
【原題名】SUSPIRIA
【製作】クラウディオ・アルジェント
【製作総指揮】サルヴァトーレ・アルジェント
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ
【撮影】ルチアーノ・トヴォリ
【音楽】ゴブリン
【出演】ジェシカ・ハーパー、ステファニア・カッシーニ、ジョーン・ベネット、アリダ・ヴァリ、ウド・キア、ミゲル・ボゼ、フラヴィオ・ブッチ
1977年/イタリア映画/99分
【STORY】
嵐の夜、アメリカからドイツの空港にスージー・バニオンが降り立った。彼女は高度なバレエの技術を習得するため、ドイツの名門バレエ学校に留学してきたのだったが、不気味な出来事が次々と起こり始める。スージーが到着した当日、学院を飛び出した女学生のパットが何者かに惨殺され、盲目のピアニスト・ダニエルが飼っていた盲導犬に喉を喰いちぎられて絶命する。スージーはサラと友人になるが、サラはパットが殺される前に、学校の秘密を知り怯えていたことを打ち明ける。ある晩、部屋を抜け出したサラは、何者かに追われて屋根裏部屋に逃げ込むが、無数の針金が埋め尽くした部屋で身動きが取れなくなり、その後首をナイフで切られて絶命する。サラの姿が見えなくなったことを不審に思ったスージーは嵐の夜、学校内を調べるために部屋を出て、秘密の部屋に辿りつく。その奥で見たものは、不気味な魔術を使ったの儀式と、醜悪な魔女だった。スージーは手にした針を魔女の首に突き立てる。
【REVIEW】
“決して ひとりでは見ないでください”のキャッチフレーズとともに日本でもヒットし、アルジェント監督の名を一気にメジャーに押し上げたホラー映画の名作中の名作。前作の『サスぺリアPART2』がジャッロだったのに対して、本作は魔女を題材にしたオカルトテイストなホラー映画。アルジェント自身がインタビューでも答えているように、ディズニーの「白雪姫」からインスピレーションを得て作り上げた世界は、どこか浮世離れしていて、ダーク・ファンタジーのような趣も感じさせるもので、過剰なまでの原色を使った映像表現と繰り返し流れるゴブリンの悪魔的サウンドがより一層恐怖を引き立て、別世界に誘ってくれる。
ストーリー的には、バレエ学校に魔女の一味が巣食い、邪魔な人間を魔術で抹殺しており、それに気づいた主人公たちが秘密を暴いて魔女にとどめを刺す・・・ような流れだが、謎解きに重きは置かれておらず(魔女に関心があり、調べを進めるのは友人のサラで、スージーは巻き込まれていった感が強い)、肝心の殺害場面も誰が行ったのか分かりづらく(だから犯人探しは無用なんでしょう)、どちらかといえば、目の前で起こる超自然的な不可解な現象をそのまま目の当たりにしていく映画なんだという印象。そう考えれば、論理的でないとか、辻褄が合いにくいといった批判は意味を持たず、逆に意味が理解できないことが恐怖感にも繋がってくる。だから『サスぺリア』を見て、よく分からないという感想を言う人は、映画自体の捉え方がそもそも間違っているからだと思う。
自分が初めて『サスぺリア』を観たのは、もう何十年前だったか覚えていなのだが、少なくとも10代であったのは間違いない。なんだかよく分からないが、現実世界とは到底思えない赤とか緑とかが支配する色使いの画面の中で、理由もよく分からないまま登場人物が殺されていき、全編ゴブリンの不気味な音楽が流れて行く中、唐突にラストを迎えて行く。「魔女たちは学校で何を行っていたのか!?」「魔女があんなにあっけなく死ぬのか!?」「最後のスージーの笑みは何を意味するのか?」明確な説明はなされぬまま、映画はエンドロールを迎える。映画が終わった後も、疑問は消えないが、強烈な体験は目と耳に焼き付いて離れず、そのとき“スゴイものを観た・・・!”という感覚は何十年たった今でも変わることなく残っている。もう理由なんかはどうでもいいのだ。とにかくスゴかったのだ。
ホラー映画ファンなら、本作が魔女三部作のうちの1本で、残りが『
インフェルノ』『サスぺリア・テルザ 最後の魔女』であることや、前作の『サスぺリアPART2』が本作とは全然関係がなく日本公開時に勝手に配給会社が命名したことも知っておられるだろうし、スージーが空港から乗るタクシーの運転手の首元に人の顔が写っていて、公開当時は心霊現象だと噂になったことも知っておられるでしょう(これはもちろん意図的なもの)。ただ、そんなウンチクを知らなくても、予備知識がなくても、未見の人は騙されたと思って一度本作を見てほしいと思います。感動して涙が出たとか、ためになる映画を見た、とかそういう感想は出ないと思いますが、“よく分かんないけど、スゴかった”と思えれば、それで十分、それを体験するのも映画の醍醐味じゃあないでしょうか。
最後に、本作は『サスぺリア パーフェクト・コレクション』としてブルーレイ版が最近発売されましたが、これが非常に素晴らしい内容。新規にHDリマスターされが画質と6.1chの音声は今まで見てきた『サスぺリア』の中では最高の品質で、とても40年前の映画とは思えない出来栄え。加えて、本邦初収録の月曜ロードショー版吹き替えや、アルジェントのインタビュー特典映像なども多数収録した2枚組で、間違いなく買って損のない内容。ユーザー目線で再発するなら、やっぱりこれくらい気合を入れて出してくれないとダメでしょうし、逆にここまでやってくれれば、VHSやLDやDVDを持っていても、喜んで新たに買い足しますと思えるもの。お次は『インフェルノ』もこのレベルで出してほしいですねー。

最新コメント