2014年09月23日 10:43
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『猿の惑星:新世紀』公開に合わせた巻頭特集が、“モンスター映画大図鑑”。猛獣、怪獣、巨大生物、虫に珍獣、宇宙生命体。果ては奇形人間まで、多種多様なモンスターが写真と解説付きで登場。大作で登場して一般に知られているものより、知名度の低いマニアックな奴らの方が多いのが嬉しいです。この手の特集になると、いまだにワクワクしてしまうのは、いい年をしてどうよ~!?という気もするが、好きなものは好きなんだからしょうがないじゃん!!と開き直ってみたりもします。
さて、本文中で気になったのは、ディック・スミス追悼の記事。「ああ~、ディックさんもついに亡くなったんだ」と思っていましたが(亡くなったのは7月31日で御年92歳)、記事を読んでみると、改めて彼の偉業、凄さを思い知らされました。CGの無い頃は人間を怪物に変身させたり、スプラッターな殺害シーンは特殊効果(ここでは主に特殊メイク)で行っていました。つまり、俳優さんの顔にゾンビやモンスターのマスクを被せたり、体に傷口のメイクを施したりと、手作業で変身させていたわけです。1970~80年代はこの特殊メイクが今までは表現しきれなかった場面をスクリーンに映すことに成功し、とりわけホラーやSF映画では映画の内容よりも、この派手なモンスターや殺害シーンを売りにした映画が数多く作られることになります。
当然、特殊メイクを担当する仕事も花形となり、『狼男アメリカン』『ビデオドローム』のリック・ベイカー、『遊星からの物体X』『ハウリング』のロブ・ボッティン、『ゾンビ』『13日の金曜日』のトム・サヴィーニなどなど、人々を驚かせる場面を作り上げる驚愕メイクアップ・アーティストたちが登場してきます。その中でも、パイオニアとも言えるのが御大ディック・スミスでした。
彼の手がけた作品で主なものだけでも紹介すると、『エクソシスト』『スキャナーズ』『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』、ホラー以外にも『ゴッド・ファーザー』『タクシー・ドライバー』そしてアカデミー賞を受賞した『アマデウス』。とりわけ、老人メイクの精巧さは他の追随を許さない、彼の独壇場だったように思えます。
今でこそ、CG技術が進歩して、それころ映画で表現できないものは無い!のかもしれませんが、そんなものが全くなかった頃、「どうやってこれ撮ってんの!?」というのを作り上げていたのが特殊メイクアップ・アーティストたちでした。『エクソシスト』では悪魔に憑りつかれたリーガンの首が360度回転し、『スキャナーズ』では超能力で人の頭部が爆発!こんな場面が実写で表現されるなんて、当時はほんとビックリしたものです。
そんな、彼の技術は誰もが認める凄いものでしたが、記事を読んでいて知ったのは彼の人柄の良さ。異国日本からの素人同然のような人からの質問にも真摯に答え、自分が開発した特殊効果の技術も惜しみも無く皆に公開し業界の進歩を促す寛大さ。とかく職人気質な人が多そうなイメージがある映画界ですが、彼は全く正反対の、誰からも慕われる偉大なパイオニアであったことが窺えました。彼の功績は、いつまでも消えることなく、映画の中で生き続けることでしょう。合掌。
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