エルム街の悪夢3 惨劇の館

2016年09月29日 10:30

エルム街の悪夢3001

【原題名】A NIGHTMARE ON ELM STREET 3: DREAM WARRIORS
【製作】ロバート・シェイ
【監督】チャック・ラッセル
【脚本】ウェス・クレイヴン、ブルース・ワグナー、チャック・ラッセル、フランク・ダラボン
【撮影】ロイ・H・ワグナー
【音楽】アンジェロ・バダラメンティ
【出演】ヘザー・ランゲンカンプ、パトリシア・アークエット、ラリー・フィッシュバーン、プリシラ・ポインター、クレイグ・ワッソン、ロバート・イングランド、ジョン・サクソン、ジェニファー・ルービン
1987年/アメリカ映画/97分


【STORY】
悪夢に悩まされ続けていた女子高生のクリスティンは治療のため精神病院へ収容されるが、そこでは彼女と同じように悪夢を見るティーンエイジャーたちが入院していた。医者たちは彼らの言い分をロクに信じようとはせず、一般の治療を試みるが改善する兆しは全くなかった。そこへ、かつてフレディと戦ったエルム街出身のナンシーが研究者として病院へやってくる。ナンシーは患者である若者たちと接触し、彼らが昔の自分と同じようにフレディの悪夢に苦しめられていると確信する。クリスティンが夢の中へ仲間を連れ込める能力があることを知ったナンシーは、仲間たちと夢の中でフレディと対決することを試みる。


【REVIEW】
イマイチの評価だったPART2を経て、ウェス・クレイヴンが脚本に参加、初代ヒロイン・ナンシー役のヘザー・ランゲンカンプも復帰したエルム街3作目。パトリシア・アークエット演じるクリスティンとWヒロインな設定で、原題の『~DREAM WARRIORS』にもあるように、明確に主人公たちとフレディと対決するのが本筋になっていて、この路線はシリーズ後半の定番となっていきます。対するフレディも、TVと合体したり、巨大なヘビ状になって襲って来たり、カギ爪の代わりに両手が注射針になってドラッグを注入したりと、夢の中ではやりたい放題、実にバリエーション豊かな襲い方を披露してくれます。また、コミカルな一面も見せ始め、被害者を怖がらせ、いたぶってからとどめを刺してゆくというスタイルも、本作から始まった感があります。いわば、シリーズの方向性を決定づけた1作、逆に本作の成功がなかったら、シリーズも終わっていたかもしれません。製作陣も、既出のクレイヴン意外にも、監督のチャック・ラッセル、脚本のフランク・ダラボンら、多方面でも活躍する人材が結集していて、やっぱり、才能ある人らが集まれば結果が出るのかな~と思ったりもしました。

エルム街の悪夢3002

エルム街の悪夢3003



エルム街の悪夢2 フレディの復讐

2016年09月28日 22:58

エルム街の悪夢2

【原題名】A NIGHTMARE ON ELM STREET PART 2: FREDDY'S REVENGE
【製作】ロバート・シェイ
【監督】ジャック・ショルダー
【脚本】デヴィッド・チャスキン
【撮影】ジャック・ヘイトキン、クリストファー・タフティ
【音楽】クリストファー・ヤング
【出演】マーク・パットン、キム・マイヤーズ、クルー・ギャラガー、ロバート・イングランド
1985年/アメリカ映画/86分


【STORY】
エルム街に引っ越してきてから悪夢に悩むジェシー。夢中に現れる男はジェシーの体を乗っ取って、殺人を犯させようとする。やがて友人や教師が殺され、ジェシーは自分が犯人ではないかと疑う。ある日、ジェシーとガールフレンドのリサはクローゼットから前の住人の残した日記を発見する。そこには、エルム街で起こった連続殺人の犯人フレディとの因縁が綴られていた。


【REVIEW】
ホラー映画の歴史にその名を残すことになったキャラクター“フレディ”を生み出した人気シリーズ『エルム街の悪夢』の第2作目。前作は女子高生のナンシーが主人公で、フレディと戦ったが、続編では、男子高校生のジェシーを通してフレディが殺人を実行しようとするストーリーが展開する。

シリーズ後半になっていくにつれ、バトル要素とコミカルなフレディのキャラがクローズアップされていく本シリーズだが、この2作目では、まだシリアス路線で、フレディも残忍かつ怖い存在として描かれている。そして、シリーズの他と大きく違う点は、主人公に男子を持ってきた点で、ここが作品の印象をかなり違うものに変える要因になっている。一応、ヒロインのリサの出番もあるのだが、ジェシーをしごく男性教師や、殺される友人、そしてジェシーの父親と、男性密度が高くて、ホラー映画っぽくない。ホラーというより、悩める青春映画のような感じ。特に、悪夢に悩んで、友人ん家に「僕を助けてくれ・・・!」と言って泊めてもらうくだりは、ちょっと男同士の友情を超えた匂いがしてきそうな展開で、異色な雰囲気でした。

ともかく、フレディの存在もまだ弱く、1作目の焼き直しのような感じで、イマイチ盛り上がらない本作。シリーズ中で一番印象に残らない凡作になってしまった残念な作品です。(個人的に印象に残っているのは、スクールバスを楽しそうに暴走運転しているフレディの姿くらいかな・・・)





悪趣味ビデオ聖書

2016年09月27日 13:10

悪趣味ビデオ聖書他

出版社:洋泉社
ページ数:510頁
発行日:2016年9月17日
編集者:山崎圭司
定価:2,800円(本体)


“地獄の底から甦る下品の化身・毒の華!
 血まみれホラー、アブノーマル・エロス、パチもん怪獣、トラウマ暴力!1980年代、狂乱のレンタル・バブルの中で咲き乱れ、ブームと共に消えた下品でイカれた未公開ビデオの数々。誰にも顧みられず、再評価もされず、消えていった時代の仇花への鎮魂歌! ”

巻頭グラビア 下品で危険な80年代ビデオジャケット・アートワーク集
第一章 イカレた血まみれホラー天国
第二章 容赦なき暴力の嵐
第三章 男の娯楽肉弾戦
第四章 GOGO! お色気路線
第五章 倒錯と戦慄! 世界の異常性愛路線
第六章 ショック! 残酷!ヤラセ・ドキュメント
第七章 徹夜で観ようよ、激安SF
第八章 激安怪獣怪人動物ビデオ総進撃
第九章 幻の傑作・名作物件
第十章 晴れて復活、殿堂入り
最終章 ワゴンセールの日々

・101本目以降の映画
・80年代ビデオバブルの狂乱を抜けてVHSテープが世界中にかけた呪い
・座談会~かつて、レンタルビデオ店にはロマンがあった。レンタルビデオ屋の原風景
・イギリスであった俗悪ビデオ弾圧事件 ビデオ・ナスティの時代
・ショック実話① 私が覗いた海賊版ビデオ業界
・ショック実話② ビデオ安売王黙示録
・絶滅ビデオ保護ハンティング
・デルモンテ平山と行く映画大魔境
・悪趣味ビデオ探究はなぜ続くのか
・ビヨンド・ザ・悪趣味ビデオ~その場所は消えてしまった



2013年に相次いで発行された『80年代悪趣味ビデオ学入門!』と『80年代悪趣味ビデオ学の逆襲』の2冊を合本、新たな作品のレビューとエッセイを追加して出たのが本書で、総ページ数が500頁を超えるのも圧巻だが、あえて紙質を厚くしてボリュームを持たせたのもVHSビデオパッケージを連想させる狙いもあったんだろうか、という大きさです。前2冊を持っている方なら、内容が重複してしまうのはしょうがないですが、前のはムック形態で、書店ではおそらくもう流通はしていないと思うので、こうして書籍として新たに世に出てきてくれたのは嬉しい限り(これで、図書館にも蔵書可能です)、勿論、前の2冊を持っていても、本書を買う意義は大いにあります。棚に並んでいるだけでもなんか嬉しさを感じます(ビデオっぽくて、ね)。

取り上げられている作品群は、基本的に現在DVDやブルーレイ化されておらず、ビデオ止まりだった80年代リリースの映画なんで(その後、めでたくDVDなどになって、入手可能になったのも出てきてますが)、知名度が低い(ほんとに、聞いたことも無いようなタイトルがバンバン出てくる)、古い作品が多い、そして内容も下品で俗悪、しょうもないものも多数・・・、よくまあこんな映画が世の中に出ていたんだなあ~と変なところで感心してしまったりしますが、それがビデオソフトが世界で出始めたころで、レンタルビデオ屋という形態がそこらかしこに出没していたころのリアルな実情なわけです。

あの頃を実体験した人(40代以上の年代ですかねえ)なら覚えているかと思いますが、何だかわからないけれど、未だかつて経験したことのないスゴいブームが押し寄せてたのがこの頃で、“自宅で映画をいつでも見られる!”“劇場未公開の作品が鑑賞できる!”などなど、このワクワク感はたまらないものがあった記憶があります。名作・大作があれば、その逆の駄作・珍作もあったわけで(むしろ、ビデオバブル後期は後者の方が多かった)、こうした作品群は、DVDの台頭やレンタル店の相次ぐ廃業でワゴンに投げ売り状態になっていきます。でも、そのワゴンに埋もれているものにもそれなりの意味があるわけで、そこに一点集中でスポットを当てているのが本書で紹介されている映画の数々。やがて消えていく運命の作品たちかもしれませんが、記録と記憶に残し、後世に伝えていくのは意義あることだと思います。



SUSPIRIA Theme

2016年09月18日 00:53

まだまだ『サスぺリア』がヘビーローテーションしています。


サスぺリア

2016年09月09日 23:18

サスぺリア01

【原題名】SUSPIRIA
【製作】クラウディオ・アルジェント
【製作総指揮】サルヴァトーレ・アルジェント
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ
【撮影】ルチアーノ・トヴォリ
【音楽】ゴブリン
【出演】ジェシカ・ハーパー、ステファニア・カッシーニ、ジョーン・ベネット、アリダ・ヴァリ、ウド・キア、ミゲル・ボゼ、フラヴィオ・ブッチ
1977年/イタリア映画/99分


【STORY】
嵐の夜、アメリカからドイツの空港にスージー・バニオンが降り立った。彼女は高度なバレエの技術を習得するため、ドイツの名門バレエ学校に留学してきたのだったが、不気味な出来事が次々と起こり始める。スージーが到着した当日、学院を飛び出した女学生のパットが何者かに惨殺され、盲目のピアニスト・ダニエルが飼っていた盲導犬に喉を喰いちぎられて絶命する。スージーはサラと友人になるが、サラはパットが殺される前に、学校の秘密を知り怯えていたことを打ち明ける。ある晩、部屋を抜け出したサラは、何者かに追われて屋根裏部屋に逃げ込むが、無数の針金が埋め尽くした部屋で身動きが取れなくなり、その後首をナイフで切られて絶命する。サラの姿が見えなくなったことを不審に思ったスージーは嵐の夜、学校内を調べるために部屋を出て、秘密の部屋に辿りつく。その奥で見たものは、不気味な魔術を使ったの儀式と、醜悪な魔女だった。スージーは手にした針を魔女の首に突き立てる。


【REVIEW】
“決して ひとりでは見ないでください”のキャッチフレーズとともに日本でもヒットし、アルジェント監督の名を一気にメジャーに押し上げたホラー映画の名作中の名作。前作の『サスぺリアPART2』がジャッロだったのに対して、本作は魔女を題材にしたオカルトテイストなホラー映画。アルジェント自身がインタビューでも答えているように、ディズニーの「白雪姫」からインスピレーションを得て作り上げた世界は、どこか浮世離れしていて、ダーク・ファンタジーのような趣も感じさせるもので、過剰なまでの原色を使った映像表現と繰り返し流れるゴブリンの悪魔的サウンドがより一層恐怖を引き立て、別世界に誘ってくれる。

ストーリー的には、バレエ学校に魔女の一味が巣食い、邪魔な人間を魔術で抹殺しており、それに気づいた主人公たちが秘密を暴いて魔女にとどめを刺す・・・ような流れだが、謎解きに重きは置かれておらず(魔女に関心があり、調べを進めるのは友人のサラで、スージーは巻き込まれていった感が強い)、肝心の殺害場面も誰が行ったのか分かりづらく(だから犯人探しは無用なんでしょう)、どちらかといえば、目の前で起こる超自然的な不可解な現象をそのまま目の当たりにしていく映画なんだという印象。そう考えれば、論理的でないとか、辻褄が合いにくいといった批判は意味を持たず、逆に意味が理解できないことが恐怖感にも繋がってくる。だから『サスぺリア』を見て、よく分からないという感想を言う人は、映画自体の捉え方がそもそも間違っているからだと思う。

自分が初めて『サスぺリア』を観たのは、もう何十年前だったか覚えていなのだが、少なくとも10代であったのは間違いない。なんだかよく分からないが、現実世界とは到底思えない赤とか緑とかが支配する色使いの画面の中で、理由もよく分からないまま登場人物が殺されていき、全編ゴブリンの不気味な音楽が流れて行く中、唐突にラストを迎えて行く。「魔女たちは学校で何を行っていたのか!?」「魔女があんなにあっけなく死ぬのか!?」「最後のスージーの笑みは何を意味するのか?」明確な説明はなされぬまま、映画はエンドロールを迎える。映画が終わった後も、疑問は消えないが、強烈な体験は目と耳に焼き付いて離れず、そのとき“スゴイものを観た・・・!”という感覚は何十年たった今でも変わることなく残っている。もう理由なんかはどうでもいいのだ。とにかくスゴかったのだ。

ホラー映画ファンなら、本作が魔女三部作のうちの1本で、残りが『インフェルノ』『サスぺリア・テルザ 最後の魔女』であることや、前作の『サスぺリアPART2』が本作とは全然関係がなく日本公開時に勝手に配給会社が命名したことも知っておられるだろうし、スージーが空港から乗るタクシーの運転手の首元に人の顔が写っていて、公開当時は心霊現象だと噂になったことも知っておられるでしょう(これはもちろん意図的なもの)。ただ、そんなウンチクを知らなくても、予備知識がなくても、未見の人は騙されたと思って一度本作を見てほしいと思います。感動して涙が出たとか、ためになる映画を見た、とかそういう感想は出ないと思いますが、“よく分かんないけど、スゴかった”と思えれば、それで十分、それを体験するのも映画の醍醐味じゃあないでしょうか。

最後に、本作は『サスぺリア パーフェクト・コレクション』としてブルーレイ版が最近発売されましたが、これが非常に素晴らしい内容。新規にHDリマスターされが画質と6.1chの音声は今まで見てきた『サスぺリア』の中では最高の品質で、とても40年前の映画とは思えない出来栄え。加えて、本邦初収録の月曜ロードショー版吹き替えや、アルジェントのインタビュー特典映像なども多数収録した2枚組で、間違いなく買って損のない内容。ユーザー目線で再発するなら、やっぱりこれくらい気合を入れて出してくれないとダメでしょうし、逆にここまでやってくれれば、VHSやLDやDVDを持っていても、喜んで新たに買い足しますと思えるもの。お次は『インフェルノ』もこのレベルで出してほしいですねー。

サスぺリア02

サスぺリア03






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