
【原題名】MOTHER OF TEARS
【製作】クラウディオ・アルジェント、ダリオ・アルジェント、マリーナ・ベルルスコーニ、ジュリア・マルレッタ
【監督】ダリオ・アルジェント
【脚本】ジェイス・アンダーソン、ダリオ・アルジェント、ウォルター・ファサーノ、アダム・ギーラッシュ、シモーナ・シモネッティ
【撮影】フレデリック・ファサーノ
【音楽】クラウディオ・シモネッティ
【出演】アーシア・アルジェント、クリスティアン・ソリメーノ、アダム・ジェームズ、モラン・アティアス、ダリア・ニコロディ、ヴァレリア・カヴァッリ、ウド・キア
【製作年度】2007年
【製作国】イタリア/アメリカ
【上映時間】102分
【STORY】
ローマの博物館に勤めるサラ・マンディは教会から送られてきた遺品入れを調べ始めるが、現れた謎の集団にサラの同僚は殺され箱の中身は持ち去られてしまう。同僚殺しの嫌疑を掛けられたサラは恋人のマイケルとともに箱の謎を追い、オカルトに詳しいヨハネス神父を訪ねる。そこで、幼い頃に亡くした母のエリザが魔女で、サラもその力を受け継いでいることを教えられる。箱を持ち去った集団は“涙の母”を崇める邪悪な集団で、ローマには涙の母の復活を祝い、世界中の魔女たちが集結しつつあった。ヨハネス神父は魔女に操られた家政婦によってメッタ斬りにされ、サラを助けた降霊師のマルタは股間から槍を突き刺されて絶命する。マルタから教えられていた錬金術師のグリエルモに助けを求めたサラは、涙の母が建築家ヴァレリによって建てられた屋敷に住んでいることを知り、ローマの街中を探し回り、その屋敷を見つける。その館の地下では魔女たちの狂宴が繰り広げられていた。
【REVIEW】
『
サスペリア』『
インフェルノ』に続くアルジェントの“魔女三部作”の完結編。嘆きの母はドイツのフライブルクに、暗闇の母はニューヨークにいたが、最後の涙の母はイタリア・ローマで復活、最も美しく残忍な彼女は白い魔女の血を受け継ぐサラを狙い、関係する人々を次々に殺していく。『インフェルノ』から実に27年ぶりに作られた本作は、この壮大な三部作ラストを飾るのに相応しい内容であったのか!?結論から言うと、期待値が高ければ高いほど落胆する度合いは深まる壮大な失敗作品・・・と言ってしまうとそれまでだけれども、見所がないわけではないので、良い面、悪い面をそれぞれ挙げてみたい。
まず、良かった点。前2作を上回るゴア描写。とにかく人体破壊をこれでもかと見せつける展開はシリーズ随一。「切り裂かれた腹部から溢れ出た腸で首を絞められて絶命する女性」「斧で執拗に頭部をカチ割られる神父」「鋭利な凶器で両目を抉られる女性」「股間から刺さった槍が突き抜けて口から飛び出して死ぬ女性」などなど、全盛期のフルチも驚くようなゴア描写が盛り沢山。それ以外にも、乳児を川へ投げ捨てたり、子供の惨殺死体を見せたりと、容赦ない描写もあり、全体的には逆にやり過ぎ感も感じてしまうほど。次に、魔女の力で世界が邪悪な雰囲気に包まれていく設定は面白い。作られたのは2007年だが、世紀末的な感じがちょっとワクワクさせるし、世界に散らばってる魔女が電車や飛行機で集まってくるのもある意味斬新だ。
対して悪かった点は―こちらの方が多いんだけど―、まず、魔女の設定がイマイチ。続々と集まってくるのはいいんだけど、気品のかけらもないただのケバイお姉ちゃん連中がハイテンションで騒いでるようにしか見えず、肝心の涙の母も凄みが足りない。大体、着ている法衣がまるでホームレスが来ているようなボロ布なのも頂けないが(ほとんど裸体なのはまあ良いとして)、なんかこうラスボス感が感じられないのだ。相変わらず、唐突にやられて終わるのはいつものパターンだけれども、今回も法衣を剥ぎ取られたら魔力を失ってあまりにもあっさり死んじゃうのには「もう笑うしかない」。そして、残念なのが全体的にチープなつくりが見えてしまうところ。『サスペリア』も『インフェルノ』も古風で独特な建物や調度品がいい雰囲気を醸し出していたし、ケバケバしい原色を使った色彩が他の映画には無い個性を放っていた。しかし、本作にはそれがない。あまりにも時間が空きすぎて風景も変わり、別次元の物語のように思えてしまう。そして、音楽。一応、シモネッティがクレジットされているが、一言でいえば地味。ゴブリンのサウンドを超えるのはまず不可能だけど、何かもっと特徴的なメロディーを聞かせてほしかった気がします。
その他にも、ストーリーが破綻しているとか(これはいつものこと)、キャラの行動が意味不明とか(これもいつものこと)、最後サラが魔法を使わんと槍を使って終わっちゃうとかまるで設定を生かしていないところとか、突っ込みどころは多々あるが、よくよく考えればこれがいつものアルジェント節なのかもしれない。ただ、昔は、それらの欠点を吹き飛ばすような勢いがあったのに、それができなくなっているのが本作の欠点になっているのかも。アーシアとダリア・ニコロディの母娘共演も嬉しいんだが、その霊的表現が古臭いのも含めて(余りにも安っぽいCGなのも悲しい)、アルジェントも年を取ったんだなあ~・・・としみじみ感じてしまったのが寂しい。しかし、取り合えず死ぬまでに撮ってくれたんだから、それだけでも良しとしていいんじゃなかな。甘いか。

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