【原題名】PHENOMENA/CREEPERS
【製作総指揮】アンジェロ・ジャコノ
【製作】ダリオ・アルジェント
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ダリオ・アルジェント、フランコ・フェリーニ
【原案】ダリオ・アルジェント、フランコ・フェリーニ
【撮影】ロマノ・アルバーニ
【音楽】ゴブリン、ビル・ワイマン、アイアン・メイデン、モーターヘッド、サイモン・ボズウェル、アンディ・セックス・ギャング、クラウディォ・シモネッティ、ファビオ・ピニャテッリ
【特殊メイク】セルジオ・スティヴァレッティ
【視覚光学効果】ルイジ・コッツィ
【出演】ジェニファー・コネリー、ダリア・ニコロディ、ドナルド・プレザンス、ダリア・ディ・ラッツァーロ、パトリック・ボーショー、フィォーレ・アルジェント、フェデリカ・マストロヤンニ、マリオ・ドナトーネ、フィオレンツァ・テッサリ、ミケーレ・ソアビ
1985年/イタリア映画/115分(インターナショナル版111分)
【STORY】
スイスのチューリヒの寄宿学校に転入してきたジェニファーは、長旅による疲れからか治ったはずの夢遊病が再発してしまう。そして、学校を抜け出し、夜の街を彷徨っているうちに、彼女は偶然殺人事件の現場を目撃してしまう。実は、この地では、以前から少女ばかりを狙った連続殺人事件が起こっていて、犯人は未だに捕まっていなかった。ルームメイトのソフィも襲われ、学園で孤立してしまったジェニファーは、夢遊病を発症し彷徨っているときに知り合った昆虫学者のマクレガー教授を頼る。ジェニファーが虫たちと交信できることを知った教授は、彼女に犯人捜しを依頼するが、殺人鬼の魔手はすぐ近くにまで迫っていた。
【REVIEW】
先に個人的な思い入れから言わせていただきますと、アルジェントの作品の中ではNO.1の作品であり、私をホラー映画好きにさせた記念碑的な1本です。ちなみに、確か劇場公開時中坊であった私は友達と、この『フェノミナ』かラッセル・マルケイの『レイザーバック』のどちらを見に行くかを悩んで、結果『フェノミナ』に決めて観に行った記憶があります(この決断がなければ、ホラー好きにはなっていなかったかもしれません・・・)。初めて見たホラーは、小学生のとき深夜TVで観た『ゾンビ』で、初めて映画館で観たホラーは『死霊のはらわた』。で、とどめを刺されたのがこの『フェノミナ』というわけです。
では、なぜそこまで『フェノミナ』にはまってしまったのか?ほかにも素晴らしいホラー映画は数多くありますが、多分一番多感な時期に見た衝撃が大きかったんじゃないかと思います。映画が見たくて見たくてたまらなかったころ。とりわけ怖いもの、恐ろしい映画が見たかった、渇望していた時期に見たインパクトがこの映画を忘れられないものにしているんだと思います。アルジェントが仕掛ける残酷絵巻の数々、美少女ジェニファー・コネリーの神秘的な美しさ、そして耳について離れなかったサウンド。何もかもが初体験の衝撃だったから、今もその気持ちは持続しているんでしょうなあ。
正直、今見直してみると映画としての完成度はそれほど高くない。謎解きサスペンスものとしては話がかなり乱暴だし、展開も唐突で分かりにくい。-例えば、犯行の動機は何だったのか。母親が子供を助けるためにというのは分かるが、当の子供自身は何で殺すの!?冒頭の壁から鎖を引き抜くシーンはインパクト大きいけれども、あの子供にそこまで力あんの!?マクレガー教授の前で「絶対、犯人見つけますよ」と約束しておきながら、ジェニファーの後追い捜査くらいしかせず、あげく犯人に捕まってボコられ監禁さてちゃう役立たずのガイガー警部(役立たずならまだしも、ジェニファーを驚かして、問題の蛆虫プールに落としてしまう役どころにもなっていて、ダメダメ過ぎです)。ラストの首チョンパのためにだけ、突然現れる秘書も大概だけどね。
映画としての弱点は挙げていくとけっこうあるんですが、それらを補って余りあるのが主演のジェニファー・コネリーの魅力。撮影当時14歳くらいだったというから、ビックリしましたが~自分らとそれほど変わらない年頃なのに、こんなに綺麗な娘がいるの!?と思いましたが~、主演に起用したアルジェントの眼力はさすがです。彼女はこの後『ラビリンス』でデヴィッド・ボウイと共演したり、日本でも化粧品のCMに出たりとアイドル的な人気が一時期出て、自分も写真集を買ってしまったりして・・・。懐かしいなあ。
そんな彼女が、殺人鬼に襲われるわ、蛆虫のたかった腐乱死体の浮くプールに突き落とされるわと、過激な虐め具合のミスマッチが映像として映えるんですねえ。加えて虫と交信できるという神秘性。彼女がピンチになったときに助けに来てくれるハエの大群には背筋がゾゾーっとしますが、それを見て「アイ・ラブ・ユー」と呟くジェニファーの恍惚とした表情にはうっとりしてしまいます。
共演陣もけっこう充実していて、ジェニファーの唯一の理解者マクレガー教授役に名優ドナルド・プレザンス、狂気すら感じさせる演技が迫力のダリア・ニコロディ、冒頭滝で首を切られて殺される少女役にはアルジェントの長女フィオーレが。ガイガー警部の助手のチョイ役でミケーレ・ソアビも出演。教授を世話するチンパンジーが人間よりも活躍し過ぎるのが気になりますが、ラストシーンを撮った後、ジェニファーの手に噛みついたとか。チンパンジーってけっこう猛獣らしいんで、共演するのも大変だったかもしれませんねえ。


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