マッキラー

2015年01月17日 16:05

マッキラー

【原題名】NON SI SEVIZIA UN PAPERINO、DON'T TORTURE A DUCKLING
【製作】レナート・ジャボニ
【監督】ルチオ・フルチ
【脚本】ジャンフランコ・クレリチ、ロベルト・ジャンヴィッティ
【撮影】セルジオ・ドフィッツィ
【音楽】リズ・オルトラーニ
【出演】フロリンダ・ボルカン、イレーネ・パパス、バーバラ・ブーシェ、トーマス・ミリアン、マルク・ポレル
1972年/イタリア映画/90分


【STORY】
南イタリアの小さな村で、3人の少年が相次いで惨殺された。地元警察の捜査線上に魔術を使うジプシー女が浮かぶ。彼女は昔死別した子どもの墓を荒らされた恨みを晴らすため、少年たちに呪いをかけたようだったが、アリバイがあったため釈放される。しかし、収まりのつかない保護者たちは、彼女をリンチにかけ殺してしまう。事件は終わったかのように見えたが、やがて第4の殺人が起こる。犯人は一体誰なのか!?

【REVIEW】
サンゲリア』以降、ゴア・ムービーを連発し、一躍その名を世界に轟かせたルチオ・フルチだが、本作はその前の70年代にいわゆる“ジャーロ”系の映画を撮っていたころの1本。時系列的には、『幻想殺人』と『ザ・サイキック』の間にあたる頃になる。日本ではビデオソフトでリリースされて以降、DVD化はされておらず、視聴しにくい現在ではある意味幻の1本だが、この『マッキラー』を見れば、フルチが残酷描写だけを撮ってきた監督ではない、様様なジャンルの映画の撮れるきわめて優秀なディレクターであることが感じられると思います。(晩年の酷い出来の数々は、フルチの体調の悪化と、資金繰りがうまくいかず、撮りたい作品が作れる環境に無かったのが大きな要因だと思いたい)

謎解きよりも、殺人の情景そのものに焦点を当てていることは、ジャーロ路線の王道だが、殺される被害者が若い女性ではなく、幼い少年たちであることが、他のジャーロ映画とは大きく違う点。彼らが何故殺されなければならなかったのかは、犯人の大きな動機であり、また田舎町の閉鎖的な社会や古くからの宗教的な観念、思い込みと無知が引き起こす悲劇の連鎖は物語に厚みを与えていて、非常に見応えがあります。殺人事件が起こった後、真っ先に疑われるのは知恵おくれの青年、しかし彼の疑いが晴れると、次は村で異端児扱いされているジプシー女を犯人扱いしていく。村全員が顔見知りであるような小さなコミュニティーで犯罪が起こると、多分こんな感じで犯人探しが始まるんだろなー・・・という嫌~な空気が立ち込めていて、その息苦しさはなかなかのもの。

そんでもって、釈放されたジプシー女(演じるのは『幻想殺人』でも主演を務めたフロリンダ・ボルカン)が少年たちを呪い殺したと思い込み、白昼堂々リンチにかける村の男たち。この場面が圧巻!鉄の鎖でボコボコでたたかれて、肉は削げ血が噴き出していき、無抵抗な彼女をこれでもか!とばかりに痛めつけていく男たち(この場面は。のちの『ビヨンド』のオープニングの画家リンチの場面に引き継がれている)。この暴力描写は、この映画の最大の見せ場だが、彼女が息も絶え絶えで丘の上の墓場まで這って行き、何も知らない人々が悠々と車で走る道端で息絶えていく場面は何とも言えない悲しみが漂う名場面です。

フルチの作品は続々とDVD化あるいはBlu-ray化されているものの、本作は未だにその気配も見えない。理由は、今ではタブー視されている少年を次々に残忍に殺している内容だからとか、原題にもある「アヒルちゃんをいじめないで!」の元ネタが某ディズニーのキャラクターだったのが問題だとか、いろいろあるみたいですが、なんとかクリアしてぜひ再発してほしいと願うばかり。大映ビデオで発売されたときには「ルチオ・フルチのルーツを見た!」とのキャッチ・コピーが躍っていたが、今思うとまさにそのとおりであり、フルチの作品群を評価するうえでも重要な1本であることには間違いないはず。また、クライマックスの犯人が崖から落ちていきながら犯行動機となる回想シーンと、顔面が岩で削られ火花を放つ場面を織り交ぜつつ美しい旋律が流れるところも屈指の名場面。ホントに、このまま埋もれさせてしまうのは、余りにも惜しい作品だ。




コメント

  1. リキマル | URL | Ef5G3OlI

    こんばんは。
    ホラーマニアックスは終わったと思えたやさきの次期発売予定の発表に今作が入っていてかなり嬉しかったです。

    DVDの時には、フルチラインナップから外れかなりがっかりでしたが、まさかBlu-rayで字幕版Blu-rayとは。
    発売は12月でまだ時間があるので特典の充実を期待したいですね。
    古い作品なので、Blu-ray化でどれ位鮮明になるかも楽しみです。
    とりあえずこれでフルチ作品の収集は完結しそうですが、あえてまだ発売を待つならナイトメアコンサートでしょうか。

  2. Aki | URL | -

    Re:マッキラー

    こんにちはです。
    当シリーズ、もう終わりか!?と思わせて(勝手に思っていただけかもしれませんが)、嬉しい復活!しかも『マッキラー』が無事日の目を見る日が来るとは・・・。感激ですね。

    フルチ作品では、黒猫とかナイトメアコンサートとか、まだ見たい作品がありますが、晩年のかなりレベルの落ちた作品群までは発売されないでしょうね。
    そもそも需要もあまりなさそうですし。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://thehorrormovies.blog55.fc2.com/tb.php/340-06b56eee
この記事へのトラックバック


最新記事