カリフォルニア・ゾンビ逃避行

2015年06月12日 22:17

カリフォルニアゾンビ逃避行03

【原題名】APRIL APOCALYPSE
【製作】ジャレット・ターノル、ブレント・ターノル
【監督】ジャレット・ターノル
【脚本】ブレント・ターノル
【撮影】カイル・ハートマン
【音楽】マイケル・ビアデン
【出演】リース・トンプソン、レベッカ・ブランデス、ステファニー・ハント
2013年/アメリカ映画/84分


【STORY】
平凡な青年アーティーは思いを寄せていた幼馴染が引っ越してしまい、それ以来家に引きこもり、ラジオのDJを一人孤独に行う日々を送っていた。そんな生活から抜け出すため、アーティーは旅に出ることを決意、幼馴染の彼女の家を訪ねようとするが、途中でゾンビの大発生に遭遇、命の危険に晒されながらも目的地を目指していくのだが・・・。


【REVIEW】
ゾンビ+青春ドラマをロードムービー風に撮った1本。前半は、彼女に思いを寄せながらも冴えない高校生活を送る日常が綴られ、途中のゾンビハザードを挟んでからは、対ゾンビのサバイバルアクション(割と緩め)が展開する。しかし、あくまで主役は普通の青年アーティーで、シリアス路線ではなく、ほのぼのとした日常の延長のような感じ。使う武器も弓矢にゴルフクラブと、身近にあるものを取りあえず集めて使ってますな感じで、逆にそれがリアリティ感もあったりします。

旅の途中で知り合った生存者や親友、ゾンビハンターたちとも一緒に行動するもののアーティー以外は皆死んでいき彼一人が生き残っていくが、ここでも悲壮感とか孤独な雰囲気はなく、ただひたすら彼女を探していく旅映画チックなままなのである。これは、ゾンビ発生により社会が崩壊して元には戻れない終末感のようなものを一切排除し、主人公にだけピントを合わせて狭い範囲でしか見せていないからだろう。うまくいかなかった学生生活やその後の引きこもり生活と比べれば、生きるか死ぬか分からないが、ゾンビを倒し道を切り開いていく方が生き生きとして見えて、彼にはゾンビのいる世界の方が“生きている”のを実感できていたようにも見える。

個人的に、どうかと思ったのはバッドな感じのエンディング。ここまで引っ張っておいて、あっさり死んでしまうあたり、どうかな!?と。また、出てくる登場人物が皆普通っぽく過ぎて、キャラがあまり立ってい居ないのも感情移入しにくいところかもしれない。しかし、ゾンビに襲われたり、人間に食らいつくお食事シーンもちゃんとあって、ゴア度も及第点。襲ってくるゾンビの造形も定番のスタイルで(分類するなら、走るタイプのゾンビでしょうか)、ゾンビ映画としてはそこそこの出来でしょう。

カリフォルニアゾンビ逃避行02

カリフォルニアゾンビ逃避行01



アダム・チャップリン 最・強・復・讐・者

2015年06月12日 02:40

アダム・チャップリン01

【原題名】ADAM CHAPLIN
【製作総指揮】ジュリオ・デ・サンティ
【監督】エマヌエーレ・デ・サンティ
【脚本】エマヌエーレ・デ・サンティ
【出演】エマヌエーレ・デ・サンティ、ヴァレリア・サンニーノ、アレッサンドロ・グラマンティ、パオロ・ルチャーニ、クリスティアン・リーヴァ
2010年/イタリア映画/84分


【STORY】
愛する妻を無残にも焼き殺されたアダムは復讐を誓う。彼は悪魔と契約を結び、超人的な力を身に付け妻を殺した街を牛耳る組織に戦いを挑む。


【REVIEW】
一言で説明するなら“「北斗の拳」を実写化したらえらいもんが出来てしまいました!!”という感じの映画。設定や作りこみに素人さ粗さは目立つが、作り手が「俺はこんなのが作りたかったんだー!」という意気込みは十分伝わってくる。監督のエマヌエーレ・デ・サンティは主演もこなし、鍛えたムキムキの体を披露。きめのポーズも漫画チックなら、カメラアングルも映画というよりもアニメのそれに近い。ハリウッドが実写化するコミック原作の映画よりも、より原作に近いモノを実現しているのは分かります。

そして、この作品で特筆されるのが超絶ゴア描写!「北斗の拳」の人体破壊シーンを実写化すれば、凄いものになるのは容易にわかりますが、実際にそれが画面に映し出されると、やっぱり凄いの一言。主人公に殴られたやつらは一瞬で弾け飛んで肉塊と化し、飛び散る血しぶきも並大抵の量ではない。阿鼻叫喚の人体破壊の地獄絵図が延々と続くのだが、救いなのは特殊効果がチープで作り物と判別できるところ。なので、バラバラ死体が大量に出てきてもリアリティが少ない分、耐えれないことはないと思います(ある程度、ホラーに耐性のある方なら―)。

物語はチープだし、安っぽさも拭えないが、こういった映画は勢いで見るのが正解。見終わっても何も残らないかもしれませんが、一見の価値はある作品です。


アダム・チャップリン02



アンダー・ザ・スキン 種の捕食

2015年06月06日 01:36

アンダー・ザ・スキン01

【原題名】UNDER THE SKIN
【製作】ジェームズ・ウィルソン、ニック・ウェクスラー
【監督】ジョナサン・グレイザー
【脚本】ウォルター・キャンベル、ジョナサン・グレイザー
【撮影】ダニエル・ランディン
【音楽】ポール・ワッツ
【出演】スカーレット・ヨハンソン、ポール・ブラニガン
2013年/イギリス・アメリカ・スイス映画/108分


【STORY】
バンを運転しながら街で男性を物色する一人の美女。彼女に声を掛けられ、誘いに乗った男たちは闇に消え帰ってこなかった。次々と男性を捕食しながら旅を続ける彼女だが、次第に不思議な感情が芽生えてくるのを感じ始める。


【REVIEW】
余計な説明を省き、感覚的な映像とシュールな音楽で構成したSFスリラー。謎の宇宙生命体が人間の男性を取り込んでいく様を描いているが、今までにない表現方法なので、見ていて斬新かつ不思議な感覚に囚われていく。ただ、エンタテイメント性は薄いので、一種のアートか詩を読んでいるかのような感じである。

あらすじを読んでみると、最初は『スピーシーズ 種の起源』を想像したが、やっている内容は似ているものの、見せ方は180度真逆で全く別物のようにも思えてくる。共通項は、美女に扮したエイリアンが人間の男性を捕食していくという行動だけで、この『アンダー・ザ・スキン』は、セリフも少なく派手なアクションも無く非常に淡々と物語が進んでいくので、ロードムービーのような感じもあります。とにかく、不思議な感じの一言(昔、見たイザベル・アジャーニの『ポゼッション』も似たような感じでしたが)。

本作のもう一つの魅力は、主演が今を時めくスカーレット・ヨハンソンであること。全裸も辞さずに体当たりで挑んだ本作の役柄は、勿論人型エイリアンを演じているのだが、ほとんど喋らず雰囲気と表情だけで、見た目は人間ながら、人ではない異質の生命体を感じさせるいい演技を見せてくれています。最後は、文字通り“アンダー・ザ・スキン”の意味を見せてくれますが、個人的にはエイリアンの凶暴な暴れっぷりとか、血しぶきがブシャーッと出るような派手なシーンがあったら良かったのに・・・、と思いましたが、それはやっぱり派手な娯楽作品の見過ぎだからでしょうか!?

アンダー・ザ・スキン02


アンダー・ザ・スキン03



サベージ・キラー

2015年06月04日 21:25

サベージ・キラー02

【原題名】SAVAGED
【製作】アンドリュー・トーマス・ハント
【監督】マイケル・S・オヘダ
【脚本】マイケル・S・オヘダ
【撮影】マイケル・S・オヘダ
【出演】アマンダ・エイドリアン ロドニー・ローランド ロニー・ジーン・ブレヴィンズ リック・モラ
2013年/アメリカ映画/95分


【STORY】
父親の形見の車を譲り受けた聾唖の女性ゾーイは、結婚を誓い合った彼の家を訪ねるため車を走らせる。道中、ドライブを楽しんでいたが、突然血だらけの少年が飛び出してきて、ゾーイは助けようとする。しかし、少年を追ってきたギャング連中が現れ、少年は殺されゾーイは拉致される。男たちは代わる代わるゾーイをレイプした後、口封じのため荒野に生き埋めにする。翌朝、偶然通りかかったネイティブ・インディアンの老人に発見され救い出されるが、すでに瀕死の状態。呪術を生業としていた老人は、ゾーイの魂を戻そうと試みるが、一緒に別の魂も復活し彼女の体に取り込んでしまう。その魂は、かつてこの地で白人の裏切りに遭い、虐殺されたインディアンの酋長マンガスだった。ゾーイは生き返り、インディアンを虐殺した白人たちへの復讐に燃えるマンガスの魂も重なり、自分を凌辱した男たちを一人ずつ抹殺していく。


【REVIEW】
日本で劇場公開もされた作品だが、見る前と見た後ではかなり印象が変わった1本。これは多分に、作品の宣伝効果によるもの。劇場映画用のオフィシャルサイトやDVDのジャケットでは、『アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ』のようなレイプ・リベンジ・ムービーをイメージしていたのだが、後半はかなり趣が変わったいき、バイオレンス+ホラー+オカルト+アクション・・・のような、様々なテイストが入り乱れた、バラエティに富んだ内容になっている。

主人公のゾーイは暴漢どもに襲われ、その後生き埋めにされるが、インディアンの呪術師に発見され掘り出される。哀れに思った呪術師は何とか彼女を助けようとするが、儀式がうまくいかずゾーイは一度死んでしまい、その後酋長インディアンの魂も一緒になって蘇ってしまう。彼女を暴行した男たちは、昔インディアンたちを虐殺した者たちの子孫で、ゾーイと酋長の復讐相手が一致、弓矢や手斧などの武器を駆使して、男どもを血祭りに上げていくわけです。ちなみに、宣伝では、このインディアンの絡みが紹介されていないので、一般女性が復讐するお話かと思うと、意表を突かれた感じになると思います。

ゾーイは一度死んで蘇っているので、いわゆるゾンビ状態。なので、銃で撃たれようが、チェーンソーで腹を掻っ捌かれようが意に介さず、たった一人で立ち向かっていき、その凛とした姿が最後まで美しい。魂は宿っていても、体は腐っていく一方なので、見た目はボロボロになっていくのに(傷口に蛆虫がたかっていたり、肉が削げ落ちていったりもします)、それでもめげずに戦う姿がカッコいいのです。まあ、この辺、戦うヒロイン像が個人的に好みというのもありますが。

復讐を果たした彼女はどうなるのか!?なかなか先の読めない展開でしたが、安易なハッピーエンドにならず、少し哀愁を漂わせて切なく終わらせたこのエンディングも良いです。「泣けます!」とか「涙が止まりません!」とか、やたら泣かせようと宣伝する映画は少なくありませんが、アクションやらホラーやらバイオレンスやらいろいろな要素がぎっしり詰まっていて、なお最後にホロッと切なくて自然に泣けてくる・・・、この『サベージ・キラー』はそんな映画です。撮影のために9か月も格闘訓練を受けて臨んだというヒロインのアマンダ・エイドリアンも素晴らしいが、6年もの歳月を費やして完成までこぎ着けた監督マイケル・S・オヘダの執念(そして映画への愛情)もビシビシ感じる、今年のベスト10に是非入れたい作品です。

サベージ・キラー01

サベージ・キラー03jpg






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