人間解剖島ドクター・ブッチャー パーフェクト・エディション

2020年09月18日 23:26

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【原題名】ZOMBI HOLOCAUST/DOCTOR BUTCHER M.D.
【製作】テリー・リヴェイン、ジャンフランコ・クーユームジャン、ファブリッツィオ・デ・アンジェリス
【監督】フランク・マーティン
【脚本】フランク・マーティン、ファブリッツィオ・デ・アンジェリス、ロマーノ・スカンダリアート
【撮影】ファウスト・ズッコーリ
【音楽】ニコ・フィデンコ、ウォルター・E・シアー
【特殊効果】マウリツィオ・トラーニ、ロザリオ・ブレストビーノ
【出演】イアン・マカロック、アレクサンドラ・デリ・コリ、ドナルド・オブライエン、シェリー・ブキャナン、ピーター・オニール
【製作年度】1980年
【製作国】イタリア=アメリカ
【上映時間】82分(DOCTOR BUTCHER M.D.)、89分(ZOMBI HOLOCAUST)


【STORY】
ニューヨークの大学病院で猟奇事件が発生、何者かが遺体安置室に忍び込み遺体の一部を持ち去っていた。やがて、東洋人の容疑者が捕まるが、その男は飛び降り自殺を図る。男は「キートー」という謎の言葉を残して死亡する。「キートー」という言葉の手掛かりが東南アジアの島にあることを突き止めたチャンドラー博士は調査隊を組んで、真相を探ろうとする。

島に着いた調査隊は、現地で研究を続けているオブレロ博士から食人族に気を付けるよう警告を受ける。翌日、目的の島に渡るが食人族の襲撃を受け、ガイドの男性らが死亡、助手のジョージも内臓を貪り食われ、女性記者のスーザンは連れ去られてしまう。チャンドラーと研究生のロリーらも襲われるが、森から現れたゾンビを見た食人族は退散してしまう。その後、オブレロに助けを求めるが、彼の行動が怪しいと睨んだチャンドラーは彼が原住民を使って人体実験を行い自分の意のままに操るゾンビを作り出していたことを突き止める。スーザンを解剖手術しているところに踏み込んだチャンドラーだったが、逆に捕まってしまい、別の死体と脳髄を入れ替える手術を施されそうになる。その頃、食人族に捕まったロリーは謎の儀式で生贄にされていた―。

【REVIEW】
ロメロの『ゾンビ』が世界を席巻し、その大ヒットを受けてイタリアで製作されたフルチの『サンゲリア』もヒット、後に続けよとばかりにゾンビ映画は大量に生産されていた頃、同じく人気を博していた食人映画のテイストもミックスして作られたのが本作。1本の映画でゾンビと食人族が共演するとはなんてお得な映画なんだ!!・・・と商魂逞しいイタリア映画らしい発想だが、その出来は今一つ。食人族の方は集団で主人公らに襲い掛かり、内臓や目ん玉を掴み出しては貪り食ってやりたい放題、しかしゾンビに方は静かに見ているだけで食人族と交戦したりはしない・・・。ゾンビのグロい見た目はいい感じなのだが、終始食人族のパワーに押されっぱなしでちょっと寂しい。同じセットと主演俳優を使って製作された『サンゲリア』がよっぽどまともな映画に思えるほどで、ダルダルな『ドクター・ブッチャー』だが、この独特の抜けた感じとやり過ぎ感のあるグロ描写が絶妙にサンドイッチされていて、好きな人には堪らない(逆に嫌いな人には全く響いてこない)作品に仕上がっている。

そんな本作がなんとブルーレイ2枚組の特典映像満載で発売、目玉は何といっても、イタリアオリジナル版の『ZOMBI HOLOCAUST』とアメリカ版『DOCTOR BUTCHER M.D.』の異なるヴァージョン両方を収録していること。割と真面目に作られた印象のあるイタリア版に比べると、アメリカ版の方はオープニングが勝手に付け加えられていたり、音楽が安っぽいシンセに差し替えられていたりとかなり印象が変わっている。時間も短縮されテンポ重視のアメリカ版といった感じだが、個人的にはムード重視のイタリア版の方が好みに感じた。また、3時間にも及ぶ特典映像が見どころだが、下記に掲載しておきますんで、興味のある方は参考にしてくださいまし。


DISC-1収録
●Butchery & Ballyhoo: 米国配給会社アクエリアス・リリーシング社テリー・レヴィーン インタビュー
●Down On The Deuce: NY42番街劇場散策
●'Tales That Will Tear Your Heart Out':北米版 『DOCTOR BUTCHER M.D.』冒頭に追加した未完成映画 [監督ロイ・フランケスによる音声解説付き]
●The Butcher Mobile:「Gore Gazette」誌編集者リック・サリバン インタビュー
●Cutting Doctor Butcher:米国版編集担当ジム・マルコビッチ インタビュー
●『DOCTOR BUTCHER M.D.』版予告編集 [オリジナル劇場版/ビデオ版#1/ビデオ版#2/日本版CM]
●Gary Hertz Essay:NY42番街ビジュアルエッセイ [静止画]


DISC-2収録
●Voodoo Man:ピーター役イアン・マッカロック インタビュー
●Blood Of The Zombies:特殊効果アーティスト ロザリオ・プレストピーノ インタビュー
●Enzo on Marino:エンツォ・G・カステラッリ監督(フランク・マーティン=マリーノ・ジローラミ監督の息子) オーディオインタビュー
●Sherry Holocaust:スーザン役シェリー・ブキャナン インタビュー
●Neurosurgery Italian Style:特殊メイク マウリツィオ・トラーニ インタビュー#1
●Interview With M. Trani:特殊メイク マウリツィオ・トラーニ インタビュー#2
●New York Filming Locations:NYロケーションの撮影当時と現在の比較
●Ian McCulloch Sings Down By The River:イアン・マカロック「Down By The River」(1964年シングル)
●『ZOMBI HOLOCAUST』版予告編集 [オリジナル劇場版/ドイツ版]
●スチル・ギャラリー [動画]


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VHSソフト風ジャケットが懐かしいアウターケースにブックレットが付いた本作。ブックレットには、イタリア版とアメリカ版の違いが詳細に解説されていて、素晴らしいの一言・・・!





事故物件 恐い間取り

2020年09月02日 08:26

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【監督】中田秀夫
【脚本】ブラジリィー・アン・山田
【撮影】花村也寸志
【音楽】fox capture plan
【出演】亀梨和也、奈緒、瀬戸康史、江口のりこ、木下ほうか、MEGUMI、真魚、高田純次
【製作年度】2020年
【製作国】日本
【上映時間】111分


【STORY】
売れない芸人山野ヤマメは、元相方で作家見習の中井からの誘いで、事故物件の部屋に住み心霊現象を体験するという番組の企画に参加する。不動産屋から紹介された曰くつきの物件に住み始めるヤマメは、白い何かを撮影してそれが番組で紹介され話題となる。それからもネタを求めて住み続けるが、ある日ヤマメと中井は同時刻に離れた場所で赤い服の女を目撃した後ひき逃げ事故に遭う。1か月後、回復したヤマメは番組プロデューサーに懇願され、次の事故物件に引っ越しするが、そこには畳に血痕、洗面所には髪の毛が詰まっていた。そこは無職の息子に凄まじいい暴力を受けて絶命した老婆が住んでいた部屋だった。さらにヤマメは、2人が首つり自殺したロフト付き物件、カップルが心中した千葉の物件など、次々に事故物件に移り住んでいく。

【REVIEW】
実際の事故物件住みます芸人松原タニシの原作を、中田秀夫が映画化したホラー。事故や事件により不幸にも命を落とした人が住んでいた住居を事故物件としているが、そういったところで恐ろしい目に遭うことを以前は幽霊屋敷と呼んでいた。これがアップデートされた名称で事故物件となり、古臭さを打ち消しているのが不思議なものだが、売れるために仕方なくそこに住み続ける芸人がオソロシイ目に遭うというこれまた定番のストーリーが展開されている。最初、カメラを設置してそれから怪異現象を追っていく『パラノーマル・アクティビティ』スタイルかなと思っていたら、車に轢かれたり、首吊りしそうになったり、中井の両親が不幸な目に遭ったりと現実に恐怖体験が連続し、これだけ怖い目に遭ったら逃げ出してもおかしくなさそうだがヤマメは芸能界で生き残るため頑固に住み続け、最後の物件で突き抜けた恐怖体験をすることになる。

映画では、計4件の事故物件に住み続ける様子が映像化されているが、事故物件になった経緯と「あれっ?おかしいな?」という現象を追っていく前半はいい雰囲気で進んでいく。ただ、観客に分かりやすくするために、霊感のある女性を出して彼女の視点から恐怖の場面を追体験させているのが少々鼻についたのと、最後の千葉の物件でのクライマックスシーンはどうかなと感じた。心中カップル以外にも地縛霊が多数出演(冷蔵庫から出てくる女幽霊は失笑してしまった)、揃いもそろって亀梨くんに迫るが胡散臭い宮司(うさん臭さ満載の高田純次が好演)にもらったお守りで退散させる。ここまではまだいい、そのあとに対決する羽目になる真っ黒な死神みたいなやつ。劇中では、明確な説明はされないが、おそらく死の象徴なんだろうが、こいつがなんだか安っぽくて、こいつのおかげで、なんだか全てが安っぽく感じてしまい、残念な気持ちになってしまった。同じ事故物件を辿っていく系譜の映画では、同じ松竹製作の『残穢 -住んではいけない部屋-』が2016年に公開されているが、最後まで淡々と怖さを感じさせるこちらの方が個人的には好み。

大阪の芸能界が舞台ということで、実際の芸人らが多数出演しているのはリアリティーがあるし、木下ほうかが演じる胡散臭いプロデューサーもいい感じ。また、ヤマメを慕って恐怖現場で恐ろしい目に遭い続ける奈緒と、ヤマメに事故物件を嬉しそうに紹介し続ける不動産屋役の江口のりこも好演。カッコいい亀梨くんが恐れ慄くばかりで、ラストも結局自分では何も解決していない(最後に傘は差したけど)のもダメ男っぷりが出ていて、少し笑えました。




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