映画秘宝2012年7月号

2012年05月22日 00:36

映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌]映画秘宝 2012年 07月号 [雑誌]
(2012/05/21)
不明

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“ウィンスロウ・リーチよ、永遠なれ!”

去る4月14日、俳優ウィリアム・フィンレイが永眠した。享年69。
『ファントム・オブ・パラダイス』『悪魔のシスター』『悪魔の沼』・・・・・
初期デ・パルマ作品の顔であり、つねにデ・パルマの分身である
非モテの犠牲者を演じつづけた異貌の俳優を偲ぶ。

〈映画秘宝2012年7月号:52P〉


柳下毅一郎氏が2005年に取材した一文が載っています。
その中で、最後の方に『悪魔の沼』についての記載が―

“「『悪魔の沼』ははは!
あのワニが動かなくて大変だったんだよー。
フーパーは頭のいい人だったけど、映画は大変だったねー」
とフィンレイは気持ちよく笑うのだった。”

ウィリアム・フィンレイといえば『ファントム・オブ・パラダイス』が代名詞であり、本文にもあるようにデ・パルマ作品の顔であったわけですが、『悪魔の沼』『ファンハウス/惨劇の館』『トビー・フーパーのナイトテラー』など、フーパー作品にもけっこう出演してたんですよね。そして、2006年の『ブラックダリア』が遺作となったのでしょうか。人間いつかは亡くなりますが、訃報を聞くと、やはり淋しいものがあります。ともかく、ご冥福をお祈りいたします。

追記して、ウィリアム・フィンレイ柄の悪魔の沼Tシャツを見つけたので、リンク貼っておきます。レアだなあ~。

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ルチオ・フルチの幻想殺人

2012年05月10日 00:16

ルチオ・フルチの幻想殺人 デジタル・リマスター版 [DVD]ルチオ・フルチの幻想殺人 デジタル・リマスター版 [DVD]
(2012/03/02)
フロリンダ・ボルカン、スタンリー・ベイカー 他

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【原題名】LIZARD IN A WOMAN'S SKIN
【製作】エドモンド・アマティ
【監督】ルチオ・フルチ
【脚本】ルチオ・フルチ、ロベルト・ジャンヴィッティ
【原案】ルチオ・フルチ、ロベルト・ジャンヴィッティ
【撮影】ルイジ・クヴェイレール
【音楽】エンリオ・モリコーネ
【特殊効果】カルロ・ランバルディ
【出演】フロリンダ・ボルカン、スタンリー・ベイカー、シルヴィア・モンティ、ジャン・ソレル、ペニー・ブラウン、レオ・ゲン
1971年/イタリア映画/103分


【STORY】
キャロルは毎晩悪夢にうなされていた。夢の中で彼女は、隣に住む自由奔放な美女ジュリアをベッドの上で刺し殺していた。それから数日後、現実にジュリアの刺殺体が発見され、現場にはキャロルの持ち物である毛皮のコートや凶器のペーパーナイフが残されていた。キャロルは容疑者として疑われるが、弁護士の父親は娘の無実を信じ、娘婿が犯人ではないかと疑い始める。キャロルは真相を解明しようと試みるが、謎の赤毛の男が彼女をつけ狙う。

【REVIEW】
今ではフルチといえば、イタリアンホラーの帝王、血まみれゾンビ映画の巨匠の確固たる地位築いているが、そのターニングポイントとなった『サンゲリア』の以前と以後では、まるで別人のような映画を撮っている。すなわち、その後のフルチ像を決定づけた『サンゲリア』では、病的なまでに徹底したゴア描写、ロメロのゾンビをものともしない腐りまくったゾンビの群れ、ストーリーやプロットよりも残酷場面を重視した映画作りで世界各地でヒットを飛ばした。それは、その後の『地獄の門』にも引き継がれ、『ビヨンド』で頂点に達している。

しかし、それ以前のフルチは、長い下積み時代に経験を積み、監督としてデビューしてからはコメディーやサスペンスに西部劇と、多様なジャンルを手掛け、いたって普通の映画を撮っていた監督だったようです。日本で公開されたのは『サンゲリア』以前では『真昼の用心棒』くらいで淋しいところですが、この『幻想殺人』もなかなかの出来栄えだと思います。ちなみに、ジャンル的にはイタリア映画の定番ジャーロです。

スローモーションやスプリット・スクリーンを多用したキャロルの見る悪夢映像は先鋭的で、かつエロティックな雰囲気が出ていてなかなかグッド。中盤の教会で暴漢にキャロルが襲われるシーンは見応えがあるし、ラストまで持たせるフルチの手堅い演出はもっと評価されてもいいんじゃないかと思います。生きたまま腹を裂かれた犬のシーンは、ちょっとビックリしましたが。

とにかく、今まで埋もれていた作品をちゃんと字幕付きで鑑賞できるようになったことは素晴らしいことです。フルチはゾンビだけではないのだ!次は、是非『マッキラー』のDVD化をお願いしたいですね。


幻想殺人01

幻想殺人02


アクエリアス

2012年05月05日 07:13

アクエリアス HDリマスター版 [DVD]アクエリアス HDリマスター版 [DVD]
(2012/02/02)
デヴィッド・ブランドン、バーバラ・クピスティ 他

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【原題名】STAGE FRIGHT/AQUARIUS
【製作】ジョー・ダマト
【監督】ミケーレ・ソアビ
【脚本】ルー・クーパー
【撮影】レナート・タフリ
【音楽】サイモン・ボスウェル
【出演】デビッド・ブランドン、バーバラ・クピスティ、ロバート・グリゴロフ、ジョン・モーゲン、メアリー・セラーズ
1986年/イタリア映画/90分


【STORY】
古い劇場で行われているミュージカルのリハーサル。女優のアリシアは、その練習中に足を痛めてしまう。ケガで降板するのを避けたい彼女は、スタッフのベティとともに、監督の目を盗んで病院へ向かう。とりあえず応急処置をしてもらい車で劇場へ戻るが、車中には不審な男が潜んでいた。この男は連続殺人を犯して病院に収容されていたウォレスで、看護師を殺して脱走してきたのだった。劇場へ忍び込んだウォレスは舞台衣装のフクロウの面を被り舞台へ躍り出る。手に持ったナイフで女優を血祭りに上げるフクロウ男。ステージ上で本物の殺人が行われたのを知り、出演者たちは逃げ出すが、出口が施錠されていて脱出できず、電話線も切断されていて外部と連絡が取れない。密室と化した劇場内で、ウォレスは獲物を狩り始める。

【REVIEW】
アルジェントの元で修行を積んでいたミケーレ・ソアビの本格的なデビュー作(ソアビはドキュメンタリーの『アルジェント・ザ・ナイトメア』なんかを演出したりはしていましたが)。殺人鬼が追いかけてくるシンプルなストーリーながら、アメリカ産の同ジャンル作品と決定的に違うのは、こだわった映像美。ウォレスと追いかけっこを繰り広げる高く組まれた舞台の骨組みや、長い無機質な感じのする廊下、そして激しく降りしきる雨の描写。極めつけは、死んだ劇団員たちを舞台に並べて、鳥の羽が舞い散る中、ウォレスがBGMをかけて佇むシーンはホラー映画に残る美しい場面だと言えます。

そんな映像美ばかりがクローズアップされがちな本作ですが、肝心の殺害シーンも意外と頑張っていて、ナイフでグサグサ刺しまくったり、ドア越しに電動ドリルで胴体を貫通、斧で頭をカチ割り、チェーンソーで胴体を真っ二つと、なかなかバラエティーに富んだ殺し方を披露してくれています。殺される人数が多いのもありますが、テンポよくショックシーンが出て来るので最後までノンストップで引っ張っていき、飽きさせないソアビの演出はなかなかのものです。そう言えば、この映画が公開された当時は「アルジェントの後継者現る!」みたいな声も聞かれましたし。

ヒロイン役のバーバラ・クピスティはその後『デモンズ3』『デモンズ4』にも出演する、ソアビ作品の常連さん。そして製作はなんと、あのジョー・ダマト。エロ・グロB級映画を連発した~『ビヨンド・ザ・ダークネス』とか『猟奇!喰人鬼の島』とか『ゾンビ‘99』とか・・・~イタリア映画界のとんでもない、ある意味大御所ですが、ソアビの初監督作品を世に送り出した本作ではいい仕事をしてくれたと思います。人を見る目はあったのね。

アクエリアス01




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