2015年04月21日 22:31
![]() | 別冊映画秘宝戦慄のスラッシャー映画伝説!! (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝) (2015/04/08) 中原 昌也、高橋 ヨシキ 他 商品詳細を見る |
出版社:洋泉社
出版年月:2015年4月(5月8日発行)
ページ数:240頁
定価:1,600円(本体価格)
パート1 1年365日、毎日が殺人! スラッシャー・カレンダー
パート2 いつでもどこでも人殺し! 殺しには場所を選ばず
パート3 どいつもこいつも人殺し! 誰でも殺人鬼に変身!
パート4 国境を越えて殺人鬼は往く! 世界スラッシャー列伝
パート5 世の中、殺しの動機もいろいろ。殺人鬼アラ・カルト
パート6 その筋の巨匠たちが作ったスラッシャー映画たち
パート7 殺しの手口はいろいろ。殺人アラカルト
ホラー映画というジャンルの中でも「人が人を殺す」といういわゆる殺人鬼もののグループである“スラッシャー・ムービー”に絞ってまとめた1冊。このジャンルの人気に火をつけたのは78年のカーペンターの『ハロウィン』であり、80年に入ってシリーズ化された『13日の金曜日』であることは間違いない。ただ、傑作、ヒット作以外にも、ブームに便乗して濫造されたC級D級のあまり出来のよろしくない(むしろ駄作といった方がいい)作品も多々あったわけで、そんな作品も紹介されていて、ある意味ホラーというジャンルの最底辺を覗いているような感じがする世界だ。
歴史的に見れば、古くは『サイコ』やアルジェントやバーバの一連のジャーロ作品で殺人鬼映画は描かれていたが、スラッシャームービーが炸裂したのはなんといっても80年代!『13金』が確立したフォーマット(=キャンプ地+若者+バカ騒ぎ+SEX+異常な殺人鬼)を基本にして、実に多彩なスラッシャーものが製作されていった。この本にも各章ごとに分けて紹介されているように、曜日やイベント、季節で区切ったり(ハロウィン、クリスマス、バレンタイン、卒業式・・・)、場所を変え(学校、避暑地、職場、病院、農場・・・)、殺しの道具を変え(ナイフ、鉈、チェーンソー、ドリル、銛、素手・・・)、実に様々なバリエーションのスラッシャームービーが作られている。それは裏を返せば、基本殺人を見せる映画なので、いかに他との差別化を図らなければ二番煎じになってしまうため、それぞれ知恵を絞って設定に工夫を凝らして作られていたわけだが、それでも出来のよろしくないものが多かったりする。その原因は、登場人物の書き込みが薄っぺらだったり、ドラマ部分がまるで駄目で、結局いかにして殺しの場面を魅せるかに重点を置いたため、よほど頑張って作っていないと似たり寄ったりになってしまうからじゃないだろうか。特に、80年代は特殊メイクの人気の高まりで、殺しのバリエーションや派手さに注目が集まっていたため、それはある意味仕方がなかったかもしれません。
それでも、この時期にできた良作としては『バーニング』や『ローズマリー』、『血のバレンタイン』に『マニアック』などがあり、これぞスラッシャーの王道といった雰囲気が味わえる映画です。もちろん、一般映画の物差しで測れば、平均点以下の内容かもしれませんが、80年代特有の何かしら熱く煮えたぎるものが感じられるはずです。それは、この本の紹介ページでも、熱く語られているので、読んでいるだけでも楽しめるはずです(読後に映像で見直せば、なおよろしいかも)。
また、文中でも断りがありますが、あえて王道の作品を外し、マイナー作品も加えることによって“雑多なバラエティー感”を狙ったところもあるので、研究本というよりは、気軽な読み物として楽しんで見るのがこの手の本には合っているのだろう。
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