2018年10月29日 19:58

【原題名】THE RETURNED
【製作】フリオ・フェルナンデス
【監督】マヌエル・カルバージョ
【脚本】アテム・クライチェ
【出演】エミリー・ハンプシャー、クリステン・ホールデン=リード
2013年/スペイン=カナダ映画/98分
【STORY】
ゾンビウィルスに感染した者の封じ込めに成功した世界。感染したものの発症しなかった患者はリターンドと呼ばれ、ワクチンを定期的に接種することで普通の生活を送れていた。しかし、再びゾンビ化することを恐れてリターンドを保護する政策に反対する人々も多く、過激なグループは度々暴動を起こしていた。リターンド患者の治療に当たる病院に勤務するケイトのパートナーのアレックスもリターンドであったが、周囲には秘密にして生活していた。ある日、病院に過激派グループが押し入り、リターンド患者を銃殺する事件が発生、ショックを受けたケイトは長期休暇を願い出る。実は、今あるワクチンは限りがあり、いつかは入手できなくなる日も近くなっていた。ケイトとアレックスは密かに蓄えていたワクチンを持って逃亡することを決意する。
【REVIEW】
ゾンビウィルスの発症を抑制するワクチンをめぐるヒューマンドラマの色濃い作品。何か所か、ゾンビに襲われて流血する場面があるものの時間にするとほんの僅かで、ゾンビが襲ってくる恐怖よりも、薬が無くなり人間として生きることが出来なくなるかもしれないという圧迫感や閉塞感が重苦しい展開。通常は助け合って生きていた仲間も、いざワクチンが残り少なくなっていることが分かると容赦なく裏切っていく―。追い詰められていけば、自分たちが生きていくだけで精一杯、他人を思いやる余裕なんかない・・・。醜いエゴのぶつかり合いに、結局恐ろしいのはやっぱり同じ人間同士かと、ロメロのリビングデッドシリーズでも何度も描かれてきたテーマが本作でも主流となっている。
何とか確保できたワクチンも奪い合いの末失ってしまったケイトは自宅に帰る。ワクチンが切れ、容体が悪化していくアレックスは自分を銃で撃ち殺すように懇願する。涙ながらに銃を撃ち、放心状態で自宅を出てきたケイトに訪ねてきた院長が「新しいワクチン開発が間に合った。人類は救われる」と喜びながら伝える。“もう少し、早くそれが分かっていたなら、アレックスを撃つ必要はなかったのに―”と何とも後味の悪い終わり方。『ミスト』ほどではないが、この嬉しくないラスト。だが、全体的にシリアスな展開なので、あまりにも都合よく助かってしまうよりも、この終わり方の方がいい余韻に浸れる気がした、なかなか見応えのある作品。


最新コメント