ルチオ・フルチの新・デモンズ

2011年12月30日 06:49

ルチオ・フルチの新デモンズ [DVD]ルチオ・フルチの新デモンズ [DVD]
(2004/08/06)
ブレット・ハルゼイ、アル・クライヴァー 他

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【原題名】DEMONIA
【監督】ルチオ・フルチ
【脚本】ルチオ・フルチ、ピエロ・レニョーリ
【撮影】ルイジ・チッカレーゼ
【音楽】ジョバンニ・クリスティアーニ
【出演】ブレット・ハルゼイ、メグ・レジスター、リノ・サレム
1990年/イタリア映画/89分


【STORY】
1486年、シチリア島で若い修道女たちが処刑された。1990年のトロント、降霊会に出席していたライザは修道女が処刑されるヴィジョンを見てしまう。トロント大学の遺跡発掘チームの一員であったライザは、エバンス教授らとともにシチリア島の現場にやってくるが、そこは降霊会で見た場所とそっくりだった。「そこに近づいてはいけない」という地元民の忠告を聞かずに、丘の上の修道院跡地に足を踏み入れたライザは、隠された地下室で磔にされた修道女の死体を発見してしまう。修道女たちは悪魔と契約を交わし悪行の限りを尽くしたため、村人たちに処刑されていた。開け放たれた修道女たちの呪いが人々に降りかかる。

【REVIEW】
ルチオ・フルチの後期の作品。呪われた修道女たちの亡霊が次々と殺人を犯すオカルトタッチな作風だが、全体的にはシチリア島の美しい風景を舞台にのんびりした雰囲気が支配していて緊迫感は薄い。中盤の警察による捜査(やっぱりフルチ警部も登場!)も、だらだらとしていて見ていて中だるみ気味。となってくると、見所はやはりゴアシーンなわけですが、落とし穴で串刺し!海中から生首がドーン!狂った飼い猫に噛み殺される!などけっこう用意されてはいますが、どれもこれも淡白な描写でそれほど怖さはない。最大の見せ場は、唐突に訪れる股裂きのシーン。両足をロープで左右に引っ張られて、徐々に体が裂けてゆき最終的には真っ二つ!!よくこんなシーン思いつくなあと感じますが、前後のシーンが説明不足で、なんで縛り付けられていたん!?どういう仕掛け!?と疑問が。まあ、ただ単に見せたかったでしょうね。

オープニングの修道女が磔にされて処刑されるシーンは『ビヨンド』、降霊会で女性が倒れるシーンは『地獄の門』と、過去の自分の作品と類似した場面を用意してましたが、やはり往年のイケイケパワーは感じられず、作品の出来はこじんまりとしたものに。ラストもどう解釈していいのか意味不明で、その辺は相変わらずだなあ~、です。

肉屋の主人が冷凍室で襲われるシーンは笑えました。突然、向かってくる吊られた肉の塊たち!っていうか、グハッってくらってないで、避ければいいのに・・・。大体、肉が襲ってくるという発想がなんというか。恐くないぞ!?


ゾンビ ディレクターズ・カット版

2011年12月23日 05:00

ゾンビ ディレクターズカット版 HDリマスター・バージョン [DVD]ゾンビ ディレクターズカット版 HDリマスター・バージョン [DVD]
(2010/10/02)
ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー 他

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【原題名】 DAWN OF THE DEAD
【製作】リチャード・P・ルービンスタイン、クラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ
【監督】ジョージ・A・ロメロ
【脚本】ジョージ・A・ロメロ
【撮影】マイケル・ゴーニック
【音楽】ゴブリン、ダリオ・アルジェント
【特殊メイク】トム・サヴィーニ
【出演】デビッド・エンゲ、ケン・フォーリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス
1978年/アメリカ・イタリア映画/139分


【REVIEW】
現在視聴できる最長バージョンのゾンビ(もっと長尺のドイツ版もあるらしいですが)。アルジェント版と比べると20分も長く、同じ映画とは思えないほど見た印象は違う。巡視艇基地での警官隊とのいざこざ、ロジャー死亡後の3人での生活シーン、ゴアシーンなどが多く収録されている。特にモール内でのシーンは、スティーブンとフランのすれ違いと不和、平和になって気の抜けたようなピーターの様子などが丹念に描かれている。このゆったりとしたドラマ部分があるだけに、最後のヘルス・エンジェルスの襲撃がより際立ってくる印象があります。苦労して手に入れた平穏を打ち破るのはゾンビたちではなく、同じ人間。そして、生き残った人間同士による殺し合い。協力してゾンビに立ち向かえば生き残る道も開けたかもしれないのに、そうはせず破滅への道を選ぶ人間たち。真に怖いのは生き返った死者ではなく、自滅していくしかない人間の所業なんでしょうね。

おもしろいのは、平和なモール生活では生きる希望を失ったかのように死んだ目をしていたピーターが、掠奪者が現れたことによって復活するくだり。私服からSWATの制服に着替え、銃を構えたとたん、元の生き生きとしたピーターに戻る。彼もまた、平穏な社会には適応できない人間の1人だったんでしょうねえ。だからこそ、ゾンビのはびこるサバイバルな世界ではカッコよさが引き立つ。うん。ピーターはひたすらカッコイイのだ。

こうして各バージョンを見てみると、アルジェント版にもロメロ版にもそれぞれ良さがあるので、どちらが優れているとか劣っているとかのような論議は意味を成さないでしょう。同じ素材で、違うタッチのドラマが鑑賞できるなんて、他の映画ではなかなかありえない楽しさがあります。問題は、米国劇場公開版とディレクターズカット版はどちらかということ。同じロメロの手によるものながら、微妙に音楽の使用にも差があるし、収録時間も12分ほど違う。『ゾンビ』の全てを観たいなら、ディレクターズカット版で決まりでしょうが、139分というランニングタイムはいささか長すぎるような気もします。ただ、まだどちらも持っていないという方なら、とりあえずディレクターズカット版を買っておけば間違いはないでしょう。今出ているDVDのディレクターズカット版のジャケットはカッコイイしね。


↓以前、出ていたディレクターズカット版。ジャケットはモール内をうろつくゾンビの群れ。
画質はお世辞にも良くなかった。
スマイルBEST ゾンビ ディレクターズカット版 [DVD]スマイルBEST ゾンビ ディレクターズカット版 [DVD]
(2007/12/21)
不明

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ドキュメント・オブ・ザ・デッド

2011年12月22日 08:45

ドキュメント・オブ・ザ・デッド04
【製作総指揮】アッデンダム・シークエンスズ、レン・アンソニー&スタジオ・エンタテイメント
【製作】ロイ・フランケス
【監督】ロイ・フランケス
【脚本】ロイ・フランケス
【撮影】リーブス・レフマン
【編集】デニス・ワーナー、ギャリー・クーパー
【音楽】リック・ウルフィック
【ナレーション】スーザン・タイレル
【出演】ジョージ・A・ロメロ、トム・サビーニ、リチャード・P・ルビンスタイン、マイケル・ゴーニック、クリスティン・ロメロ
1989年/アメリカ映画/90分


『ゾンビ』のメイキングシーンを中心に、ロメロのリビングデッド・シリーズの魅力に迫ったドキュメントドラマ。1978年のピッツバーグ郊外のモンロービル・モールでの実際の撮影風景、ロメロ、ルビンスタイン、サビーニたちや出演者たちへのインタビュー(サビーニのメイクシーンも収録!)など、『ゾンビ』撮影当時の貴重な映像の数々が見られるのは嬉しいところ。撮影時の和やかな雰囲気が伺いしれるエピソードから、配給時のレイティング問題や時間のカット要請など、公開するまでの苦労も聞くことができます。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や『マーティン』についての分析も入っていて、ロメロの映像作家としての流れを追ったドラマ的な感じもありますが、『ザ・クレイジーズ』や『クリープショー』なんかには触れずじまい。そして、最後に挿入されているのは『マスターズ・オブ・ホラー』の撮影シーンで、これはソフト化されるときに付けたしたもののようです。ただ、これは本当にオマケみたいな感じも否めず、必要だったかどうかは疑問。相変わらず現場でサヴィーニの姿が見られるのは嬉しいですけど。

ロジャーの笑顔がイイです。
ドキュメント・オブ・ザ・デッド01

ピーターのインタビューシーン。でも短かった。
ドキュメント・オブ・ザ・デッド02

スティーブンはゾンビメイク後のインタビューだったよう。顔色悪いよ!血糊も付いてるよ!
ドキュメント・オブ・ザ・デッド05

ロメロの次によく写っていたのがサヴィーニ兄貴。
ドキュメント・オブ・ザ・デッド03

LD版ジャケット(表)
ドキュメント・オブ・ザ・デッド(LD版・表)

LD版ジャケット(裏)
ドキュメント・オブ・ザ・デッド(LD版・裏)





ゾンビ(ノベライズ版)

2011年12月21日 08:38

ゾンビ・ノベライズ版01

出版社:ABC出版
著者:ジョージ・A・ロメロ、スザンナ・スパロウ
訳:藤沢良寛
ページ数:269頁
発行日:1994年10月15日
定価:1,631円


ロメロの『ゾンビ』のノベライゼーションは1978年にアメリカのSt.Martin's Pressというところから発売されていて、日本でも映画が公開された当時の1979年に翻訳出版された(これが『死者たちの夜明け』刊:ヘラルド出版)。しかし、この版は絶版となっていて、1994年にディレクターズカット版が公開されたのを機に、新たに新訳版として発行されたのが本書です。著者はロメロとスザンナ・スパロウとの共著となっているが、このスパロウ氏がどういった人物なのかはあとがきでも不明・謎の人物となってます。

ホラー映画の不朽の名作『ゾンビ』が活字で読める!
ゾンビファン、ロメロファンなら、これだけで所有する意義がありますが、映画では分かりづらかった登場人物の心理描写やゾンビ発生当初の様子も少し補完されていて、映画『ゾンビ』の世界をより深く味わうことができます。また、モール内でフランが子犬を飼っている様子や(名前はアダム)、後半突入してくる掠奪団のキャラクターも細かく描写されていたりと(フランがヘリの操縦を練習しているのを目撃していた二人はソアとハチットという名らしい)、小説版でしか出てこないところもあってちょっと嬉しいところ。

ただ、これ1冊だけを読んだだけだと『ゾンビ』の全体像は分かりづらいと思います。日本語訳の問題もあるでしょうが、やはり映像があるのとないのとでは世界観の奥行きが全く違います。画面から漂ってくる終末感ややるせなさ、アルジェント版で顕著なアクションシーンの軽快さ、ロメロ版の重苦しい雰囲気などは、どうしても活字だけでは味わえないものがあります。そう考えると、やはり、映画を見た後に活字による追体験をするといった読み方が合っているのではないかと思います。

↓裏表紙はこんな感じ。
ゾンビ・ノベライズ版02


この復刻版も出版されてから10年以上たつので、新刊で手に入れるのは難しいでしょうね。


ビヨンドTシャツ!

2011年12月08日 01:47

ホラーマニアックスのプレゼント品は、『ビヨンド』オリジナルTシャツで、実は2~3日前に到着していたんですが、そのまま放置してまして、やっと開封しました。


BEYOND002.jpg


こうして見てみると、割と普通のデザインかなあ・・・という気もします。


さらにアップで。


BEYOND001.jpg


でも、やっぱこれ着て外に出かけることはないかなあ~。
もったいない気もしますし。

ゾンビ 米国劇場公開版

2011年12月05日 06:20

ゾンビ 米国劇場公開版 ニューマスター&ワイドバージョン [DVD]ゾンビ 米国劇場公開版 ニューマスター&ワイドバージョン [DVD]
(2010/11/04)
デヴィッド・クロフォード、ゲイラン・ロス 他

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【原題名】 DAWN OF THE DEAD
【製作】リチャード・P・ルービンスタイン、クラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ
【監督】ジョージ・A・ロメロ
【脚本】ジョージ・A・ロメロ
【撮影】マイケル・ゴーニック
【音楽】ゴブリン、ダリオ・アルジェント
【特殊メイク】トム・サヴィーニ
【出演】デビッド・エンゲ、ケン・フォーリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス
1978年/アメリカ・イタリア映画/127分
【REVIEW】
ロメロ編集による米国劇場公開版。日本で85年に初めてソフト化されたバージョンでもある(このときはCICビクターより発売)。ゴブリンの音楽は大幅に削減され、替わりにクラシカルなBGMに差し替えられている。また、アルジェント版に無いシーンがかなり収録されている。巡視艇基地での警官隊とのやりとり、給油基地でプロペラに頭を切断されるゾンビ(勝手にやられちゃって、思わず上を見上げるロジャーの表情が可笑しい)、ショッピングモールの入り口にトラックを移動させる回数が2回(アルジェント版は1回目がカットされている)など。また、ロジャー死亡後のドラマもゆったり見られる。逆にアルジェント版にあった、プエルトリコ人アパートでの数シーン(サイレン、部屋を覗き込むSWAT隊員、マルチネスを説得するセリフをロジャーが先に言う場面など)などが、ロメロ版には無かったりもします。そして、エンドクレジットは店内をゾンビがうろつく風景をバックにのんびりした音楽。しかし、人間が1人もいなくなった店内を虚ろなゾンビだけが彷徨う風景は、逆に寒々として無常感が漂っています。

全体としてはドキュメンタリータッチの重厚な雰囲気。しかし、所々に出て来るコミカルな場面もあるため、それ程暗い印象は感じさせない。むしろ、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』や続編の『死霊のえじき』と比べると全然明るいです。『ナイト~』は郊外の一軒家、『死霊~』は地下基地の中と、かなり限定された中で話しが進んでいくので、閉塞感や息苦しさを感じたが、『ゾンビ』はTV局~アパート~ヘリで脱出~ショッピングモールとパートが分かれていて、まだ展開に起伏がある。また、大半はモール内でのエピソード主体だが、モール自体の空間が広いため、ここでもそれほど閉塞感は感じない。それに、ゾンビを追い出した後のモール内での生活は、以前の平和な頃と変わらない暮らしぶり、いや店内のありとあらゆるものが取り放題使い放題なのを考えれば、物質的な豊かさはある意味ユートピアのような感じさえ受ける。それだけに、前後の凄惨な世界とのギャップが大きいわけだが、ロメロが意図した消費社会への批判は十二分に伝わってきます。ゾンビが増え続け、次第に現代社会が崩壊しいく様を淡々と描写したロメロの演出力はさすが。ゴブリンサウンドが鳴り響くアクティブなアルジェント版に比べると地味な印象ですが、『ナイト~』と『死霊のえじき』の間の1本と考えると、米国版の方がしっくりきますね。

ゾンビ 米国劇場公開版01
タイトルは“DAWN OF THE DEAD”。劇中でも「ゾンビ」というセリフはほとんど無く、「やつら」とか「死者」と呼ばれている。

ゾンビ・サントラ

2011年12月04日 07:11

とりあえず、耳から『ゾンビ』の世界に浸ってみては?






〈関連記事〉
ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版


ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版

2011年12月01日 09:42

ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版 HDリマスター・バージョン [DVD]
(2010/11/04)
ゲイラン・ロス、デヴィッド・クロフォード 他

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【原題名】ZOMBIE DAWN OF THE DEAD
【製作】リチャード・P・ルービンスタイン、クラウディオ・アルジェント、アルフレッド・クオモ
【監督】ジョージ・A・ロメロ
【脚本】ジョージ・A・ロメロ
【撮影】マイケル・ゴーニック
【音楽】ゴブリン、ダリオ・アルジェント
【特殊メイク】トム・サヴィーニ
【出演】デビッド・エンゲ、ケン・フォーリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス
1978年/アメリカ・イタリア映画/119分
【STORY】
突如、死者が甦り、人間に襲いかかり始めた。原因は不明、分かっていることは、彼らが人間を襲うのは人肉を貪り喰うためであり、そして人間社会が崩壊の危機に瀕していることだった。

フィラデルフィアのTV局に勤めるフランは恋人のヘリパイロットのスティーブンと街から脱出することを決意する。途中、友人のSWAT隊員のロジャーとピーターと合流し、4人はヘリコプターで夜空へ飛び立っていく。しかし地上を歩くゾンビの群れは途切れることなく続き、燃料の補給に立ち寄った先でも、襲いかかってくる。悲壮感と披露感が漂う中、郊外のショッピングモールを見つけた彼らは、その屋上に降り立つ。そこには、安全に休息が取れる場所と食料があった。

その後、ショッピングモール内を自由に行き来するために、建物内のゾンビの一掃を計画し、入口をトラックで塞ごうとするが、その途中でロジャーはゾンビに襲われ片腕と片足を噛まれてしまう。苦難の末、出入り口を封鎖に成功し、ゾンビの居なくなったセンター内で自由な生活を謳歌する4人。しかし、ロジャーの容体は日増しに悪化し、息を引き取るが、ゾンビとなって甦る。ピーターは苦悶の表情で拳銃の引き金を引く。

3人になった彼らは静かな生活を送るが、閉塞感に包まれたショッピングモール内とは裏腹に、外の世界ではさらにゾンビの数が増していた。そんな中、武装した強奪団が現われ、モール内になだれ込んできた。ゾンビと強奪団が入り乱れる中、スティーブンは負傷し、ゾンビの群れに襲われる。ピーターはフランに1人でヘリで逃げるように告げるが―。

【REVIEW】
言わずと知れたゾンビ映画のマスターピース。その影響はホラー映画に“ゾンビ”というジャンルを確立させ、その後数多くの亜流作品を生み出させることになった。これだけ有名な作品なだけに、いろいろなところで語り尽くされた感がありますが、再確認も含めてちょっと振り返りたいと思います。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』発表後、ロメロは『マーティン』や『ザ・クレイジーズ』などの作品を手掛けていたものの、思ったほどの評価は得られず、興行成績も芳しくなかった。そして『ナイト~』から10年、満を持して公開された続編の『ゾンビ』は世界中で大ヒット、ロメロの名は一躍知れ渡ることになる。それまで、日本でもほぼ無名に等しかったが(実際、『ゾンビ』も当初、資金提供で協力したダリオ・アルジェントの名前の扱いの方が大きかったよう)、本作以後、未公開作品も次々にビデオリリースされ、『クリープショー』や『死霊のえじき』も劇場公開、熱烈なロメロファンが生まれる事になる。

『ナイト~』で確立させたモダンゾンビのスタイル(ゾンビに咬まれると感染する、ゾンビを倒すには頭部を破壊しなければいけない、など)は、トム・サヴィーニの特殊メイクを得てよりリアルに実現。掴み出される内臓や、ライフルで吹き飛ばされる頭部などがフルカラーでスクリーンに登場し、公開された年代を考えるとかなりセンセーショナルだったはず(その前に、『ナイト~』の換骨奪胎版『悪魔の墓場』がカラーで劇場公開されてはいましたが)。そして、適度にゆるいアクションとユーモアを加え、娯楽作品としても非常に見応えのある内容に仕上がっている。それは、衝撃を受けた初見のときも、DVDで見直す今現在も変わりません。それだけ、完成度が高いと言えると思います。

そんな『ゾンビ』ですが、多数のバージョンが存在するのも有名。英語圏での権利をロメロ側が、その他(ヨーロッパやアジアなどの非英語圏)の地域をアルジェント側が持つことになり、それぞれが編集したものが出回ったためだが、それぞれ時間や音楽に違いがあり、仕上がった印象はかなり別物になっています。基本的には、ロメロが編集した米国劇場公開版、ディレクターズ・カット版、そしてアルジェント監修版が有名。日本で1979年に初めて公開されたものは、このアルジェント版をベースに残酷シーンをカット、冒頭に惑星の爆発により地上に降り注いだ宇宙線により死者が甦ったという独自のフッテージを挿入したものになっている。さらに、日本でTV放映されたもので、音楽がサスペリアのものに差し替えられたバージョンもあったとか。

で、今回視聴したのはダリオ・アルジェント監修版。米国劇場公開版の127分、ディレクターズカット版の139分に比べると119分と短いが、残酷シーンを中心にテンポ良く編集されていて、なるほど仕上がりはサバイバル・アクションな趣き。全編に流れるゴブリンサウンドもご機嫌で、人気の高いバージョンなのも頷けます。ショックシーンやスプラッタ描写は残して、人間ドラマ部分はバッサリカット、息つく暇さえ与えないゾンビの襲来はまさにこの世の地獄を感じさせます。タイトルは“ZOMBIE DAWN OF THE DEAD"表記で、エンディング・クレジットは黒バックロールにBGMはゴブリンの「サラトザム」。ほのぼのした音楽が流れて終わるロメロ版エンディングと比べると、こちらの方がカッコ良さはダントツ。(ロメロ版のそれは、それで味があるんですが)なんにせよ、ロメロ版とアルジェント版は全く別物と考えた方がいいくらいです。

ホラー映画が好きな人で『ゾンビ』を見たことがない人は少ないと思いますが、もし未見の方はぜひぜひ一度見てください。また、ふだんあんましホラー映画は見ないんだよなあ~・・・という人も、騙されたと思って一度みてほしいです。ゾンビ映画、ホラー映画という枠を超えて、名作であるのに間違いはないです(好き嫌いの好みは人それぞれなんで、血の赤い色を見ただけで気絶しちゃうような方は見ないほうがいいかもしれませんが)。個人的には、オールタイム・オールジャンルでベストの1本です。
ゾンビ ダリオ・アルジェント監修版01

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 死霊創世記






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