悪夢の惨劇

2016年04月07日 21:43

悪夢の惨劇01

【原題名】BAD DREAMS
【製作】ゲイル・アン・ハード
【監督】アンドリュー・フレミング
【脚本】アンドリュー・フレミング、スティーヴン・E・デ・スーザ
【撮影】アレクサンダー・グラジンスキー
【音楽】ジェイ・ファーガソン
【出演】ジェニファー・ルービン 、ハリス・ユーリン、ブルース・アボット、リチャード・リンチ、ディーン・キャメロン
1987年/アメリカ映画/85分


【STORY】
郊外の一軒家、カルト教団を取り仕切る教祖ハリスが信者たちに説法しながらガソリンを浴びせていく。死への旅を決行すべく火をつけると建物中に火は広がり、ハリスをはじめ信者たちは次々に火に包まれていく。全員死亡したかに思われたが、奇跡的にシンシアという少女が助け出され病院に搬送されるが、彼女は深いこん睡状態に陥り、次に目覚めたのは13年後だった。精神病院でグループ治療を受けることになり、少しずつ過去の事件のことを思い出していくシンシアだが、教祖の幻覚を見るようになり、治療を受けているメンバーが謎の自殺を遂げていく。自分が死ななければ、他の者をあの世に連れて行く―教祖の言葉は、シンシアを死に誘うのか。

【REVIEW】
集団自殺したカルト教団の中で唯一生き残った女性の周りで起こる謎の自殺事件。それは、かつて自分を導いてくれた教祖が引き起こしているのか―!?病院内で教祖の姿を見た後、次々に人が死んでいく。自殺の因果関係は?誰か犯人が居るのか?謎をはらんだまま、ストーリーは進み、最後のオチはなかなか見事!この手の映画って、被害者だったと思っていたら、実は加害者だったというパターンが見受けられるけど、その予想を覆し、この『悪夢の惨劇』は希望の持てるスッキリしたラストではないかと思います。

前触れもなく、いきなり自殺していく患者たちの行動はけっこうショッキングで、プールで溺死、高層階から飛び降り、劇薬を飲み干したりといろいろあるものの、NO.1はカップルで巨大な換気扇に飛び込む2人。直接的な描写はないものの、千切れた手首が転がってきたり、天井の換気口から大量の血が噴き出てきたりと、おそらく人間ミンチになったであろう予想できてなんとも嫌な死に方。代わりにズバリ見せてくれるのは、シンシアが見る教祖ハリスの幻覚で、焼身自殺しただけあって、焼けただれたケロイド状の姿で度々登場、このメイクがなかなか凄惨で、見どころの一つと言えます。

主人公のシンシアを演じたのは同時期公開され『エルム街の悪夢3/惨劇の館』にも出演していたジェニファー・ルービン。彼女を助けようと奮闘する医師カーメン役は『死霊のしたたり』でも医者役だったブルース・アボット。他の面々もなかなか渋い演技で、サスペンスな雰囲気を盛り上げるのに役立っています。全体的には、地味な感じの映画だけど、見て損のない映画。シンシアのBAD DREAMSを一緒に味わってみてください。


悪夢の惨劇02



テナント/恐怖を借りた男

2016年04月06日 02:09

テナント01

【原題名】THE TENANT
【製作】アンドリュー・ブラウンズバーグ
【監督】ロマン・ポランスキー
【脚本】ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ
【撮影】スヴェン・ニクヴィスト
【音楽】フィリップ・サルド
【出演】ロマン・ポランスキー、イザベル・アジャーニ、メルヴィン・ダグラス、シェリー・ウィンタース
1976年/アメリカ・フランス映画/126分


【STORY】
古いアパートの一室を借りて住むことになったトレルコフスキー。彼の部屋の前の住人は、窓から飛び降り自殺を図っていた。自分の空間を手に入れた記念に、早速友人たちを招いてパーティーを開くが、物音がうるさいと他の住人から苦情が入り、中止になる。階下の家主はことあるごとにトレルコフスキーに注文を付け、管理人の中年女性は無愛想だ。近所の喫茶店では、前の住人の話になり、そのメニューを勧めてくる。そして、アパートの窓から見える共同トイレで微動だにしない男性の姿。このアパートは、何かがおかしい―。そして、トレルコフスキーの精神も徐々に崩れ始めていく。

【REVIEW】
監督・脚本・そして主演も兼ねたロマン・ポランスキー自作自演の異常心理サスペンス。直接的な暴力などは受けなくても、周りの環境や人間関係によって、追い詰められ崩壊していく様が描かれていて、派手さはないが、淡々とした狂気が映画全体を支配している。馴染めなかったり、他の住人と揉めたりしたら、アパートなんだから引越せばいいのでは!?と思ってしまうが、支払ったお金と手間のことを考えれば、そう簡単には決断できず、苦悩せざるを得なくなっていく状況は、同じような経験をしたことがある人なら共感できるはず。かくいう自分も、仕事で実家を出て初めて住んだアパートの階下の住人が(自分は2階)、驚くほど神経質で、少し物音を立てると天井を棒か何かで突いてきて、びくびくしながら過ごした記憶があります。当時は、会社の借り上げ住宅で転居もできず、我慢するしかなかったのですが、音を立てずに生活するのがこんなに窮屈でストレスなのか苦労したものでした(結局、転勤でまた引っ越しできたわけなんですが)。

話がそれましたが、主人公のトレルコフスキーもどちらかと言えば繊細な感じで、内向的なタイプ。友人の男性は、アパート住みでも大音量で音楽を鳴らして、隣から注意されても意に介さず、逆に文句を言い返すくらいだが、トレルコフスキーにはそれができない。しだいに、周りの人間が自分を追い詰め、自殺した前の住人の女性と同じ状況にしようとしているのではないかと考えていく。実際、アパートの住人も、喫茶店の店員も、職場の同僚も、どこかみなよそよそしくて冷たくて、なにかがおかしく感じられる。それはトレルコフスキーの被害妄想がそう感じさせるのかもしれないが、本人がそう感じてしまっているのだから、それはたぶん真実なんだろう。人間って、ちょっとしたことで、正気にも狂気にもなれてしまう。怖いお話だ。

出てくる人間、みなどこか暗い影があって不気味なんですが、自殺女性の友人ステラ役で若き日のイザベル・アジャーニが出ていて、そこは拾い物。しかし、なんといっても、この映画はポランスキーの独壇場なわけで、女装して、2度も飛び降り自殺してしまう狂気の演技の前では、皆霞んでしまいそうな・・・そんな映画です。

テナント02



リメイク版『ポルターガイスト』が発売

2016年04月02日 22:34

今月発売の映画秘宝読んでいて知ったが、『ポルターガイスト』が4月にリリースされるものの、日本では劇場公開はされずビデオスルー扱いだったんですね。1982年のオリジナル版は製作:スピルバーグ、監督:トビー・フーパーという今では考えられないタッグで作り上げたファンタジーチックなホラームービー。家に憑りついた霊魂に連れ去られた娘を助け出すために家族が奮闘する様を、SFX満載で味付けした内容で、当時はTV放映もさかんにあって、家族でも楽しめたものだった。それを、あのサム・ライミがリメイクし30年ぶりに復活を果たしたものの、映画館では全く見ることさえできずにソフト化されてしまうなんて、なんて不遇な扱いなんだろうって思ってしまう。内容的にはそんなにドギツイものではないし、ホラー的な匂いをあんまし出さなければ公開できたんじゃないかと思ってしまうが、日本てどんだけこの手の映画に冷たいんだろうとも思ってしまう。

内容紹介を読む限りは、尺がオリジナルよりも短くなってまるでダイジェスト版のような印象になっているとか、シリアスな雰囲気を重視したためか、オリジナルにあったエンタテイメントな感じは薄れてしまったとか、いろいろと違いはあるものの、82年版が好きだった世代にとっては興味があるわけで、ソフトが出たら、やっぱり一度見てみたいと思います。

あと、そろそろ発売されるもので気になるのは、懐かしいS・キング原作の『炎の少女チャーリー』や、シリアス恋愛路線でせまるシリーズ異色の1本『バタリアン・リターンズ』、これもキング原作のゾンビじゃないロメロ監督の『ダーク・ハーフ』、そして懐かしきエンパイアピクチャーズ製作で異常性格俳優K・キンスキーの魅力爆発の『クロール・スペース』あたりでしょうか。『クロール・スペース』はまさかのDVDとブルーレイの両方で発売と、ホントに売れるのか逆に大丈夫なのかと心配してしまうくらいだけれども、かなりマイナーな作品も掘り出してくれるのはありがたいお話だと素直に喜ぶべきかな。





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