でも、襲いかかってくる。悲壮感と披露感が漂う中、郊外のショッピングモールを見つけた彼らは、その屋上に降り立つ。そこには、安全に休息が取れる場所と食料があった。
その後、ショッピングモール内を自由に行き来するために、建物内のゾンビの一掃を計画し、入口をトラックで塞ごうとするが、その途中でロジャーはゾンビに襲われ片腕と片足を噛まれてしまう。苦難の末、出入り口を封鎖に成功し、ゾンビの居なくなったセンター内で自由な生活を謳歌する4人。しかし、ロジャーの容体は日増しに悪化し、息を引き取るが、ゾンビとなって甦る。ピーターは苦悶の表情で拳銃の引き金を引く。
3人になった彼らは静かな生活を送るが、閉塞感に包まれたショッピングモール内とは裏腹に、外の世界ではさらにゾンビの数が増していた。そんな中、武装した強奪団が現われ、モール内になだれ込んできた。ゾンビと強奪団が入り乱れる中、スティーブンは負傷し、ゾンビの群れに襲われる。ピーターはフランに1人でヘリで逃げるように告げるが―。
【REVIEW】
言わずと知れたゾンビ映画のマスターピース。その影響はホラー映画に“ゾンビ”というジャンルを確立させ、その後数多くの亜流作品を生み出させることになった。これだけ有名な作品なだけに、いろいろなところで語り尽くされた感がありますが、再確認も含めてちょっと振り返りたいと思います。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』発表後、ロメロは『マーティン』や『
ザ・クレイジーズ』などの作品を手掛けていたものの、思ったほどの評価は得られず、興行成績も芳しくなかった。そして『ナイト~』から10年、満を持して公開された続編の『ゾンビ』は世界中で大ヒット、ロメロの名は一躍知れ渡ることになる。それまで、日本でもほぼ無名に等しかったが(実際、『ゾンビ』も当初、資金提供で協力したダリオ・アルジェントの名前の扱いの方が大きかったよう)、本作以後、未公開作品も次々にビデオリリースされ、『クリープショー』や『死霊のえじき』も劇場公開、熱烈なロメロファンが生まれる事になる。
『ナイト~』で確立させたモダンゾンビのスタイル(ゾンビに咬まれると感染する、ゾンビを倒すには頭部を破壊しなければいけない、など)は、トム・サヴィーニの特殊メイクを得てよりリアルに実現。掴み出される内臓や、ライフルで吹き飛ばされる頭部などがフルカラーでスクリーンに登場し、公開された年代を考えるとかなりセンセーショナルだったはず(その前に、『ナイト~』の換骨奪胎版『悪魔の墓場』がカラーで劇場公開されてはいましたが)。そして、適度にゆるいアクションとユーモアを加え、娯楽作品としても非常に見応えのある内容に仕上がっている。それは、衝撃を受けた初見のときも、DVDで見直す今現在も変わりません。それだけ、完成度が高いと言えると思います。
そんな『ゾンビ』ですが、多数のバージョンが存在するのも有名。英語圏での権利をロメロ側が、その他(ヨーロッパやアジアなどの非英語圏)の地域をアルジェント側が持つことになり、それぞれが編集したものが出回ったためだが、それぞれ時間や音楽に違いがあり、仕上がった印象はかなり別物になっています。基本的には、ロメロが編集した米国劇場公開版、ディレクターズ・カット版、そしてアルジェント監修版が有名。日本で1979年に初めて公開されたものは、このアルジェント版をベースに残酷シーンをカット、冒頭に惑星の爆発により地上に降り注いだ宇宙線により死者が甦ったという独自のフッテージを挿入したものになっている。さらに、日本でTV放映されたもので、音楽がサスペリアのものに差し替えられたバージョンもあったとか。
で、今回視聴したのはダリオ・アルジェント監修版。米国劇場公開版の127分、ディレクターズカット版の139分に比べると119分と短いが、残酷シーンを中心にテンポ良く編集されていて、なるほど仕上がりはサバイバル・アクションな趣き。全編に流れるゴブリンサウンドもご機嫌で、人気の高いバージョンなのも頷けます。ショックシーンやスプラッタ描写は残して、人間ドラマ部分はバッサリカット、息つく暇さえ与えないゾンビの襲来はまさにこの世の地獄を感じさせます。タイトルは“ZOMBIE DAWN OF THE DEAD"表記で、エンディング・クレジットは黒バックロールにBGMはゴブリンの「サラトザム」。ほのぼのした音楽が流れて終わるロメロ版エンディングと比べると、こちらの方がカッコ良さはダントツ。(ロメロ版のそれは、それで味があるんですが)なんにせよ、ロメロ版とアルジェント版は全く別物と考えた方がいいくらいです。
ホラー映画が好きな人で『ゾンビ』を見たことがない人は少ないと思いますが、もし未見の方はぜひぜひ一度見てください。また、ふだんあんましホラー映画は見ないんだよなあ~・・・という人も、騙されたと思って一度みてほしいです。ゾンビ映画、ホラー映画という枠を超えて、名作であるのに間違いはないです(好き嫌いの好みは人それぞれなんで、血の赤い色を見ただけで気絶しちゃうような方は見ないほうがいいかもしれませんが)。個人的には、オールタイム・オールジャンルでベストの1本です。

『
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
『
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 死霊創世記』
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